マツダが部品生産で脱中国、自動車業界「国内回帰」に保守派歓迎するも課題は…

円安、経済安保のチャンスに影落とす「電力」
ライター/SAKISIRU編集部
  • 自動車大手マツダが「脱中国」、取引先に国内在庫積み増しの要請へ
  • 国内回帰を急ぐ3つの背景、部品メーカー各社も続々と国内に設備投資
  • こうした動きを保守派は歓迎するが、チャンスを逃している問題が…

日本の最大の輸出産業である自動車産業で、国内回帰が本格化してきた。

日本経済新聞によると、自動車大手マツダの向井武司専務は、12日に行われた役員懇談会で、取引先に対して国内在庫を積み増すよう要請した。これまで中国への依存度が高かった一部部品について、日本で製造するようにも求めるという。中長期的には、中国一極集中を避けるため、国内回帰を視野に取引先との協力を推進していく。

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マツダの脱中国、3つの背景

マツダの国内回帰姿勢の短期的な背景には、中国・上海でのロックダウン(都市封鎖)がある。自動車各社はロックダウンで減産を余儀なくされたが、中でも影響が顕著だったのはマツダだ。マツダは、ロックダウンの影響で日系主要自動車メーカーの中で唯一、2023年度第1四半期の営業損益が赤字だった。

また、今夏の中国は電力事情が急速に悪化した。記録的な猛暑により、エアコンの使用などで電気使用量が大幅に増加する一方、少雨のために水力発電の発電量が減少。家庭用電力を確保するために、中国政府は電力消費量の多い工場などに生産の一時停止を通知した。16日には、トヨタ自動車も中国・四川省内の工場の稼働を停止した。

今後も今年のような異常気象がいつ起こるともわからない中、電力需給が不安定ということは、特に中国に一極集中の企業には大きなリスクになる。さらに、巷間指摘されてきた経済安全保障上の懸念もあるだろう。その中でも今回はサプライチェーンの安定化という問題が大きい。

部品メーカーは国内回帰活発に

「国内回帰」の動きはマツダだけではない。自動車業界全体を見渡すと、部品メーカー各社はすでに昨年から国内回帰の動きを活発化させている。

ジーテクトの群馬工場(同社サイトより)

日刊自動車新聞(2021年3月18日掲載)によると、ホンダ系の大手車体部品メーカー、ジーテクトは、群馬工場(群馬県太田市)に約17億円をかけて組み立てラインの増設を決めた。今年5月から操業を開始しており、2025年までに約18億円の売上高の上積みを見込む。

自動制御ライティングシステムやカメラモニターシステムで知られる市光工業は、100%子会社の九州市光工業(大分県中津市)において、2020年度から2021年度にかけて、総額約12億円をかけて大型設備投資を実施。最新鋭の機器を導入するなどして、エネルギー消費を削減しながらしながら生産を増やすことが可能になり、2021年度に約70人に雇用も生み出している。

エイチワン豊後高田工場(同社サイトより)

また、ホンダの関連会社の自動車部品大手エイチワンは、2020年10月に大分県豊後高田市に工場を新設すると発表。総額で約29億円を投資し、昨年12月に操業を開始した。

こうした部品メーカーの国内回帰の動きに保守系の論客は好意的に反応している。保守派は、経済安全保障の観点から「脱中国」を推進し、地方経済振興を重視しているからだ。

安倍政権で内閣官房参与を務めた都市経済評論家の加藤康子氏はフェイスブックで、「自動車の部品工場が日本に帰ってくる。これが実現できれば日本にとってはとてもうれしい話です。日本の地方経済を支えているので」と歓迎した。

「今こそ電気代を下げよう!」

その一方で加藤氏は、「今こそ電気代を下げよう!」とも付け加えている。円安や中国のさまざまなリスクによって国内回帰のメリットが強まっているにもかかわらず、それがなかなか進まない理由の一つに、電気料金の高騰がある。産業用電気料金(高圧、特別高圧)は、2011年の東日本大震災以来値上がりを続けている。

国民民主党の玉木雄一郎氏も、今年6月にツイッターで、「円安や経済安全保障の観点から、生産拠点の国内回帰のチャンスなのに、電力不足や電気料金の高騰でそのチャンスを逃している」と指摘している。

企業の国内回帰を促進するためには電気料金の抑制と、安定した電力供給能力が必須だ。前出の自動車部品メーカー、市光工業とエイチワンがともに九州に産業拠点を作ったのは偶然ではないだろう。九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が稼働していることによって、九州地方は他の地域と比べると電気料金が抑えられている。

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