「異端の天国」だった韓国……安倍さんに伝えたかった統一教会を巡るヤバすぎる事情
朝鮮半島の専門家が語る「宗教コングロマリット」の闇- 安倍元首相に筆者が話をしたかった統一教会の問題とは?
- キリスト教関係の新興宗教に疎い日本人が誤認していることとは
- 韓国は「異端」天国、日本で捜査のメスは入らなかった問題の奥に…
安倍晋三元首相が7月8日、参議院選挙の応援遊説中に、奈良県で暗殺された。犯人は統一教会に恨みを抱いていたと供述。安倍元首相が、異端の統一教会(現、世界平和統一家庭連合)関連団体にビデオ・メッセージを送ったため、統一教会との関係を疑い射殺を決意したと報じられている。
この殺害事件で、安倍晋三元首相と統一教会の関係が明るみに出た。
安倍晋三元総理が送った統一教会関連団体へのビデオ・メッセージは、2021年秋頃から噂が出ていた。筆者は21年末に話を聞き、「まずいな」と思っていた。統一教会は、韓国の新興宗教で異端のうえ、日本人信者が献金被害に遭っていたからだ。安倍さんに「あの団体は問題が多いですよ」と話をしようと思っていたのだが、間に合わなかったことが悔やまれる。
「統一教会」で問うべき論点
事件を契機に、与野党党政治家の統一教会との深い関係も報じられている。その多くは、選挙への協力関係だ。
その後、「政治と宗教」にスポットが当たっているが、真に追及すべき問題は2点ある。1つは選挙と宗教の関係だ。「全国区」「比例代表」などの選挙制度がある限り、政治と宗教団体の関係は断ち切れない。
問題のある団体との関係を清算するには選挙制度そのものを見直すべきだが、与野党ともに宗教団体の支援を求め、利権もからむから変更できない。もちろん、宗教団体や信者が、特定の政党や候補者を支援するのは別に違法ではない。政教分離でフランスの例を持ち出す人も多いが、ドイツではキリスト教民主同盟も存在する。宗教団体の政党活動を否定するべきではないが、関係を公表し透明性を維持すべきだろう。
もう1つは、政治家、あるいは国民のキリスト教異端への無知である。
日本人の判断を誤らせる錯覚
仏教関係ならば日本人一般にある程度の判断力はある。ところが、キリスト教関係の新興宗教を判断する知識はない。
統一教会は、文鮮明をイエス・キリストのよみがえりやメシア(救世主)と主張したが、聖書はそうした存在や発言を許していない。だから、韓国の正統的なキリスト教であるカトリック教会はもちろん、長老派、ルターなどのプロテスタントも統一教会を「異端」と批判している。
韓国の偽キリスト教団の特徴は、教祖が「自分はキリストの生まれ変わり」と主張し、自分は「メシア(救い主)である」と宣言する。韓国特有のシャーマニズム(巫女が恍惚状態で、お告げを述べる)と、キリスト教が結びつく。これが韓国的「異端」の典型で、統一教会はまさにこれに当てはまる。
確かに、歴史的に見れば「異端」の烙印がのちに「正統」に変わることもあった。イエス・キリストはユダヤ教会からは「異端」とされ、十字架上で殺された。十字架の無実の「死」は、人間世界に大きな衝撃を与えた。
「異端」とされても、やがて「正統」になるのではないか――。この思いが、新興宗教やニセ・キリスト教を見る人の判断を誤らせる。「キリスト教」もかつては新興宗教だった、との誤った受け止めで、「オウム真理教」を評価した専門家も現れたほどだ。
韓国は「異端」の天国
韓国では、異端や詐欺まがいの新興キリスト教団が数多く生まれ、活動している。韓国は、「異端」の天国だ。統一教会もその一つだったが、事実上、追放され、日本とアメリカで勢力を伸ばし、韓国に里帰りした。
日本では多くの政治家に食い込み、特に90年代には反社会的な方法で信者を獲得し、裁判問題になった。教祖の文鮮明は死んだが、日本社会の「不安心理」に付け込み、今も信者を獲得している。
「多くの献金をした者が天国に行ける。天国に徳を積むのです」
文鮮明は信者にこう説いたが、だいたい、貧乏人から巨額の金をむしり取り破産させる宗教は、ニセモノというほかないだろう。宗教は本来、貧乏人のためにある。社会の底辺で、毎日の生活に苦しみ、悩みを抱える弱者を救済する。イエス・キリストは、貧乏人、疎外された人々のために死んだことを忘れてはならない。
日本の政治家は冷戦時代に、別名の「勝共連合」の名称に乗せられた。70年代に、その集会の取材に行った際には、大物政治家が顔を並べていた。筆者は、日本の政治家が、こんな団体に乗せられて大丈夫かな、と心配していた。政治家は、勝共連合が統一教会と同じ団体と知ってはいただろうが、一般国民に被害を及ぼす宗教団体とは、認識していなかったのだろうか。
警察は、かつて統一教会の捜査に乗り出そうとしたことがあった。オウム真理教の地下鉄サリン事件や、多くの殺人事件捜査が終わった直後に、警察は「次は統一教会だ」と語り、関係者の協力を求めていた。
文鮮明の北朝鮮訪問の「闇」
ところが、統一教会には捜査のメスは入らなかった。警察関係者は、政治家からの圧力があったと暗示した。安倍元首相の殺害事件後に、岸信介元首相や福田赳夫元首相ら自民党実力者が、統一教会に関わっていた事実が改めて報道されたが、かなり多くの政治家が関わっていたのである。
だが、警察や公安調査庁が何もしていなかった訳ではない。統一教会の会員や政治家との統一教会の教祖だった文鮮明氏に関しては、捜査関係者の間で朝鮮総連との関係や韓国情報機関との結びつきが噂されていた。文鮮明は、「反共」を掲げながら、1991年、突然北朝鮮を訪問し、金日成主席と会見した。本来なら、韓国の法律違反だが、逮捕されなかったということは、韓国政府や韓国情報機関との密かな関係があったのだ。
統一教会は宗教というよりも、「宗教をビジネスにした」とも言われる。統一教会は、北朝鮮でホテルを運営し、自動車会社を設立する投資を行ったが、成功せず手を引いた。新聞の「世界日報」を、韓国、日本で発行し、アメリカでは「ワシントン・タイムス」を所有していたが、手放した。いずれも経営は赤字で、統一教会からの支援で成り立っていた。
このほかに、アメリカでは日本食レストランや漁業関係の企業を保有するなど、日本で集めた資金を投資に回していた。教育関係でも、韓国やアメリカで大学や芸術学校など多角的に経営し、韓国では病院も経営している。
世界各地で要人との関係を構築し、政治にも恩を売り、信者からは献金を集め、ビジネスを営む「異端宗教コングロマリット」と化していたのが統一教会なのである。
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