電通本社家宅捜索の衝撃、平成以後3度目は「ガリバー落日」印象強く

1999年、2016年と異なる「変化」は?
  • 東京オリンピック組織委元理事の現金授受問題、電通に家宅捜索の衝撃
  • 初報になかった電通の関係について毎日新聞が27日に特報
  • 平成以後、電通本社への家宅捜索報道は3度目。過去2回との違いは?

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の高橋治之元理事が、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」(横浜市)からコンサルタント料として約4500万円の支払いを受けていた問題は、東京地検特捜部が26、27日、強制捜査に乗り出し、都内にある高橋氏の自宅兼事務所や、AOKIの青木拡憲前会長の自宅などに家宅捜索に入った。

そうした中、メディア関係者を中心に衝撃が走ったのが、大手広告会社「電通」(東京・東新橋)の本社への家宅捜索だ。電通は高橋氏の古巣で、組織委の屋台骨を担う存在ではあったものの、現金授受の報道が出た当初、電通の関与までは報じられていなかった。

東京・東新橋の電通本社(写真:つのだよしお/アフロ)

しかし、毎日新聞は27日未明、特捜部幹部とみられる関係者の話として、高橋元理事が古巣の電通に対し、「AOKIHDが製作者に決まった審判団の制服に関して口利きした疑いがある」と電子版で特報した。東京オリンピックを巡る疑惑はこれまでも招致活動で噴出し、2019年にはJOCの竹田恒和会長(当時)がフランス司法当局の捜査対象となったことで事実上、引責辞任。これまでは日本の捜査当局が主導的に動いたことがなかった。

オリンピックビジネスの闇の部分は海外メディアや週刊誌でたびたび報じられてきたが、テレビや新聞などの主流メディアが積極的に報道してきたとは言い難い。報道機関としての役割とともに、オリンピックなどの世界的なスポーツイベントでは、事業会社として大会の放映権やスポンサーなど利害当事者にもなっている。それでなくても日頃から、広告枠を抑え、スポンサー企業との関係を取り持つ電通の経営に与える影響は甚大だ。電通に不祥事があったとしても行政や司法当局が具体的に動き出すような展開にならないと、大々的に報じられない。

日経テレコンによると、平成以後、電通本社に家宅捜索が入ったことが報じられたのはこれが3度目だ。1回目は1999年9月、東京・渋谷区の路上で警察の許可を得ずに有名歌手の路上ライブを行ったとして、警視庁が、歌手の所属事務所など3か所とともに、当時銀座にあった電通本社に捜査員が捜索に入った。

記憶に新しいのが2回目。2016年11月、前年に過労自殺した女性新入社員の問題を受け、厚生労働省東京労働局などが違法な長時間残業が常態化していた疑いがあるとして、労働基準法違反の疑いで家宅捜索に入った。メディア権力の「総本山」への異例の捜索劇は当時、報道各社も当局の動きや舞台裏を連日報道した。

この時に「電通タブー」が打ち破られた感はあったが、それでも「本丸中の本丸」とも言えるオリンピックビジネスに関連して家宅捜索に入った今回の捜査はインパクトが段違いと言える。ただ、6年前の強制捜査後、電通を取り巻く環境が大きく変わったことも挙げられる。

コロナ禍に突入後、電通は赤字転落。2期連続の赤字となった20年12月期は1595億円と過去最大のマイナスとなり、本社ビル売却などの構造転換を迫られた。本社切り売りの甲斐もあって21年12月期は営業損益は2418億円の黒字を計上するなど「V字回復」したものの、広告市場は昨年、インターネット広告費が、新聞、雑誌、ラジオ、テレビといった電通のテリトリーである「マスコミ4媒体」の広告費を初めて上回った。

今回の家宅捜索は、電通がもはやガリバーとは言いづらい状況が着実に進んでいることを象徴する出来事になるのかもしれない。

(関連記事)五輪組織委元理事がAOKIから現金受領発覚、アベガー期待の一大疑獄に発展するのか

 
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