巡航ミサイルを1000発配備すれば、中国との「ミサイル・ギャップ」は埋まるのか問題

読売が「政府検討」特報も、専門家からツッコミ続出

読売新聞が21日付の朝刊一面トップで、政府が1000発以上の長射程巡航ミサイル保有を検討していると特報した。ただ、「弾道ミサイルを多数配備する中国との『ミサイル・ギャップ』を埋める狙いがある」と報じたことで、軍事・安全保障の専門家などからツッコミが続出する事態になっている。

※画像はイメージです(allanswart /iStock)

軍事的膨張が止まらない中国やミサイル開発が進化する北朝鮮などの脅威に対し、日本が抑止力としての敵基地攻撃能力保有が防衛上の課題になっている。政府が長射程の巡航ミサイル導入を決めたのはその一環だが、政府内で、具体的に1000発以上という数字が浮上していることが明らかになるのは初めてとみられる。

読売新聞の報道は朝からネットの関心を集め、読売新聞オンラインのアクセスランキングでは1位になっているが(午前11時時点)、記事に対して専門家がツイッターですかさず反応。

ウクライナ戦争の報道で知名度を上げた専門家の1人、小谷哲男・明海大学教授(国際関係論)は「向こうは弾道ミサイルなのになぜこちらは巡航ミサイルでミサイルギャップを埋められると考えるのか」とズバリ核心を指摘した。

2つのミサイルの違いは何か。防衛白書によると、弾道ミサイルは「放物線を描いて飛翔する、ロケットエンジン推進のミサイルで、長距離の目標を攻撃することが可能であり、核・生物・化学兵器などの大量破壊兵器の運搬手段としても使用される」。

これに対し、巡航ミサイルは「弾道ミサイルに比べ、製造コストが安く、維持、訓練も容易で、多くの国が製造又は改造を行っている。また、命中精度が比較的高く、飛翔時の探知が困難」(同白書)という特徴があるが、一般的に弾道ミサイルの方が、巡航ミサイルよりも射程距離が長い。

米ハドソン研究所の村野真研究員(安全保障学)は「米国ではエフェクト・ベースド・オペレーションという軍事作戦理論がありますが、巡航ミサイル弾道ミサイルでは、達成できる軍事効果がまるで違います。中国主力は弾道ミサイルなのに、こちら巡航ミサイルを同数揃えても、単なる豆合わせです」と指摘した。

また、鶴岡路人・慶應大教授(国際安全保障)も「この記事、すでに各方面から突っ込まれていますが、最大失敗はミサイル・ギャップを埋めるという話を持ち出したこと。対艦(巡航)ミサイル長射程化必要性は自明で、対地攻撃を可能にするのもあり得るオプション。でもそれで弾道ミサイルギャップは全く埋まりません」と厳しく指摘した。

元防衛副大臣で、安全保障に詳しい自民党の長島昭久衆院議員は小谷氏らの指摘を引き合いに「対艦巡航ミサイルの誤りかと」と、“声を震わせて”記事に突っ込んでいた。

 

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