「新聞と特定政党の政治家の癒着」を検証せよ!政治的思惑で事実の捏造はあったのか

原英史氏「逆転勝訴」独占手記【後編】
政策コンサルタント/株式会社政策工房代表取締役
  • 毎日新聞に逆転勝訴も残された課題は?原英史氏が手記で指摘する
  • 読者に正しく伝わっていたか?取材手法は適切だったか?
  • 政治との関係は適切だったか?森ゆうこ氏と癒着はあったのか?

前編では、毎日新聞との訴訟の高裁判決のポイントを紹介した。後編では、今後の課題についてお伝えしたい。判決の後、私は以下のコメントを公表した。

「毎日新聞社には、判決を真摯に受け止め、一連の記事掲載に係るプロセスを第三者も交えて検証し、検証結果と再発防止策を明らかにしてほしい」

残念ながら今のところ、毎日新聞が真摯に検証に取り組んでいるとの話は聞こえてこない。それどころか報道によれば「当社の主張が認められず極めて遺憾」などとコメントしているそうだ。

仕方がないので、何を検証してほしいと私が言っているのか、もう少し詳しく説明しておこう。

東京・竹橋の毎日新聞東京本社(mizoula /iStock)

読者に正しく伝わっていたか?

第一に、「読者に正しく伝わっていたか?」。
毎日新聞は訴訟において、「記事には原が金銭受領とは書いていない」、「会食接待でなく懇談と書いてあり、食事はしていないとの意味だ」と主張した。

もし本当にそう思っているなら、同じ説明を読者にもして、当時の記事を読者がそう理解していたかをアンケート調査で調べてみたらよい。どれだけの読者が毎日新聞の主張する“意図”どおりに正しく理解していたか、あるいは、毎日新聞の“意図”とは異なる“誤読”してしまっていたかだ。

例えば篠原孝衆院議員は、毎日新聞を50年間購読してきた熱心な愛読者だが(法廷での陳述による)、この記事を“誤読”し、私が金銭を受け取り会食接待を受けた旨をブログに記載してしまい、220万円の賠償金を支払う羽目になった。篠原議員が一般読者に比して特別に“読解力”を欠く人物だったとは考えづらい。同様の“誤読”をした読者は少なくなかったのでなかろうか。

判決を受けて、毎日新聞には二つの道がある。一つは、今回のような“誤読”を招く記事掲載を今後はやめる。もう一つは、今後もこうした記事掲載を続け、次は訴訟で負けないよう「小細工」のテクニックをさらに磨き上げる。いずれの道をとるのか、どの程度正しく伝わっていたかを検証したうえで決めたらよい。

仮に、一定程度“誤読”がなされても後者の道をとるというならば、篠原議員のような大切な読者が“誤読”を繰り返さないよう手立てを講ずべきだ。例えば、以下のような項目の注意事項を記載した『記事の読み方ガイドブック』を購読者に無償配布したらどうか。

  • 「見出しと本文:見出しはあくまで釣りで、本文には全く違うことを書いている場合がある。印象に惑わされずに読もう」
  • 「会食と懇談の違い:言葉が使い分けられているときは要注意」

ただ、この場合、そんな方針のメディアが「新聞」を名乗ることが妥当なのかは、日本新聞協会で検討すべき課題だと思う。

取材手法は適切だったか?

第二に、「取材手法は適切だったか?」。
今回の訴訟では、記者の取材メモなど取材過程の一端が明らかにされた。私が驚いたのは、会食接待があったと報じた根拠が、「一人の取材対象者がそう言っていた」というだけだったことだ。しかも、

  • 私自身は取材を受けて、「(何年も前の会食について突然聞かれても全く記憶にないが、一般論として、)規制改革の議論をしている関係者と食事する際は必ず割り勘にしている」と回答していた。
  • さらに、その取材対象者が「会食接待した」と語ったうちの一回につき、自らのフライトスケジュールを確認して「会食はありえない」と否定していた。デスクなど関係者は、当然ほかの話も信ぴょう性を欠くことを認識できたはずだ。

それにもかかわらず、1面トップで「会食接待」が報じられた(一部「懇談」などとごまかしたにせよ)。こんな杜撰な取材で記事を作っているとしたら、例えば何らかの恨みや動機を有する人物、記者に迎合しやすい人物などを取材対象に選べば、どんな捏造でもできてしまうだろう。

今回の取材過程について、毎日新聞社内にはより詳細な全容が残されているはずだ(例えば私に対する取材のメモは、毎日新聞側によほど都合の悪い記載があったのか、訴訟では一部のページしか提出されなかった)。十分に検証して、今後に向けて必要な改善策を講じてほしい。

政治との関係は適切だったか?

第三に、「政治との関係は適切だったか?」。
前編でも書いたが、記事掲載の動機は、「第二のカケ問題」に仕立てて政権追及の材料にしようとしたのでないかと推測している。政治的思惑にひきずられるあまり、事実の捏造にまで手を染めてしまったのでないか。

森ゆうこ氏(参院ネット中継)

さらに、特定の政治家との癒着を疑わせる材料もある。森ゆうこ参院議員がネットで拡散した、私の自宅住所の記載された資料だ。この資料は私が理事を務める団体(外国人雇用協議会)の登記資料で、11月7日参議院農水委員会で森議員が国会質問した際に配布し、その後ネットでも拡散された。

その資料に「10月1日17:42」という日時、つまり国会質問の一か月以上前に登記情報提供サービスで取得されたことが記録されている。日付をみて、私は「あれ?」と思った。実はその前日の9月30日付で毎日新聞記者から私に、団体の事務所住所などを確認する質問状が送られていたからだ。それっきり記事にならなかったので忘れかけていたが、11月7日になって森議員がなぜか国会でこの団体の事務所住所を問い質した。その際、10月1日取得の登記資料を配布し、事務所住所を読み上げもした。

筆者作成

毎日記者と森氏の結託はあったか

若干話が脇にそれるが、記者と森議員がなぜ揃って「住所」に関心を持ったのかはさっぱりわからない。森議員の訴訟での説明によれば、登記資料を国会で配布した目的は、私が団体の理事を務めることを示すためだったという。しかし、それならば住所は関係ないし、そもそも私は理事を務めていることをSNS等のプロフィールで公開していたから、登記資料をわざわざ示す必要もなかった。

だがともかく両氏は「住所」に強い関心を示し、その後、私の自宅住所がネット拡散されることにもなった。ちなみに、この当時、事務所の建物に不審者が侵入して写真を撮影・公開するなどの事案があり、警察にも相談しているところだった。なぜ住所を国会で読み上げたり、ネットで拡散したりするのか、本当に薄気味悪く身の危険すら感じた。

ともかく一連の経過から疑われるのは、記者と森議員が結託していたのでないか、それも記事化前の取材情報を提供していたのでないかということだ。両者がたまたま同じ時期に同じ問題意識を持ったとは考え難い。

もし事実ならば、記者が特定の政治家と癒着し、その調査機関として活動していたことになる。報道機関として大問題のはずだ。さらに、こうしたことが公然となされていたらしき様子から考えれば(国会質問の翌日に堂々と記事にしたぐらいだから、社内では別に「大問題」と捉えていなかったのでないか)、この記者と森議員だけの問題ではなく、毎日新聞社内で特定政党の政治家などとの癒着が常態化していた可能性も否めない。早急に検証を行うべきだ。

なお、本件につき、私は以前から毎日新聞に公開質問状をお送りしているが、いまだにお答えいただいていない。放置してよい問題ではないと思う。

 
政策コンサルタント/株式会社政策工房代表取締役

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