「鬼滅の刃」“柱”の流儀 ①冷静沈着孤高のリーダー:水柱 冨岡義勇
- 現代社会では否定されがちな”怒り”だが、強く純粋なこの感情がエネルギーになる
- 人のためなら、強くなれる。誰かのためにかける言葉は、自らの行動指針になる
- 自らのプラス面もマイナス面もありのまま受け入れる。目を逸せば歪みが生じる
社会現象となっている「鬼滅の刃」――。
劇場版は興行収入歴代1位となり、海外進出も成功するメガヒットとなりました。
「鬼滅の刃」の人気には、映像化によるプロモーションというハード面と、ストーリーのわかりやすさや、キャラクターの個性が発揮されているというソフト面があります。
このソフト面に大きな影響を与えているものに“柱”の存在があります。
さまざまなマンガには、主人公を取り巻くサブキャラクターとして、強い人や導く人が出てくるものですが、「鬼滅の刃」に出てくる鬼退治のための組織・鬼殺隊の隊士の最上位剣士である“柱”の存在も、無くてはならないものです。この“柱”の存在がいたからこそ、人気が高まったといっても過言ではないでしょう。
ここでは、“柱”の生き方と、その流儀について分析します。
コロナ禍により世の中が大きく変動し、更に不確実な状況となった昨今、その生き様からの学びを考えていきたいと思います。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな」の意味
「鬼滅の刃」の作中で、最初に出てくる“柱”は、水の呼吸の使い手である水柱の冨岡義勇です。コミックでは5巻の表紙を飾っており、表情もクールで、技も強く切れがあります。主人公の炭治郎と妹の禰豆子を助けた義勇は、子どもにも人気が高い存在です。アニメでは櫻井孝宏さんが声優を務め、精悍なイメージを表現しました。
禰豆子が鬼となった直後に、炭治郎たちにはじめて遭遇した義勇は、鬼の禰豆子を斬ろうとします。「禰豆子を人間に戻すから殺さないでくれ」と懇願する炭治郎に、「鬼となった者は人間には戻らない」と告げます。そのとき、炭治郎は義勇に土下座してお願いをしますが、そのことが義勇の逆鱗に触れたのです。
炭治郎「どうか妹を殺さないでください……お願いします…お願いします……」
義勇「生殺与奪の権を他人に握らせるな!! 惨めったらしくうずくまるのはやめろ!! そんなことが通用するならお前の家族は殺されていない」
(第1話「残酷」より)
義勇は怒っていました。「生殺与奪の権」とは、他人に対して「生かす」か「殺す」かを選択できる権利のことです。「殺さないでください」と懇願することは、生きるか死ぬかという選択権を人に委ねていることになります。その甘さで、は炭治郎が望むことにはたどり着けない。だから怒ったのです。自分で勝ち取る気概を持て、と発破をかけているということになります。
弱者には選択肢はなく、強者にねじ伏せられる。鬼は人間の意思など尊重してくれない。だから、泣いて懇願するのではなく、戦わなくてはならないことを教えていたのです。
人は一生懸命に人を説得しようとすると、必死なあまりに怒ったような表現をしがちです。ましてや「鬼滅の刃」では、鬼に喰うか喰われるかの世界。鬼を「人」と勘違いして「お願い」をしても、鬼の道理には通じない。そのことを伝えるためには、優しく諭すだけでは骨身に沁みさせることはできないと考えたこともひとつ。
もうひとつは、炭治郎を立ち上がらせるための発憤でもあったのです。
怒りは絶望から立ち上がるエネルギーになる
義勇は、心の声で炭治郎に「怒れ」と願います。強く純粋な怒りは、絶望から立ち上がる エネルギーとなることを知っているのです。自分がそうだったから。
現実世界では「怒る」ことはあまり歓迎されません。むしろ上手くいなす術を学べ、と言われます。怒りがコントロールできないことによって、人間関係や事態を悪化させることもあり、アンガーマネジメント(怒りの感情と上手につきあう心理トレーニング)の必要性が注目されているくらいです。
それでも、義勇は炭治郎に対して「怒れ」と願うのです。それは、炭治郎の言動から、人柄が良く正しいことのできる子だと感じたこともあるでしょうが、なにより炭治郎が自分を「投影」する存在でもあったからです。投影とは、不安の原因を他へ転じて自分から排除し、相手が持っていると見なして不安を和らげようとする心の働きです。
なぜなら義勇は家族を鬼に殺された炭治郎と、同じ経験をしていたからです。挙式前日であった姉の蔦子を、鬼に殺された。蔦子は自分を守ってくれたことで、亡くなってしまった。そのことで自責の念にとらわれていたのです。このとき立ち上がれたのは、鬼に対する「怒り」と、自分に対する怒りでした。
それにも関わらず、更に自責の念を膨らませていました。 それは、鬼殺隊の最終選別に生き残ったのは、同じ水柱の仲間で、戦いの末に亡くなった錆兎(さびと)のお陰であり、実のところ自らは一体の鬼も倒さずに選別に通った。そのことを恥じていたからです。
そのネガティブな感情は、静かに怒りを増幅させ、義勇を水柱にするまでに強く押し上げましたが、自分には水柱の資格は無いと思っているのです。他の柱たちと一線を画しています。
絶望に打ちひしがれて身動きがとれない炭治郎は、かつての自分でもあった訳です。
それでも、このときの義勇はまだ本当の自分の心には気づいていません。思い出したくないこと、気づきたくないことを抑圧して、心の奥底にしまい込んでいたからです。
心の抑圧は歪みを生じ、自らを蝕んでいく
一見、強くタフなように見えても、心の奥は外からは判らないもの。現実生活の中でも、自分の不甲斐なさや惨めさに目を向けず、心にしまい込みながら表面的には問題なさそうに過ごしている人はいます。
それは気づかぬうちに歪みを生み、自身を蝕んでいくのです。

義勇のもつ歪みとは、頑なさと自分に対する劣等コンプレックスーー。炭治郎と禰豆子兄妹の未来に、義勇は希望を見出していましたが、どんなに強くなっても、自分に対しては厳しく、自分を認めていませんでした。
これを破るには他者との関わりが必要です。 義勇の場合、その頑なさを破る手伝いをしてくれたのは、やはり炭治郎でした。 自分の惨めさと炭治郎の惨めさを無意識に重ね合わせていましたが、6歳年下の素直で優しい炭治郎に救われます。
鬼舞辻無惨との戦いを控え、鬼殺隊全体の底上げと柱の中から痣を出現させる者を増やす修行に入ったとき、義勇は「自分は柱ではない」と修行に参加しませんでした。 自分を庇ってくれたことで大切な人たちを失った義勇は、心のどこかで「自分が死ねばよかった」と空しさを抱えていました。
心配したお館様の命を受け、炭治郎は義勇に会いにいきます。
なんと声をかけてよいか悩んだ炭治郎は、迷ったあげくどうしても訊きたいことを1つ質問します。「錆兎から託されたものは、繋いでいかないのか」と。
この瞬間、戦いの末に亡くなった仲間、錆兎との抑圧していた思い出が鮮明に蘇ります。自分が死ねばよかったなどと二度といわぬよう、姉が命をかけて繋いでくれた命と託された未来を、繋いでいくように錆兎に諭されたことを。
それは、錆兎の命を繋いでいくことにもなります。
ここで、己の弱さや不甲斐なさ、未熟さを自覚して、蔦子と錆兎に謝罪の気持ちを表わし、長らく頑なになっていた心の扉は開かれました。アハ-体験(見方を変えてみることで得られる気付き)ともいえる明確な気づきを得た義勇は、一皮向けて覚悟が定まったのです。
このあとに炭治郎と一緒に上弦の参である猗窩座と戦いますが、このときの不屈の精神は、思い出した「繋ぐ」と、守られた自分だから「他者を守る」という利他性によって支えられました。
義勇「俺は…まだ… 生きているぞ…!! 炭治郎を殺したければ まず俺を倒せ…!!」
(第153話「引かれる」より)
人のためなら、強くなれる “自己超越”

自分のためではなく、未来や他者のために行動することを利他的行動と言います。他者のために行動するとき、人は大きな力を発揮し、これまでの自分を、自分だけの問題を超えていきます。このことを米国心理学者のマズローは欲求段階説の最上級である「自己超越」と呼びました。マズローの要求階段説では、一般的には、最上階に自己実現があると説明されることが多いのですが、実はマズローの欲求段階は5段階ではなく、更に上の6段階目があるのです。
鬼舞辻無惨との戦いにおよび、最後の最後まで義勇は炭治郎や鬼殺隊、隠たち皆のために行動を起こします。義勇は言葉も感情もあまり表に出しません。自分を抑えつけてきた現れとも考えられます。
しかし、他者のためには良く口が回るのです。一度、覚醒した思いは自分の行動指針となり価値観となります。
23巻に描かれている、桜並木を歩く義勇の表情をよく見てください。とても穏やかで晴れやかな表情をしています。悔いが残っていたら絶対に出ない表情です。
正しく自分を認識するとは、自分のプラス面もマイナス面も受入れること。見たくない(気づきたくない)ことから目を背ければ抑圧することになり歪みが生じます。
義勇の気づきと覚醒は、現実社会に生きる私たちに自分の捉え直し方を教えてくれます。
このように『鬼滅の刃』のキャラクターは私たちに人生の気付きを与えてくれます。
マンガやアニメを観るだけでは取りこぼしてしまいがちな大切なメッセージを、「『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方」(アスコム刊)という本にまとめています。今回紹介した冨岡義勇は勿論ですが、竈門炭治郎や禰豆子、炎柱煉獄杏寿郎など、キャラクターたちの台詞やの行動からは学ぶものがたくさんあります。実は、鬼舞辻無惨や鬼たちからも。
ぜひ、マンガやアニメと合わせて、この本「『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方」を読んでみていただければ幸いです。
『鬼滅の刃』で、強い自分を手に入れ、あなたの人生がより充実し耀くものとなりますように。
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