あの獺祭も…日本酒の輸出量が急拡大!名門酒蔵が世界展開に注力、輸出用の新規参入も解禁
国内低迷は「イノベーション難しい業界事情」?- 日本酒の輸出量が増大。一方で国内の需要は減少ペースが加速
- 「獺祭」「御代菊」…ブランド酒の酒蔵も海外展開に積極攻勢
- 輸出限定で新規参入も解禁…国内低迷は「イノベーション難しい業界事情」?
従来までは生産量の大半を国内で消費していた日本酒の輸出が今、伸びている。国税庁の発表によると、2020年の日本酒の輸出額は約241億円に上る。国・地域別で最も輸入額が多いのが香港で、約61億円。次いで、中国の約58億円、アメリカの約50億円と続く。
一方で、国内の需要は伸び悩んでいる。今年5月に農林水産省が公表した「日本酒をめぐる状況」によると、日本酒の国内出荷量は1973年には約170万キロリットルを超えていた。しかし、それをピークに減少に転じ、2021年には約40万キロリットルにまで減っている。
特に、この20年ほどは減少のペースが加速している。1998年には日本酒の国内出荷量は、約110万キロリットルだったため、この20数年の間に3分の1にまで減少しているわけだ。
「獺祭」の旭酒造の売り上げの半数は輸出
こうした状況を背景に、近年、名門酒蔵の多くが国内用の日本酒から海外輸出用の日本酒の製造に切り替えている。「獺祭(だっさい)」のブランドでよく知られる旭酒造(山口県岩国市)。同社の桜井一宏社長にブルームバーグが行ったインタビューによると、同社の売上高は今期、過去最高の150億円に達する見通しだという。
そのうちの半分ほどの売り上げを海外輸出が占め、約50億円がアジア圏への輸出だった。同社は今後、アメリカ市場にターゲットを絞り、さらに輸出に力を入れていく予定だという。
創業300年超の老舗酒蔵、喜多酒蔵(奈良県橿原市)も近年、看板商品の「御代菊(みよきく)」を中心に海外輸出に力を入れている。昨年度の売り上げの15%以上が海外への輸出だったという。
日本酒は今、海外市場でチャンスをつかみつつある。そんな中、国も日本酒の輸出を後押しする制度を設けた。2020年度の税制改正で、輸出用に限って清酒製造免許の新規発行が許可されるようになったのだ。「輸出用清酒製造免許」というものだが、日本酒業界に大きなインパクトを与えた。なぜなら、輸出用に限るという但し書きがついているものの、清酒製造免許の新規発行が許可されるようになったからだ。
新規参入が認められなかったワケ
日本では長きにわたり、法的な要件から日本酒の新規製造免許の取得は、実質的に不可能な状態が続いている。もし、日本酒業界に新規参入したいのであれば、既存の酒蔵を買収するしか方法がない。若く有能な人材が、自分の力で日本酒を作りたいと思っても、そのハードルは極めて高い。そんな状況が続いていた。
国税庁はその理由を、既存の酒蔵の保護や市場の安定化のためと説明しているが、新規参入が実質的にできない状況にある業界は、持続的な発展を遂げることはできないだろう。日本酒の消費量が国内で大きく落ち込んでいる理由の一つに、イノベーションを起こしづらい業界事情も関係しているのではないか。それに、酒蔵も年々、減少している。この20年で全国の酒蔵はほぼ半減しているのだ。
そんな日本酒業界だけに、輸出限定とは言え、新規参入を国税庁が許可したことは“画期的”なことだった。
早速、新規参入を果たした会社がいくつかあるが、そのうちの6つが今年6月に同業者組合「クラフトサケブリュワリー協会」を設立した。メンバーは、稲とアガベ(秋田県男鹿市)、WAKAZE(山形県鶴岡市)、ALL WRIGHT(東京都台東区)、haccoba(福島県南相馬市)、LIBROMU(福岡県福岡市)、LAGOON BREWERY(新潟県新潟市)。
これらの会社が製造する日本酒は輸出用で日本では販売されないが、「その他の醸造酒」は国内でも販売される。日本酒の製法をベースに、地元産の果物などを使用して製造された醸造酒が味わえる。帰省や旅行で近くを訪れた際は、試してみてはいかがだろうか。
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