日本電産、また「ポスト永守」育成に失敗…ネットでは“トヨタ式世襲”のススメも
通算4人目…日産出身の関社長、わずか2年半で退任- 日本電産の関潤社長兼COOが退任、後任は創業メンバーの小部博志副会長に
- 関氏はわずか2年余での退任。永守重信会長の後継者が白紙に
- ネットでは「トヨタを見習って世襲に」との声も。なぜ世襲にしないのか…
日本電産は10月から、小部博志副会長が社長兼最高執行責任者(COO)に就任する方針を固めた。現在、社長兼COOの関潤氏(61)は退任する。日本経済新聞によると、関氏の退任理由は担当する車載事業の業績不振で、関氏は社長退任とともに退社する意向だという。
「ポスト永守」また白紙
関氏は、1986年に日産自動車に入社。技術畑を歩み、やがてカルロス・ゴーン社長に見いだされ、2014年に専務執行役員、2016年には日産のナンバー3である副COOに就任した。
ゴーン社長の事件後の2020年1月、日本電産に特別顧問として入社。同年4月には、社長兼COOに就任。当時は創業者の永守重信会長が技術者出身でもある関氏を「ものづくりのプロ」と惚れ込み、実際、21年6月には関氏は社長兼CEOに就任するなど「ポスト永守」の立ち位置だったはずだが、10か月後の今年4月、社長職にとどまったものの、CEOからCOOに“降格”。永守氏がCEOとを兼務し、再び陣頭指揮を取っていた。
一方、新社長の小部氏は、日本電産が1976年、永守重信会長とともに最初の社屋であるプレハブ小屋で働いていた最古参メンバー。結局、関氏が就任からわずか2年半で社長を退任し、小部氏にバトンを譲ったことで、日本電産最大の問題である、永守会長の後継者問題は名実ともに白紙に戻った。
元GUMI国光氏「老害化でなければ良いけど…」
このニュースはネットでも高い関心を呼んだ。GUMI創業者で、現在はブロックチェーンやVR事業を展開する国光宏尚氏は「永守さんの老害化でなければ良いけど…」とツイートしていた。
関さんもあれだけ公衆面前でプライド傷つけられると残らないですよね… 外部から優秀な人はもう来ないでしょうね。永守さんの老害化でなければ良いけど…
関さんもあれだけ公衆面前でプライド傷つけられると残らないですよね… 外部から優秀な人はもう来ないでしょうね。
永守さんの老害化でなければ良いけど… https://t.co/tXZfzEwBuL
— 国光宏尚 元gumi (Hiro Kunimitsu) (@hkunimitsu) August 25, 2022
国光氏が指摘する、関氏が公衆面前でプライドを傷つけられることとは、永守氏が幹部宛のメールに「経営力の低い人物をトップに据えたのは自分の判断ミスだった」と書いたことなどをさすと見られる。今年1月には、ブルームバーグがそうした永守氏が社内で示した関氏への“失望”をすっぱ抜いて騒ぎになった。
一般ユーザーからは、日本電産の行く末を心配する投稿が目立った。
お目に叶う方はなかなか現れないのか、、、イメージは悪くなるわね。
永守さんが生きている間は、もう誰が来てもダメなような気がする・・
ソフトバンクもそうだけど意見する人は無理なんだろうな。創業者の周辺をイエスマンで固めちゃうとやばいよ。
「トヨタを見習って親族から後継者を…」
いっそのこと世襲に切り替えたらという意見も。「金儲けのレシピ」(実業之日本社)の著書がある、経営者で投資家の事業家bot氏は、「世襲の後継者を周囲が盛り立てる形でやっていくしかないだろう」とツイートしていた。
日本電産、永守会長の後継候補だった関社長が退任。一代で売上2兆円まで育てあげたオーナー経営者と同等の能力を持つ人がそこら辺にいるわけないのに、引き抜いてはクビ、を繰り返すのはお互いにとって不幸。世襲の後継者を周囲が盛り立てる形でやっていくしかないだろう。
日本電産、永守会長の後継候補だった関社長が退任。一代で売上2兆円まで育てあげたオーナー経営者と同等の能力を持つ人がそこら辺にいるわけないのに、引き抜いてはクビ、を繰り返すのはお互いにとって不幸。世襲の後継者を周囲が盛り立てる形でやっていくしかないだろう。
— 事業家bot (@Midnight_Tokyo) August 25, 2022
事業家bot氏のように、「トヨタを見習って親族の中から後継者を見つけてはどうか」という指摘も少なくなかった。
そのトヨタは現在、トヨタグループの創始者・豊田佐吉氏のひ孫にあたり、第6代社長の章一郎の長男、豊田章男氏が2009年から社長を務めている。章男氏が社長になる前に、3人の豊田家以外の人物が社長になっているが、いずれも短期政権で終わっている。
グループ創始者・佐吉氏の孫で、トヨタ創業者・喜一郎氏の息子の豊田達郎氏が1995年に社長を退任後、奥田碩氏が豊田家以外から28年ぶりに社長となったが、4年後の1999年に退任。その後、章男氏が社長になるまでに、張富士夫氏、渡辺捷昭氏が社長に就任しているが、張氏は6年、渡辺氏は4年で社長を退任している。
トヨタとは事情が異なるとはいえ、日本電産も永守氏が社長を退任した後に、日産自動車で、商品企画本部長、タイ日産自動車社長などを歴任した吉本浩之氏、そして関氏が社長になっているが、結果的にいずれもわずか2年ほどで社長を退任した。
過去に永守氏の後継者と取りざたされた人は吉本氏、関氏だけではない。カルソニックカンセイ(現・マレリ)の社長だった呉文精氏は、2013年に日本電産に入社、後継者候補として2015年までは副社長を務めたが、同年9月で退社した。シャープの社長や会長を歴任した片山幹雄氏は、2014年に入社し、副会長や最高技術責任者を務めたが、2021年に退任している。
日本電産の後継者問題のこれまでの経緯を見れば、事業家bot氏の指摘通り、むしろ「世襲の後継者を周囲が盛り立てる形でやっていくしかない」という意見に一理あるようにも思える。
永守氏には経営者の2人の息子がいるが…
実は、永守氏には1971年生まれの長男・貴樹氏、1976年生まれの次男・知博氏という2人の息子がいる。貴樹氏は、1995年に東海銀行(現:三菱東京UFJ銀行)に入行。現在は、殺虫剤ブランド「バルサン」、「水だけで汚れが落ちる、洗剤いらずの魔法のスポンジ」で知られる「激落ちくんシリーズ」などを手掛けるレック株式会社の社長を務めている。
次男の知博氏は、2000年に富士通に入社し、退社後の2002年に米・サフォーク大学で経営学修士(MBA)を取得。現在は、2009年に自ら創業したエルステッドインターナショナル株式会社の社長を務める。同社は、テクノロジー関連事業への投資・育成や教育関連事業を手掛けている。
いずれも現在、会社の経営者だが、永守氏には2人の息子を後継者にする意思はないとみられる。
永守氏は、その理由を次のようにメディアに語っている。
「(注・息子を後継者にしないのかを問われ)それは私が決めることじゃない。私以外の全社員に『息子をトップにしろ』といわれたら別だが、私が選ぶことは絶対にない。そこは徹していますよ。自分たちの道を進めばいい。子供のころから『お前たちはお父さんの会社には入れないよ』と話してきた。『教育はしてやるから、あとは自分たちでやれ』『お前たちも会社の社長なんだから、自分の会社を大きくしろ』と話してある。人間はその人の器に応じた会社しかつくれないのだから」(NIKKEI STYLE、2016年6月14日)
SAKISIRUでもおなじみ、ジャーナリスト・井上久男氏によると、関氏は永守氏から三顧の礼を尽くして後継者として迎えられたという(「週刊現代」2022年7月23・30日号より)。そんな関氏まで永守氏のお眼鏡にかなわなかったとなると、日本電産の後継者問題はますます混迷を極めていきそうだ。
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