民間の力で「空き家問題」解決に期待…シェアエコ、NPO、大手住宅メーカー参入
2033年には全国約3分の1が空き家に!- 全国で深刻化する空き家問題解決に、企業やNPOなど民間がアプローチ
- スペースシェア総研の調査で、空き家問題解決への期待が最も高いとの結果も
- 2033年には全国の空き家率が3割の予測も。自治体だけでなくNPOも活躍
人口減少や少子高齢化が進む地方だけでなく、都市部でも深刻化しはじめた「空き家問題」。その解決に自治体だけではなく、企業やNPOなど民間の力がどう発揮するのか期待が集まっている。

「シェア」で解決期待トップ
シェアリングエコノミー業界の注目株の1社で、スペースシェアを手がけるスペースマーケット(東京都渋谷区、重松大輔社長)は今月9日、シンクタンク「スペースシェア総研」(同、積田有平所長)を設立したことを発表。設立にあたって、「第1回スペースシェアに関する全国実態調査」を実施し、その結果を発表した。
スペースシェアサービスの利用頻度に関する調査では、20代の60%以上、30代の50%以上が「月に1回程度以上」の頻度で利用していることが分かった。利用目的については、「仕事」「パーティ・飲み会」「地域コミュニティの集まり」「趣味・遊び」など回答は幅広かったが、全世代で共通して「仕事」の割合が最も高かった。
さらに、シェアリングサービスによる社会課題解決への期待で最も多かったのは、「空き家課題解決」で全体の18.6%。次いで、「地域や地域コミュニティ活性化」(16.1%)、「多様性の受け皿」(12.5%)と続く結果となった。

空き家放置は、さらなる衰退に
スペースシェア総研のアドバイザーで、空き家問題に詳しい野澤千絵・明治大学教授は今回のアンケート結果の総評に際し、深刻化する空き家問題の現状をこう指摘する。
日本は、「2025年問題」と言われているように、持ち家世帯が多い団塊世代が後期高齢者となり、大量相続時代を迎えます。せっかく使いたいというニーズがあるにもかかわらず、とりあえず空き家のままで置いておくという状況が増えれば、空き家という存在が、「点」ではなく、「面」としての問題に発展しかねません。
その結果、街の価値を下げ、ますます地域の衰退化を招き、次世代が引き継ぎたいと思える住まいや街にならなくなってしまいます。
その上で野澤教授は、スペースシェアサービスが「空き家課題解決」に寄与できると考えている人が多いとの結果に期待を寄せる。
こうした事態(注・空き家の増加や地域の衰退化など)にならないためにも、スペースシェア市場という存在を、まずは空き家の所有者等にも知って頂くことが重要だと考えています。今後、社会課題の解決に向けて、スペースシェア市場における様々な活用事例等をもとに、どのような取り組みや政策が求められているのかを提言していきたいと思います。
地方でより切実な空き家問題
空き家問題は大都市部より地方でより深刻化している。総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」によると、都道府県別で空き家率が最も高かったのは、山梨県で21.3%。以下、和歌山県(20.3%)、長野県(19.5%)、徳島県(19.4%)、高知県(18.9%)という順だった。一方、東京都(10.6%)、埼玉県(10.2%)、神奈川県(10.7%)、愛知県(11.9%)といった大都市部は比較的、空き家率が低い状況にある。
野澤氏が指摘するように、空き家を放置しておくことは、街としての価値を下げることにつながり、さらなる人口流出を招いてしまう結果となってしまう。そのため、地方自治体はさまざまな空き家問題対策をとっている。
たとえば、自治体の空き家問題対策といえば、NPOと行政の共同で行われている「尾道空き家再生プロジェクト」(広島県尾道市)が有名だ。
これまでに18軒の空き家となった歴史的建造物などを再生し、空き家と空き家に住みたい人のマッチングは100件以上に上る。今や、空き家移住者に対して、空き家が足りないという状況になっているという。

地域の空き家を改装し、アート作品として再生した例もある。新潟県十日町市と津南町にまたがる地域で3年に1度開催される芸術祭「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。
過疎化や中越地震などで、空き家になった民家や廃校になった学校をアート作品として再生。アート作品であると同時に、宿泊することも可能だ。コロナ前の2018年に開催された際の来訪者は約55万人、新潟県内の経済波及効果は約65億円に上る。

全国の空き家率は2033年に30.4%
空き家問題の対策に取り組む企業も少なくない。大手住宅メーカー、積水ハウスグループは、空き家活用に特化したサービスを展開。空き家の賃貸から、リフォーム、売却、空き家を解体して土地のみ売却、土地をほかの用途として活用など、空き家に関するすべてのサービスをワンストップで提供している。
野村総研の調査によると、空き家問題をこのまま放置しておくと、全国の空き家率は現在の13.6%から2033年には30.4%にまで上昇する見通しだという。一方で、リフォーム産業新聞社が2016年に刊行した「空き家市場データブック2016」によると、空き家の潜在市場規模は9兆601億円に上るとのデータもある。
空き家問題の解決は自治体だけでは限界があるだろう。特にもともと小さな自治体にとって自らの力だけで解決するのは至難の業だ。冒頭のスペースマーケットをはじめ、さまざまなノウハウを持つ企業がこの市場に参入することによって、日本の空き家問題が少しでも良い方向に進むことを期待したい。
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