岸田政権の経済政策は『黄金の3年』をもたらせるのか?今こそ日本経済のターンアラウンドを!
連載『日本経済をターンアラウンドする!経済再生の処方箋』#8- 参院選を終えて岸田首相が直面する日本経済の課題は?
- 自民公約は評価できるが、「ターンアラウンド」視点では不十分
- 日本経済の再生へ向け、政治は何をやるべきか?
株式会社ターンアラウンド研究所
西村健(代表取締役社長)
参議院議員選挙は与党が圧勝しました。今回、経済政策の中身についてあまり活発な議論が行われているとは言えませんでした。日本経済が「オワコン」「ヤバい」のはなんとなくわかるが、現状維持を選ばざるをえなかった、消去法的選択ということなのでしょうか。

海外移住もできない!ヤバい国力低下
そもそも「先進国」とは言えなくなってきています。2020年の日本の「1人当たりGDP」は、購買力平価換算で世界第30位、平均賃金は連載でも紹介したように韓国より下、IMD国際競争力では1992年の1位から2022年以は34位まで下落してしまいました。IMDの各指標を見ても、雇用、科学インフラなど以外は10位にも入りません(以下図)。
企業の競争力も落ちています。Fortune500においても、1995年では1位が三菱商事、2位が三井物産、3位が伊藤忠、4位が住友商事、6位が丸紅、9位が日商岩井など上位20社のうち11社とランキング上位を席巻していたのですが、現在では9位のトヨタ自動車のみで100位以内に4社のみです。
アベノミクスの金融緩和、円安政策によって株高、企業の収益好調という成果は得ました。円安で企業の収益はよくなり、雇用維持もされました。しかし、様々な指標をみても、今、「日本凄い!」なんて恥ずかしくて言えません。
海外に行ってみたら、アメリカではラーメンもマクドナルドのビッグマック(669円)も高すぎて食べられない、そもそも家賃が高くて住めない、上海ではディズニーランド大人1日券(1万1200円)も高すぎて入れない…と言われています。海外移民するしかないか~と思っても、海外で普通に生活すること自体が難しそうなのです。
自民党の公約はさすがではあるが…
各党の公約において、自民党はスタートアップ施策やデジタルイノベーション、維新の会は雇用流動化や規制改革、国民民主党はエネルギー関係(トリガー条項凍結解除)が特徴的でした。自民党の公約は産業界の意向を受けているためか、比較的よくできていると思います。ジョブ型人材マネジメントとリカレント教育の推進、デジタル田園都市構想、デジタルイノベーションなど、様々な分野に渡って多様なメニューをそろえ、さすがの内容ではありました。
しかし、「ターンアラウンド」という視点から評価すると、業界からの要望・希望・意見をまとめたパッケージ、メニュー、一覧・リストにしか見えず、この日本の危機的な経済状況の問題解決には不十分のように思えます。
なぜなら、産業構造改革、雇用の流動化のための解雇規制緩和や「ジョブ型雇用」の徹底、賃上げのための最低賃金引上げ、競争力向上のため創造力やイノベーション支援など本当に必要であろう具体策が十分ではないからです。本メディアの連載での「人的投資」の推進、そのための学校教育の抜本的見直しなどを含め、痛みを生んだりして反対意見がある中で、具体策に手を付ける覚悟と実行プランが見受けられません。
政治家の役割として、(支援団体のために)何をやるか、ではなく、未来のビジョンを示し、誰を説得し、納得して我慢してもらうか、のコミュニケーションが役割のはずで、そこが問われるべきだと思うからです。
日本経済をターンアラウンドする!
日本経済は危機的状況です。特に人材面で見てみると恐ろしいほどです。悲しいことに「組織の風通しが悪く、人間関係に悩まされ、仕事の内容に不満で、仕事の意味を見出せず、将来的なキャリアが見いだせず、将来に不安を抱えていて、不幸な日本人労働者」ということが明らかなのです。本当に深刻な数値が並びます。

そうした危機的状況にも変わらず、今後の未来は暗いことが予測されています。円安や物価高、電力不足…相当厳しい状況になるでしょう。だからこそ私たちは「ターンアラウンド(再生)・プラン」を提示したいです(以下)。
- 思考力と挑戦行動を促す人財育成(教育含)、教育改革、ソーシャル・キャピタルや地域貢献活動
- 創造性を発揮できる商品・サービス開発促進、企業組織変革、生産性・集積性アップ、従業員のウェルビーイング向上、SDGs推進
- 規制緩和、産業構造改革、金融・財政政策のターンアラウンド、厳しい競争環境整備、旧態依然とした成果の出ない補助金・助成金カット
といった包括的かつ同時並行的な具体策です。
つまりこういうことです。シュレーダー改革「アジェンダ2010」のような解雇規制緩和と最低賃金を1500円に段階的に上げること。
経営者は採用よりDXやロボットへの代替にインセンティブが向く
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最低賃金レベルで働いている労働者は雇用を万が一、一時的に失ったとしても、リスキリングや高度な職業訓練を受講
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生産性の高い、賃金高め、もしくは賃金は低くてもキャリアが見通せる、やりがいを感じられる仕事に移れる
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企業は人件費分を人的投資に回す→企業の創造性やイノベーションを誘発する
というシナリオです。
政治家の役割とは何か?
雇用の流動化(解雇規制緩和)と人的資本(人への投資、人財育成に投資する)の徹底支援のセットによって日本経済の新たな方向性が出てくると思っています。PISAなどでも日本人は子供の時の国際競争力は高いのです。多くの人たちが大人になって「古い仕組み」「空気」「権威主義」「村社会」「ルール」「不文律」「前例踏襲」「リスク回避思考」「現状維持バイアス」にがんじがらめになってしまいます。なので、セーフティーネットを整備して、挑戦・共創・競争・イノベーションを促進するエコシステムを構築するのです。そしてもう1つ大事なのは地方分権と東京一極集中解消。地方での実証実験や地方都市同士の実験による競争なくして日本のイノベーションは進みません。
国民は現実を直視し、一部の人は甘い汁を吸うことを諦め、未来のこどもたちのために我慢し、ある程度痛みを受け入れる、受け入れなくても理解をする。政治家は国民が税金を支払っていただく行為に感謝し、未来の日本のために日々挑戦する環境を整備し、失敗しても大丈夫だというセーフティーネットを確保する、そして、未来のビジョンを説明して説得する。それをしない、できない日本は「ターンアラウンド」出来ないと考えています。
故・安倍晋三さんは「改革をとめてはならない」と言っていました。彼がたぶんやりたかったであろう「ターンアラウンド」。対話力と調整力で定評がある岸田政権に期待したいところです。政治的に岸田カラーを打ち出せるだけの力と余裕を持てる「黄金の3年間」だからこそ、本当に日本に必要な「ターンアラウンド」を進めてもらいたいです。
故・安倍晋三さんに捧げます。
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