米在住の中国人作家「コロナが研究所から流出した可能性は大きい」

真相が究明される日は来るか
ライター
  • コロナウイルスの発生源について、武漢のウイルス研究所からの流出説が再燃
  • 米国在住の中国人作家は「流出した可能性が大きい」。中国の政治体制の問題も
  • バイデン政権が攻勢を強める背景に自国の民意も。真相解明の前に情報戦の様相

米バイデン大統領が新型コロナウイルスの発生源について、中国・武漢のウイルス研究所から流出した説も含めて追加調査を行い、90日以内に結果を公表するよう情報機関に指示した。これに対し、中国政府は「事実や真実を無視し、起源に関する科学に基づいた本格的な調査を気にも留めていない」と即座に反発しているが、再燃した研究所からの流出説に世界の注目が集まっている。

武漢ウイルス研究所(公式サイトより)

コロナウイルスの発生源については、パンデミックの発生当初から同研究所から流出したのではないかと疑われていたが、中国政府は一貫してこれを否定。今回も、バイデン大統領の動きを受け、「アメリカの狙いは、パンデミックを使って汚名を着せることと政治的操作、責任転嫁だ。科学を尊重せず、人々の生命に対して無責任で、新型ウイルスとの結束した闘いで足を引っ張っている」と主張した。

作家「過去にもウイルス流出」

ただ、中国側が国外の調査団を新たに受け入れる可能性は極めて低いと見られており、研究所からの流出説は、どうしても仮説の域を出ることはない。将来的に、中国の国家体制が崩壊するタイミングなどがあるとしたら、その時は“真相”が明らかになる日が来るかもしれないが、現状では、コロナの発生源を断定できる見込みはゼロに近い。

何岸泉氏(ツイッターより)

研究所からの流出説について、どう捉えたら良いのか。中国・上海生まれで現在は米国在住の作家、何岸泉(ホウ・エンチャン)氏の見解を尋ねた。何氏は、上海市が中国政府から独立することを主張する「上海民族党」を2018年に結成。中国共産党に対し、批判的な立場を取っている。

「武漢の研究所のP4実験室から流出した可能性は、とても大きいと思います。実験室からウイルスが流出する事例は中国では過去にもあった上、中国は新たなウイルスの発生事例が世界的にもトップレベルで多いのです」

何氏の個人的な意見とはいえ、中国では、これまでもヒューマンエラーによるずさんな工事や、安全性軽視が問題となっていたのは事実だ。中国の国民性は、日本やドイツのような規律正しさは薄く、だからこそ、ミスが起きやすい。意図的にウイルスを拡散した可能性というよりも、うっかりミスによる流出は、十分にあり得そうな話なのだ。

「うっかりミス」はありそうな話

西側の民主国家とは異なる特殊な事情が、真相解明を難しくしているという。

「一般的に、中国社会は管理が緩く、ルール運用が厳格ではありません。うっかり流出させることは、十分に考えられるでしょう。また、専制的な政治制度のなか、政府はウイルス流出事件の真相にフタをしています。かつて旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で、真相究明が遅れたことを思い出させます」

武漢のある湖北省(Bonilla1879/iStock)

本来なら、WHOが率先して調査すべきだが、期待は薄い。

「WHOが最初に調査を行った際には、武漢在住の初期の患者から血液サンプルを取得することはできなかった。調査に応じるよう、今後も圧力をかける必要があるでしょう」

中国にモノを言えるのは、もはや世界のなかでアメリカだけと言ってもいい。バイデン政権がここにきてウイルスの起源を調査することは、言うまでもなく米中対立が背景にある。

「アメリカとしては、ウイルスの起源を明らかにすることで、世界のリーダーとしての影響力を体現させたいという意図もあるのでしょう。アメリカは昨年の大統領選以来、共和党と民主党で民意が分裂していますが、ウイルスの起源を明らかにすることは支持政党を問わず、多くの国民が望んでいます。ウイルスの起源が少しでも判明すれば、バイデン氏の支持も高まるでしょう」

ここにきてイギリスの情報機関も武漢からの流出説を再評価していると報じられた。アメリカが牽引するかたちで「中国包囲網」の圧力をかける流れが強まっているが、中国側はアメリカの情報機関がかつてフェイクニュースを流した黒歴史を指摘するなど情報戦は激しくなるばかりだ。日々の報道に流されるだけでなく、注意深く見極めたいものである。

 

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