“文春砲”被弾で大騒ぎ!「ゼロゼロ融資」の実態とは?

57年ぶり倒産件数“最小化”のウラに広がる闇
ライター・編集者
  • 週刊文春でも報道された、中日信用金庫の「ゼロゼロ融資」不正の背景は?
  • コロナ対応で設置された「ゼロゼロ融資」制度とは?倒産件数は57年ぶり低水準
  • ゼロゼロ融資の実行額はすでに42兆円規模。懸念されるモラルハザードとは?

中日信用金庫(愛知県名古屋市)は12日、コロナ禍関連の制度融資「ゼロゼロ融資」で不正があったことを発表した。融資の認定を受けるため、職員が取引先の売り上げを書き換えるなど、業績を改ざんしていたことが内部調査で判明したという。週刊文春が先ごろ報道したことも受けて渋々発表したとみられる。

名古屋市の中日信用金庫本店(アラツク/Wikimedia CC 4.0

倒産件数は低く抑えたが…

ゼロゼロ融資とは、コロナ禍で売り上げが減った中小企業に実質無利子・無担保で融資する支援制度。2年前に始まった。融資の認定を受けるには、コロナの影響で企業の売り上げが一定の割合で減少しているなどの条件を確認する「セーフティネット保証」の申請が必要となる。中日信金の職員は、この申請時に業績を改ざんしたものとみられる。

申請が認められれば最大で3億円まで融資が受けられるが、利子は都道府県が負担する。中小企業が行き詰まり、返済に窮した場合は、国などが財政面で支援する信用保証協会がその「元本」の返済を肩代わりする。当初、融資の申請期限は2022年6月末までだったが、コロナの長期化だけでなく、急激な円安やロシアのウクライナ侵攻などに伴う資源高といった経済環境の悪化もあり、9月末までに延長されている。

返済が滞っても国が借金を肩代わりしてくれるという、中小企業にとっては誠に結構なこの制度。その甲斐あって、東京商工リサーチによると21年の倒産件数(負債額1千万円以上)は6030件となり、57年ぶりの低水準だったという。金融機関にとっても、確実に融資を回収できて利子も稼げる。中日信金の職員も中小企業の窮状に情が湧いて、ついつい手心を加えてしまったか。どうせ最終的に尻拭いをするのは国だし、取引先の中小企業にもいい顔ができる、とも考えたのかもしれない。

kyonntra /iStock

モラルハザード累積の42兆円!

だが、ゼロゼロ融資の実行額は21年末時点で、実に42兆円にまで膨らんでいる。これから返済が本格化するはずなのだが、融資を受けた多くの中小企業の間で「お金を返せない」との声が相次いでいるという。コロナ禍も第7波が取り沙汰され、再び経済が停滞する恐れがある。加えて、ここのところの物価高だ。中小企業にとっては、融資を受ける前の経済環境から一向に好転していない。むしろ、悪くなっている可能性もある。返済できる当てなどあるはずもないのだ。

企業にとってはカネを借りやすい分、返せる当てもなく、本来の身の丈に合わない額まで融資を受けてしまった恐れもある。金融機関は金融機関で貸し倒れのリスクがないため、利子欲しさに不正をしてまで融資を実行する。双方にモラルハザードが起きており、その積み重ねが42兆円ではなかったか。

おそらく現状では、融資を受けた中小企業の相当数が返済のメドが立たず、返済の先延ばしを申し出たり、追加の融資を要請したりするケースが出てきそうだ。そして、最悪のシナリオは倒産だ。そうなった場合、借金の穴埋めをするのは国のカネ、つまりは税金である。結局のところ、国民が負担することになるのだ。

 

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