東大生が「単位不認定」取り消し求め東大提訴、「異例のバトル」世論戦から法廷戦へ
東京新聞への抗議文に「名誉毀損」訴えも- 東大生と大学側のコロナ欠席による単位不認定問題は法廷バトルへ
- 東大が東京新聞に送った抗議文も「詐病扱い」と名誉毀損を主張
- 「大物」論客も続々と参戦して学生側に加担する異例の展開
東京大学教養学部2年の男子学生が、新型コロナに感染して授業を欠席したことを巡って、大学側が救済措置を認めなかった問題で、男子学生は19日、東大が救済措置を取らずに留年が決まったことは不当だとして、大学側を相手取り、東京地裁に処分の取り消しなどを求めて提訴した。
この間、大学の対応を激しく批判する論調だった東京新聞に対し、教養学部が抗議文を送付したことについても名誉毀損だと訴えている。一連のバトルは、マスコミも巻き込む「世論戦」から法廷に舞台を移すことになる。
大学に処分取り消し求め提訴
報道によると、訴えを起こしたのは、教養学部2年の杉浦蒼大さん(20)。杉浦さんは医学部への進学者が多い理科3類に在籍している。今年5月、新型コロナに感染し、発熱などの症状があったことから必修科目を履修できず、大学側に救済措置を求めたが、認められなかった。
これにより留年が確定することになり、杉浦さん側は「新型コロナにかかった学生に、救済措置をとらずに成績評価をしたことは違法だ」「感染症をはじめ病気で苦しむ人を助けたいと思っているのに、このままでは医師になるのが遅れてしまう」などと主張(コメントはNHKニュース)。大学側に処分を取り消すように求めている。
大学側はこの日、報道各社の取材に訴状が届いていないことを理由にコメントしなかった。ただ、一連の問題では、杉浦さんとは全面対決の様相を呈しており、裁判でも請求棄却を求めるとみられる。
大学側が7月の定期試験からコロナに感染した学生への特別措置を取りやめたことを巡っては、東京新聞が7月17日に「東大、コロナ巡り理不尽な対応」と糾弾キャンペーンを展開。杉浦さんは学内のハラスメント防止委員会に救済を求め、8月4日には、杉浦さんら学生側が文科省記者クラブで記者会見を開催するなど、報道機関を巻き込む「世論戦」に発展した。
「世論戦」ネットで過熱
これに対し、東大側は森山工教養学部長の名前で東京新聞に対し、抗議文を送付。この中で大学側は、コロナ感染への一般的な対応と、特定の学生が特定科目の単位を習得し損ねて留年を余儀なくされることは「まったく相互に無関係の事象」との見解を示し、東京新聞に対し「あたかも二つがリンクしているかのように読者に対して印象づけられている」と批判。
さらに杉浦さんが授業の当日、欠席届を出す学内のシステムにアクセスした記録があることを指摘した上で、「所定の手続きを取れないほど重篤ではあったとは認められない」と反論し、東京新聞の報道姿勢に対し、「ジャーナリズムとしてあるべき取材の適正性、事態の全体を視野に入れた上での記事の公平性・公正性に大幅に悖(もと)る」などと非難する異例の対応となった。
この大学の対応に杉浦さんは「学内システムへのアクセスを根拠に、重篤な症状があったことについてあたかも詐病のような表現がされたことに憤りを覚えます」と猛反発。訴状でも名誉毀損に当たると主張した。
大学側は東京新聞から回答があったことや、所与の目的を果たしたことを理由に、公式サイトにアップした抗議文は取り下げた。現在はネットでアクセスできない状態になっているが、抗議文が大学の公式サイトにアップされてからSNSでは、杉浦さん、東大をそれぞれ支持する意見が噴出した。
杉浦さんは「SNSをはじめ、多くの方が誤った事実を基に議論をしている状況を見て、限られた紙面・報道枠ですべての事実を知っていただくのは難しい」との考えから、事実経過を説明するサイトを立ち上げて対抗する手段に打って出ている。
「大物」論客も参戦
杉浦さんと大学のバトルでは、「大物」論客も参戦し、一学生の杉浦さんに続々と加勢してきたのも異例の展開だ。東京新聞の報道段階では、教育評論家の尾木直樹氏や元東大医科学研究所特任教授でもある上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が識者談話で登場。上氏はこの間、ツイッターでも東大側を猛烈に批判してきた。
また、19日の提訴後会見には、新型コロナ感染拡大の初期に「日本で数十万人の死者が出る可能性がある」と発言して物議を醸した医学者の渋谷健司元東大教授が出席した。
訴訟代理人を務めるのは井上清成弁護士。一般社団法人「医療法務研究協会」の顧問を務めるなど医療現場の法的問題では第一人者とされる。東大が裁判でも全面対決に踏み切った場合は、今後も証人出廷などで大物が参戦するのか。戦いのフェーズが世論戦から法廷戦に移行してもなお、世間を騒がせることになりそうだ。
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(関連記事)東大vs.東京新聞、コロナ感染学生の「単位不認定」報道めぐり異例のバトル
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