維新代表選と英保守党党首選にケチ……日本メディアは政党が誰のものかをわかってない

党員が党の顔を決める潮流についていけず
SAKISIRU編集長
  • 維新代表選と英保守党党首選のやり方に相次いでネガティブな論調
  • いずれも党員が決定する度合いが強く、自民党などの旧来型と異なる
  • 政党が誰のものなのかを問い直す「政党ガバナンス2.0」の潮流見逃すな
告示後、合同街頭演説を行う馬場、足立、梅村の3氏(維新公式YouTubeより)

日本維新の会の代表選が14日、告示され、足立康史国会議員団政調会長、馬場伸幸共同代表、梅村みずほ参院議員の3氏が立候補。27日の臨時党大会での投開票に向け、本格的な舌戦がスタートした。

そして時を同じくして、イギリス・ジョンソン首相の後任を決める保守党の党首選も25日に決選投票を迎える。この2つの政党は日本ではあまり馴染みがない “党員が自分たちのトップを直接決める仕組み” になっており、政党文化に対し理解が浅い、日本のメディアではネガティブな論調も見受けられる。

党首選び、党員に委ねる維新と保守党

筆者が疑問に感じた日本の報道については後述するが、先に維新代表選と保守党党首選の仕組みをおさらいしよう。

維新は国会議員や地方議員など特別党員30人以上の推薦を得れば立候補でき、最後は、議員も党員も同じ「1人1票」という方式で新代表を選出するという日本の政党では珍しい仕組みだ。

一方、保守党は3人以上の候補者が出た場合、下院議員による予備選で2人に絞り込み、残った2者を党員投票で決めるという方式になっている。今回は当初8人が立候補し、リズ・トラス外相、リシ・スナク前財務相が予備選を勝ち抜いた。

英保守党党首選、決選投票に進んだトラス氏(左)、スナク氏(党公式サイト

いずれも、候補者の選定までは、プロの政治家である議員が行うが、最後は党員の関与の幅が大きい点が特徴的だ。維新は党首選の投票に特別党員586人も参加するものの、全国で約2万人規模される党員票のボリュームが圧倒的だ。保守党は言わずもがな、党の顔を最後に決めるのは党員の手に委ねている。

他方、自民党の総裁選はこれらとは対照的だ。近年、任期満了時に行った党員も参加しての「フルスペック」方式で言えば、20人以上の国会議員の推薦を集めた候補者について、1人1票の国会議員票に、全国110万人ほどの党員票を同数に補正し、「議員票+党員票」を同格にして行う。3人以上が立候補し、1回目の投票で過半数を得た候補者がいない場合は上位2人による決選投票を国会議員のみで行う。昨年の総裁選は、まさにこのパターンで岸田文雄氏と河野太郎氏が勝ち上がったが、決選投票の結果、岸田氏が選出された。

保守党員をdisる日経

このように党員の関与度合いを制御しているのが自民党方式と言える。野党でも党員関与を制限する仕組みになっており、取材する側の日本のメディアもそれが「標準」「常識」になっているからであろう。維新や保守党による党員の関与度合いが高い選挙戦を“異端視”し、批判的な論調になりがちだ。

維新については毎日新聞がきょう15日の朝刊で、「議員・党員『同じ1票』」と題した記事を掲載。他党とは異なる方式が取り入れられた経緯について結党時からさかのぼった上で、「異例の投票方式に議員には困惑が広がっており、見直し論も浮上している」と伝えた。大阪都構想の住民投票での報道トラブルを始め、毎日新聞は「維新の宿敵」としてお馴染みだが、議員優遇の“旧来型”の選挙戦に戻したい勢力の声を伝えることで代表選をdisりたい本音が見え隠れしている。

他方、保守党の党首選は、日経電子版が14日、「英首相決める保守党員、有権者の0.3%、典型は裕福な男性」とのタイトルで報道したが、こちらの酷評ぶりもなかなかだ。ロンドン大学の調査結果から「他の政党よりも男性比率が高く、平均年齢は高め。中高所得者が多い」と指摘。「典型的な保守党員は『裕福な男性』」とレッテルを貼り、「急激なインフレに直面する英国の民意が十分反映されないとの批判もある」などと言いたい放題。ご丁寧に、執筆した本人、駐ロンドンの中島裕介特派員はツイッターで「英国民を正確に代表しているとは言えない」とこき下ろしている。

中島記者本人の政治的思想は預かり知らぬが、日経の基本的な論調はグローバル経済・他国間協調重視だ。イギリスのEU離脱が本決まりする前に迷走していた19年3月には、社説で「英国は離脱への路線修正もためらうな」と訴えた経緯があり、EU離脱を後押しする保守党員に対し本能的に嫌悪感があるのだろう。

無視できない「政党ガバナンス2.0」

党員を党の意思決定にどこまで関与させるのか。さまざまな見方はあろうが、党員投票に比重を置きすぎるとポピュリズムの危険性がしばしば指摘される。それは筆者も否定しない。

他方、日本では、自民党のような大政党でも、国政選で党員が関与しての予備選はやらないことが大半。候補者の公募制度を導入しても審査は密室で行い、蓋を開けてみれば世襲の人物が選ばれているような旧来型をいつまでも継続することがとても民主的、健全と言い難い慣行が続いている。

前述の記事を書いた毎日の澤俊太郎記者や、日経の中島記者にそのあたりの意見を聞いてみたいところだが、事実関係だけを指摘すると、保守党も20年以上前は議員だけで決めていた仕組みに党員が不満を募らせ、現行方式に改めた歴史がある。

ライバルの労働党も、サッチャー政権などにやられっぱなしで野党生活が18年にも及んだ冬の時代に党改革を断行し、下院選候補者の予備選を導入。党首選についても近年、議会労働党、党員、労組などが3分の1ずつの票を持つ制度から、党員・支持者による1人1票制に移行。これは維新の代表選に近い。

参政党の選挙カー(7月9日、東京・銀座で=編集部撮影)

党員の関与度合いを高めていることについては労働党内でも「大量のトロツキストたちが労働党に潜入し、労働党を乗っ取ろうとしている」という批判もつきまとうなど、試行錯誤が続いているが、以前も書いたように、日本でも党員による“DIY政党”を謳う参政党のように、党員が候補者の選出を決めている新興勢力も出始めている。

政党が誰のものなのかを問い直す「政党ガバナンス2.0」とも言える新しい動きが、国内外の政治の現場で起きているのは間違いない。報道する側も、各人各社の意見や従来型の感覚に囚われるあまり、「ポピュリズム」というビッグワードに逃げず、フラットに現状認識をした上で論じていく段階ではないかと思う筆者のような存在は、メディア業界でごく少数派なのだろうか。

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