保守は何に怯えているのか?リベラルにも必要な「目配り」とは

『なぜリベラルは敗け続けるのか』岡田憲治氏に聞く #3
2021年06月04日 06:00
ライター・編集者
  • 岡田憲治氏に聞くシリーズ最終回。保守サイドの課題も取り上げる
  • 首相の靖国参拝を支持するのに、屈辱的な日米地位協定に文句を言わない不思議
  • 政治には日常を支える人への目配りが重要。意見の違う人と学び合える居場所を

『なぜリベラルは敗け続けるのか』著者の岡田憲治・専修大教授(政治学)にいまの政治のありようを聞く連続インタビュー。最終回は保守側の課題についても触れていきます。

PeopleImages / iStock
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――「保守」は何を守りたいのか。独立、国柄、ということになるかもしれませんが、少なくとも日米地位協定を変えようともしない状況で「自主独立」を唱えるのはおかしいですね。

岡田 守りたいものは何なのか。大日本帝国の栄光なのか、連綿と続いてきた歴史なのか、皇室なのか。僕の友達にも、「ゴリゴリの保守」と言っていい人物がいますが、彼が「首相の靖国参拝、何がいけないんだ」と言う一方で、あれほど屈辱的な日米地位協定に少しも文句を言わず受け入れていることが、不思議でならない面はあります。日米地位協定がある以上、皇居前にオスプレイの基地を作られても文句は言えない。それを保守は許せるのか、と。

しかし一方で、彼と僕との間に「普段、守りたいと思っている対象とその手法」についての違いはあっても、突き詰めて話をすれば最終的に何を守りたいのかという点では、そう大きく違わないはずです。

岡田 憲治 おかだけんじ 1962年東京生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了(政治学博士)。専修大学法学部教授。専攻は現代デモクラシー論。インターネット・ラジオなど各種メディアにて発言・寄稿。著書多数。PTA会長を3年務め、その経験からの政治提言に注目が集まっている。

とはいえ、僕は「安倍再登板」なんて悪夢だと思っていますし、自民党内の「右バネ」系の人たちとは、当然、相容れません。例えば先日の「LGBT理解促進法案」の了承の過程で、自民党内から出てきた「LGBTは種の保存に反する」などという発言は、思想以前の問題です。

――例のLGBT発言が論外だという点は全く同感です。が、保守目線で言うと彼らは彼らなりに「何かに怯えている」のも事実です。おそらくLGBTを社会が許容することで「自分の思っていた世界観や前提、常識、信条が脅かされる」という恐怖心があり、だからこそ驚くような強さで反発している面があるのではないでしょうか。

岡田 ……その話で思い出しました。僕らが高校生だった頃、日本人がよく朝鮮学校の生徒にカツアゲされたり、喧嘩を吹っかけられてしこたま殴られたりする事件がありました。大学生になって、ある時知り合った在日の友達に「なんであんなに暴れたんだよ?お前ら喧嘩強かったし、本当に怖かったよ」と尋ねたところ、彼はこう言ったのです。

「怖がっていたのは俺たちの方だぞ。世界地図を逆さまにして見てみろ、朝鮮半島は日本列島に覆われて、封じ込められているような気になる。怖がっていたのはお前らじゃない、俺たちの方だったんだよ」。

そうか、驚くほど攻撃的な態度に出るのは、恐怖心からだったのかと気付いたんです。相手が本当はどういう思いでそういう言動に出ているのかは、実際に相手に聞いてみて、話し合ってみないとわかりません。今、LGBTを妙に攻撃する人たちの心理を聞いて、これと同じなのではと思いました。

――「人類がみんなLGBTになったら次の世代が生まれず、人類滅亡じゃないか」という物言いが飛び出してくるのも、知識不足に加え、LGBTの人たちが人類のマジョリティになったら……、という恐怖心からでしょう。

岡田 彼らにとっての「敵」を勝手に認定し、過剰に怖がっている。保守の人が何かと朝日新聞を敵視し、攻撃するのも似たような心のメカニズムなんでしょうね。朝日新聞の力なんてもう日に日に弱っていますよ。それなのに、「朝日が安倍を袋叩きにする」「朝日に対抗しろ」と言って敵視しているのが不思議でならなかったのですが、要するに敵を実態以上に膨らませ、「モンスター化」しているんでしょうね。

撮影:編集部

――保守は「朝日が大赤字」「部数減」と言って喜ぶ一方で、「そうはいってもまだまだ強敵だ」と見ています。

岡田 相手がどういう世界観でものを見ているか、何を怖がって、何を問題としているかは、話してみないと分からないですからね。だから分断した状態ではだめなんです。政治的スタンスや支持政党を超えて友達を作り、頭ごなしに否定するだけでなく、相手が何を大事にしているのか、どこまでなら譲れるのか、それによって何を実現できるのかを考えていく。

僕も「時には自民党から政権を獲るために、組む相手の嫌なところも目をつぶり、鼻をつまんで我慢して、潔癖さを捨ててでも行動することが必要だ」と言って嫌われ、それが理由で離れていったリベラル派・左派の人たちもいます。しかし一人でも友達を増やして「確かに岡田の言うとおりだ。そうしないと現実は一ミリも動かない」と思ってくれれば、パワーとリソースを無駄なく活用できます。

――岡田先生は学問だけでなく、実際に国会議員や地方議員に直接働きかけるという意味での「政治」にも積極的にかかわっておられますが、一方で思いが伝わらなかったり、離れていく人がいたり、がっかりすることも多いかと思います。それでも心折れずに行動し続けられるのはなぜですか。

岡田 私の母方の祖父は、明治時代、浅草でみなしごのような状態だったところを助けられ、社会に育てられたという人でした。そのおかげで僕も生まれて来ることができ、高い教育を受けさせてもらい、なりたかった職業にも就けました。つまり僕は生まれた時点で社会に借金があると思っているのです。生きている間に、少しでも社会に返していかなければならない。だから生きている間にできる限りのことをしたい。

理不尽な目に遭ったときに、「それ、おかしいよ」と誰かが言ってくれる社会、誰かが必ず助けてくれる社会であってほしい。暮らしに関するところから、政治に対する信頼を積み上げていくしかありません。

そのためには、日常を支えてくれている人たちへの目配りがなければならないし、政治の在り方について考えたいという人、何かおかしいなと思っている人たちが、安心して自分の意見や体験を話し、意見の違う人とも一緒に学び合える居場所が必要です。そういう場を保守を自称される皆さんとも作っていきたいですね。

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