アマゾンがアイスタイルの筆頭株主に!日本企業に異例の投資背景は?

「日本ローカル投資に意外」の声も
  • 米アマゾンが化粧品情報サイト「アットコスメ」のアイスタイルに投資
  • コロナで苦境だったアイスタイルの中での投資受け入れ
  • アマゾンは日本企業への投資は異例、投資家から「意外」の声も。その背景は?

化粧品情報サイト「アットコスメ」を運営するアイスタイル(本社:東京・赤坂、吉松徹郎社長兼CEO)は15日、米アマゾン・ドット・コム(本社シアトル、アンディ・ジャシーCEO)からの投資(※訂正後述)を受け、業務資本提携することを15日明らかになった。同社は三井物産(本社:東京・大手町、堀健一社長)とも提携を結ぶという。

アマゾンが日本企業に投資するのは極めて異例で、国内の投資家やネット企業の経営者の間で驚きの声が上がった。

Satoshi-K /iStock

元「化粧品業界の革命児」

アイスタイルは1999年、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)出身の吉松氏が創業。化粧品ユーザーの口コミサイトの先駆けとなる「アットコスメ」を手がけ、ネットで女性らが商品の評判をチェックして購買につなげ、化粧品メーカーなどがサイトに広告を出すという当時としては画期的なビジネスモデルを構築。2007年にはリアル店舗も展開し始めた。

2012年に東証マザーズ(当時)に上場(まもなく東証1部に移行)。同年に44億円だった売上高は15〜16年に連結で100億円を突破、19年には322億円に到達し、海外展開も進めるなど順調に成長した。吉松氏はビジネスメディアから「化粧品業界の革命児」(東洋経済)とももてはやされたことも。

しかし近年はコロナ禍に直面し、20年は306億円と創業以来初の売上ダウンとなり、それまでの先行投資も響いて50億円の純損失を計上、苦境に陥っていた。そうした中で、アマゾンや三井物産と提携を結び、新株予約権付社債(CB)を発行。株式転換するとアマゾンは36.95%を保有する筆頭株主に躍り出ることになる。今回の提携などを通じ、アイスタイルとしては総額で183億円を調達する見通しだ。

アマゾン側の狙いは?

米シリコンバレーにあるアマゾン本社(Sundry Photography /iStock)

アマゾン側は近年、アメリカ国内でスーパーマーケットを買収するなどネットとリアルの融合に積極的に展開している。日本でも19年にスーパーのライフコーポレーションと提携し、20年には、家電量販店大手ヤマダホールディングスとの提携でスマートテレビ開発に乗り出していた。

しかし、アマゾンは両社については業務提携にとどめており、今回のアイスタイルのように日本企業への投資は極めて異例となる。今回のアイスタイルとの提携を通じ、アマゾンのサイトでアットコスメがオンラインストアの出店が決まっているという。さらなる連携も視野に入れており、アイスタイル側の発表では、

アマゾンジャパンが日本国内で販売事業者向けに提供している各種サービスやテクノロジーと、アイスタイルが展開するコスメ・美容に特化したクチコミ・品揃え・店舗づくりの知見を活用し、コスメ・美容関連のお買い物における利便性やお客様の満足度をさらに向上していくことを目指します。

と意気込みを綴っている。

化粧品とECサイトのユーザー動向を巡っては、AppBrew社が昨年12月に発表した調査で、コスメの購入先のECサイトとして、韓国系の「Qoo10」が51.4%と断トツの存在感を示し、2位のアマゾンは15.5%で、3位の楽天市場の12.5%をわずかにリードするにとどまっている。アマゾンとしては、日本国内の女性らで一定の知名度と信頼感を得てきたアイスタイルとの協業を通じて、追撃体制を強化する狙いがありそうだ。

元GUMI國光氏「攻めまくりの凄いディール」

資本提携のニュースが流れた15日夕以降、ツイッターでは投資家やベンチャー経営者が反応。

アメリカ投資を独自の視点から分析し、ツイッターで8万のフォロワーを擁する人気投資家、レイチェル氏は「@コスメみたいに日本ローカルのサービスにも投資するのは意外ですね」と驚いた様子。

GUMI創業者國光宏尚氏は、総額で183億円になる調達資金額に注目。「アイスタイルが攻めまくりの凄いディール」と評した。

広告会社の日広(現GMO NIKKO)創業者で、現在はシンガポールを拠点に投資家として活躍する加藤順彦氏は、かつてアイスタイルの東南アジア事業を担った。加藤氏は「今後の展開が楽しみです」と古巣の大型提携に期待を寄せていた。

【訂正:18日19時30分】アマゾン側から「現時点では株を保有してない状態であり、投資ではなく出資」との指摘があり、検討した結果、修正します。

 

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