フードロス削減を目指すキッチンカーが登場、車体広告を農家支援金に

農家が直面するリスクと日本のフードロス事情は?
ライター/SAKISIRU編集部
  • キッチンカーの車体広告を農家支援金にするユニークな取り組み
  • 背景に気候変動リスクに直面する農業が直面。フードロス削減を目指す
  • 日本のフードロスの現状は?そもそもなぜフードロスが必要なのか

「キッチンカーeat for」(東京都世田谷区、今関麻子代表)は22日、車体広告を農家支援金とするCheerAD(チアード)プロジェクトを開始したと発表した。「キッチンカーeat for」は、2020年2月にオープンした「食べることが、社会貢献に。」をテーマにしているという。

Evolution株式会社プレスリリースより

気候変動による自然災害リスク

CheerADプロジェクトは、キッチンカーの車体に、企業・団体様の社名やロゴシール等の広告を掲載し、その掲載料金をフードロス削減につながる農産物の購入費用、農家の農機具の修理や新たな設備投資にかかる費用の支援に充てる仕組み。

広告料金のうち、ロゴシール制作費を除いた金額のおよそ10%にあたる金額分の食券を、企業・団体に渡す。そして、残る全ての金額を、フードロス削減につながる農産物の購入費用、農家の農機具の修理や新たな設備投資にかかる費用の支援金となる。

この取り組みの背景には、気候変動により農家の自然災害リスクが高まっていることがある。農林水産省の調査によると、2018年は、全国で農林水産業に5679億円の被害が発生し、東日本大震災のあった2011年を除くと、被害額は過去10年で最大となった。このようなリスクと隣り合わせになりながらも、農業に取り組む農家を応援するという意味合いのプロジェクトだ。

日本は年間522万トンのフードロス

また、東京都内の飲食店数が近年、横ばいの中、右肩上がりに増えているキッチンカーでの取り組みという点は、フードロス対策の観点からも意義深い。

農林水産省によると、2020年の日本のフードロスの量は、事業系、家庭系合わせて522万トン。国民1人あたりでは、1日で茶碗1杯分に近い、約113グラムのフードロスを出している計算になる。さらに、世界全体でのフードロスの量は年間13億トンに上る。その一方で、世界では9人に1人(8億人以上)が栄養不足に陥っている。

国連もフードロスに大きな危機感を持ってさまざまな取り組みを行っているが、なぜフードロスをなくさなければならないのか。フードロスを放置すると、多くの食べ物が無駄になってしまうだけではない問題をはらんでいるのだ。

※画像はイメージです(Daisy-Daisy /iStock)

なぜフードロス対策が必要なのか

余った食べ物は、飲食店や家庭からゴミとして出される。ゴミとして出された食品は、処理工場で可燃ゴミとして処理される。しかし、食品など水分を含むゴミを処理する際には二酸化炭素を排出する。フードロスが多くなれば多くなるほど、将来の気候変動のリスクも高まるというわけだ。

また、全世界の人口は2019年時点で約77億人。国連の「世界人口推計2019年版」によると、2050年には約97億人に上る。フードロスについて、何も手を打たない状態だと、今でさえ8億人が上で苦しんでいるのに、人口増加に伴って将来的にはさらに栄養不足になる人が増えていくことになる。

そうした中、日本は、事業系、家庭系合わせての食品ロスを2030年度までに2000年度比で半減するとの目標を立てている。2000年は事業系、家庭系合わせて年間で980万トンの食品ロスがあった。2020年度は522万トンにまで減っているが、目標である489万トンにはまだ遠いのが現実だ。

 

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