大坂なおみ「ラケット破壊」はアンガーマネジメント?

元コーチが自著で語っていた背景
2021年06月02日 11:30
ライター/SAKISIRU編集部
  • 休養の大坂選手が注目を集めた「ラケット破壊」の背景をコーチが自著で語る
  • 試合中に怒りをため込むことは、選手にとってマイナス。ストレス発散が大事
  • 一流のアスリートはときに「利己的」に振る舞う必要がある、との考え
試合中に苛立ちからラケットを投げる大坂選手(2018年10月の中国オープン決勝。写真:AFP/アフロ)

全仏オープンでの記者会見拒否から罰金処分、そして大会棄権へと展開していったテニス四大会制覇の大坂なおみ選手。うつに苦しんでいたことが明かされると、四大大会の主催者は連名で「可能な限りのサポートをしたい」と発表した。

会見拒否のしばらく前には、試合中の“ラケット破壊”についても議論を呼んでいた。

道具を大事にしない行為は責められても仕方がないだろう。

まだ使えるものを、わざと壊す行為は理解できない。ラケット一本買えない子供が見ているかもしれない。

一流選手が道具を大切にするのは当たり前。自分の体の一部。この方は色々心を入れ替える必要がある。

ネット上では、非難の声が巻き起こっていたが、なぜ彼女はラケットを破壊するのか。

2018年シーズンから2019年2月まで大坂なおみのヘッドコーチを担当していたドイツの元テニス選手サーシャ・バイン氏は、自著『心を強くする 「世界一のメンタル」50のルール』(飛鳥新社)で、「ラケットを折れ!怒りはためずに吐きだす」との見出しで次のように語っている。

なおみと組んだ当初から、ときに怒りを発散することはぜんぜん悪いことではない、と説いていた。ラケットを放り投げるもよし、わめくのもよし、怒りを発散するためなら何をしたってかまわない!ラケットを叩き折ったからといって私がなおみを過小評価することはない。

実は、大坂なおみはもともとは怒りを外に出すタイプではないという。

どちらかというと、なおみは控えめなタイプだった。怒りがたまっても、それをすぐには表に出そうとしない。

その様子を見たバイン氏は、「怒りを抑え続けるのは危険だ」と指導。適切なタイミングで自覚的に怒りを発散させることで、パフォーマンスが上がるのだという。一種の“アンガーマネジメント”である。そう考えると、職場やプライベートでストレスをためがちな私たちにも身近に感じられるかもしれない。

私たちも良い仕事にはアンガーマネジメントが必要?(Vasko/iStock)

名選手は例外なく“利己的”

(元世界ランク1位の)セリーナと組んでいて気づいたのだが、彼女が最上のプレイをするのは怒りに任せてラケットを叩き折ったときに多い。(中略)ラケットを叩き折った後で形成を逆転することが何度もあった。

怒りを発散させることで勝利をつかむのは、大坂なおみも決して例外ではない。

なおみがラケットを叩きつけることはめったになかったが、2019年の全豪オープン3回戦でラケットを叩き壊したときは、劣勢を挽回するのに見事に役立った。

もちろん、観客から見れば、ラケットを叩き折る行為は決して美しいものではない。そのことはバイン氏も認識はしているようだ。

テニスは伝統的に上品で優雅なスポーツとされている。プレイヤーが怒り狂うところを観客は見たがらないのだから、感情をむき出しにするのはかんばしくない、とよく言われる。

だが、アスリートからすれば、多少観客から嫌われてでも、勝つことのほうが大事なのは言うまでもない。また、時にゴーイングマイウェイに見える大坂なおみの言動には、バイン氏のこんな考え方が背景にありそうだ。

プロテニスの世界では、プレイヤーが『利己的』に振舞っても白い目では見られない。実際、『自分は自分』という生き方を貫かないと、まず成功はおぼつかない。名選手は例外なくそういう生き方を貫いている。

ときに利己的に振舞わなければ将来がひらけないことは、成功者ならみな心得ている。

日本社会では、人前で怒りを発散させることや利己的に振る舞うことは、イコール“悪”という固定観念が強い。逆に、外国人の多くは日本人から見れば、かなり自己主張が強く利己的に映るのが一般的だ。世界で戦う大坂選手の言動が時に日本人の常識と合致しなかったのは、やむを得ないことかもしれない。今回の休養を機に、私たちも彼女を取り巻く過酷な世界を少しでも理解すれば、コートに戻ってきた時の見方が違ってくるのではないだろうか。

 

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