実は子どもを苦しめかねない呪いの言葉「みんなと仲良くしなさい」

犯罪心理学者が教える「心理的距離のとり方」
犯罪心理学者、東京未来大学こども心理学部教授
  • 犯罪心理学者が親たちに注意を促す子どもへの言葉の掛け方
  • 「みんなと仲良く」は理想論。「心理的距離のとり方」が重要
  • 「お兄ちゃんだから」と役割を押し付ける言葉は要注意

分け隔てなく誰とでも仲良くできる人になって欲しい。そんな願いから「みんなと仲良くしなさい」と子どもに向かって言ってしまう親は少なくない。だが、不用意に使うと苦手な相手とも無理に付き合わせることになり、子どもを苦しめることにもなり得るから注意が必要だ。

※本稿は、出口保行『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』(SBクリエイティブ)の一部を再編集しています。

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「みんなと仲良く」と「差別しない」は違う

「みんなと仲良く」は、言ってみれば「きれいごと」です。周囲の人みんなと本当に仲良くできている人がいったいどれほどいるでしょうか。大人だって、苦手な上司がいたりソリの合わない同僚や部下がいたり、「あいつはどうにも好きになれない」と愚痴っているではありませんか。いろいろな価値観や立場の人がいるから、自分と合わない人がいて当然です。相手に無理に合わせれば、こちらがまいってしまいます。

合わない人に合わせる必要はないし、仲良くする必要もないのです。これは、「差別をしてはいけない」とは別の話です。差別とは、その人の属性によって不当に低く扱うことです。たとえば学校のクラスに外国人の子がいて、その子を「学級委員にはしない」などのように特別扱いをしたら差別です。

人間は人種や民族、性別などを越えて、万人が幸せに生きる権利を生まれながらに持っています。当然、人権を守ることは大切です。子どもに対しても、一人ひとりが大切な存在であり、不当に扱ってはいけないことを教えなければなりません。

しかし、人権を守ることと「みんなと仲良く」は違います。仲良くできない人がいてもそれ自体は何の問題もありません。むしろ、仲良くできなさを何とかしようとしてトラブルになることもあるのです。

心理的距離のとり方を学んでいく

身のまわりにいる人が好きな人ばかりだったらいいのですが、そうでないことだって多いもの。嫌いな人がいるのも普通のことです。好き嫌いの感情をなくすことはできません。大切なことはそれを認めたうえで、嫌いな人とどう付き合うかです。

そのときにカギになるのは「心理的距離のとり方」です。物理的には近いところに嫌いな人がいても、心理的に距離をとって付き合えばストレスが少なくなります。極端な話、「近くにいても、心は何億光年も先の星」というくらい遠いつもりで、当たり障りなく付き合えばいいわけです。

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「お兄ちゃんだから」はいい迷惑

「お兄ちゃんだから、我慢しなさい」
「お姉ちゃんだから、やさしくしなさい」

役割を押しつける言葉は、個性をつぶしかねません。「男だから泣くな」「女だから控えめにしろ」と性別で役割を期待するのも同じです。本人の性質を無視したこういった言葉が重たい鎖になって自由を奪い、耐えきれず非行に走った少年たちを多く見てきました。

出生順位や性別は本人が望んだわけではありません。偶然の結果です。それを強調されて「○○だから」と言われても、本人にとってはいい迷惑です。役割を期待する声かけは、期待にこたえようとして頑張る「いい子」ほど、苦しむことになります。自分自身を抑え、役割を演じようとすればどこかに無理が生じるものです。

親からの期待を嬉しく思う気持ちもあります。きょうだいのお手本になろうと勉強もするし、習い事なども頑張る子は多いです。しかし、うまくいかなくなったときに一気に自信を失ってしまう。そして、何かのきっかけで爆発してしまうという例がよくあります。本人の性質・個性に基づく期待ならいいのです。

「みんなの話を聞いてまとめるのが上手だから、リーダーとして頑張ってほしい」

といった期待は、個性を伸ばすことにつながるでしょう。しかし「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」といった言いまわしは個性をつぶします。外発的な要因で期待する声かけは、良い結果を生みません。

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犯罪心理学者、東京未来大学こども心理学部教授

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