維新代表選、誰も論じない3候補の「経済政策」を分析してみた
日本の「オワコン経済」を変えられるのか?- 維新代表選で「経済政策に注目すべき」という筆者が各候補の政策分析
- 「政策通」足立氏、「納税者が納得できる」馬場氏、「生活者目線」の梅村氏
- 日本のオワコン経済打破へ評価できるが、「3つの残念な点」(西村氏)とは
日本維新の会の代表選挙が27日行われる。創業者である松井一郎氏の退任を受け、今回の焦点は、組織としての在り方・運動論が中心のようだ。
候補者からは「道州制」の必要性が説かれるなど、政策的に非常に有意義な提言も見られる。統治機構改革や行財政改革の内容の話が目立つものの、注目すべきなのは、経済政策である。
参院選で見た「経済政策」の評価
日本維新の会は、参議院議員選挙では、とても素晴らしい政策を提起した。1人当たりGDPが伸びていないという問題意識、改革の必要性など、時代が求めている、未来に必要な提言だった。公党なのだから、これくらい出してくれないと困るとはいえ、筆者としては他党と比較して圧倒的に評価できる内容であった。
具体的には振り返ると、次のような内容だ。
- 「ジョブ型」雇用への転換促進のため、労働基準法を改正
- 労働市場のニーズを踏まえ、公的職業訓練を徹底的に見直す
- 就労意欲の向上と雇用の流動化
- 労働市場全体の生産性と賃金水準の向上を実現
- 解雇ルールを明確化・労働契約の終了に関する規制改革、労働市場の流動化・活性化を促進
出典:日本維新の会 参院選2022公約
こうした政策は、既得権益打破という理念とも通じるものである。
「耳の痛いこと」を言う政策通、足立氏
今回、代表選に出馬しているのは、足立康史氏、馬場伸幸氏、梅村みずほ氏の3人(詳細)。簡単にキャリアを紹介すると、足立氏は官僚出身で大阪9区選出の衆議院議員。歯に衣着せぬ発言で有名だ。馬場氏は堺市議出身で大阪17区選出の衆議院議員。梅村氏はフリーアナウンサー出身で大阪選出の参議院議員である。
なかでも、馬場氏が「政策通」という足立氏が独自のサイトや公約(重点公約パンフレット)を作成、ユーチューブで公約解説をするなど精力的に活動。「社会保障制度、税制、労働市場が壊れているから、(経済)成長しない」という問題意識を持っている。
経済成長のための「税の構造改革」の必要性を主張(ニコニコでの討論会)、「フロー(収入)減税はするが、ストック(資産)増税の話は維新はしないのです」と主張し、巨額の投資をしている投資家については資産課税の必要性があると言及している(日経テレ東大学)。
そして、経済政策で大事な原発・エネルギー政策である。足立氏は「グリーン・グロース戦略」の推進を明確にしている。
具体的には
- 安全性が確保された原発の再稼働
- 老朽原発のリプレースを積極的推進
- 排出権取引制度の導入推進
- スマートグリッドの推進
という提案だ。ウクライナ侵攻後のエネルギー問題に対応する政策と言える。
足立氏は、「耳の痛いことを言う」という覚悟が特徴である。
馬場氏「シンプル・イズ・ベスト」
馬場氏は出馬会見において、「日本大改革プラン」についても改めて重要性を力説している。ちなみに「日本大改革プラン」は漫画も制作されている。
詳細を見ると、なかなか素晴らしい策を提示している。
あるべき姿(TOBE)のために、何をするのか。日本の問題への解決策、処方箋を提示し、明確にしている。消費税・法人税・所得税の減税、ベーシックインカムといった政策を提示している。これらの政策は、それぞれ消費喚起・企業の競争力向上・可処分所得の増加、ユニバーサルなセイフティーネット強化という目的であることも明確化している。
何のために政策を行うのか、そして、どういった社会につなげるのか、という点が可視化、論理的に説明されていて、馬場氏の理念である「納税者が納得できる」政治の一端を見ることができる。
また、馬場氏は、再チャレンジができる社会づくりを目指していること、安心して改革に取り組む土壌づくりがベーシックインカムであることを明確に語っている。
資産課税については、「一定の所得を超える人には何らかの負担をしていただくことを検討」(日経テレ東大学)とも言及。生活費の値上げを受けて、国民生活レベルの経済政策について主張している。特に、消費税の軽減税率を物価の上昇に合わせて下げていくことを岸田政権に問いたいとも主張している。
具体的にどのように改革を行うのか。馬場氏は、「シンプル・イズ・ベスト」という理念を提示しているのは興味深い(ニコニコでの討論会)。
生活者目線の梅村氏
多選禁止などをメインに掲げていて、経済政策については、あまり明確にはされていない。「維新八策」「日本大改革プラン」の継承ということらしい。
民間目線・生活者目線という立脚点からの理念的発言が色濃い。消費税は時限的に下げるべきであるとしている。具体策では「日本を活性化する」としてベーシックインカムを重視している。実現するためには、財源論を考えるべき、特に金融資産課税は導入を検討すべきであると主張している。
エネルギーについては地熱発電の必要性も主張している。ある討論会では原発の新増設をみとめるべきという足立氏に対して、馬場氏とともに梅村氏は反対を示している。
日本大改革プランをいかに進めていけるのか?
ここまで3候補それぞれの経済政策を見てきたが、残念な点が3つある。
第一に、日本経済の問題は、
- 資本主義とは違った形での賃金が決定され、労働市場が機能していない
- 労働者が賃上げを要求しにくい仕組み・組織風土
であることに対して適切な処方箋を提示しているにもかかわらず、説明がされていないこと。
第二に、維新の会は「新自由主義」の党とみられているが、現在の日本経済のオワコン状況は「新自由主義の問題ではない」というメッセージを伝えきれていないこと。
第三に、日本企業の競争力向上、への具体的な処方箋が言及・提示がなかったこと
とはいえ、「日本大改革プラン」を重要視していることは評価したい。「挑戦のためのセーフティーネット」を前提に、労働法制の見直し、労働市場の流動化及び産業構造の転換、労働環境の改善……。日本のオワコン経済を変える政策を持った党なので、より具体的、実践的な提言を期待したい。政権担当能力を証明できるのではないか。
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