非市場戦略、WHY-WHAT-HOW…アプローチ手法に沿った「仕事の素養」とは②

「企業から社会を動かす行動学」第6回
マカイラ株式会社 マカイラ公共政策研究所所長
  • ロビイングやルールメイキングの仕事に必要な「仕事の素養」続編
  • 非市場戦略、WHY-WHAT-HOW…全てのアプローチ手法の素地について解説
  • 制度や法律を変えたい。そのために何をやるか…ニーズと対応方法の整理

連載6回目です。前々回、アプローチ手法を5つに大別した内容を書きました

アプローチ手法のひとつの RULE を例にしてロビイングやルールメイキング業務に求められる素養を前回書きました。今回はその続きとして、全てのアプローチ手法の素地となる共通事項を、私が属するマカイラのアプローチに沿って、書いていきます。

metamorworks /iStock

あらためてパブリックアフェアーズとは何かを考える

共通の素地を語る前に、ここであらためて、今までの連載を振り返る意味でも、パブリックアフェアーズとは何かを書いてみます。

(1)パブリックアフェアーズとは、非市場戦略の構想と実行である

通常、企業が戦略を考える場合に、市場戦略にとどまりがちです。つまり、自社(Company)、市場(Customer)、競合(Competitor)という3Ⅽの世界にとどまり、これら以外を所与として、どう対応するかを考えます。

これに対して、非市場戦略とは、現在の外部環境を所与とせず、自らの戦略目的達成のために好ましい「環境」を整えることを構想することです。外部環境とは、①政治(Politics)、②経済(Economy)、③社会(Society)、④技術(Technology)の4つである。この4つを自分が望ましいように整えるにはどうしたらいいかを考え抜くのが非市場戦略です。

(2)非市場戦略の実行とは、自分の社会的主張への仲間づくりである

目指す環境を整えるためには、自分の主張に「理解⇒賛同⇒支援」してくれる関係者(非敵対者⇒支持者⇒仲間)を増やしていくことで初めて実現が見えてきます。そのためには、「自分の利益」だけを主張をしていては実現しません。賛同・支援してくれる仲間を増やせないからです。

「自分の利益だけの主張」を、「相手や社会にBenefitをもたらす主張」にまで拡張・進化させて、賛同・支援してくれる仲間を増やすことが重要になります。

WHY-WHAT-HOW を追求する

上記で述べた非市場戦略を構想し実行するにはどのような素養が必要なのでしょうか。WHY-WHAT-HOW を徹底的に追求することこそが本質です。これは三位一体であり、どれか一つをすれば済むというものではありません。

(1)Why(目的)を追求する
そもそも組織は、なぜ、何を、目指しているのか? Mission/Purpose は何か。組織の目的に照らして、どのような事業環境が、なぜ好ましいのか?

(2)What(目標)を追求する
好ましい事業環境を整えるために、あるべき法制度・ルールはどのようなものか。具体的な法令等のどこがどうあるべきなのか。社会のどのセグメントから、どのような評価・支持を得るといいのか。

(3)How(方法)を追求する
どうすれば実現できるのか。働きかけるべきステイクホルダーは誰なのか。どんなメッセージ/情報を、どんな方法で届けて、どのような合意・評価を形成するべきなのか。

考えて、考えて、追求する!(kazuma seki /iStock)

パブリックアフェアーズのニーズと対応方法の事例

前回と今回書いたものを別の観点から具体化してみることによって、パブリックアフェアーズとは何か、必要な素養は何かの一端が触れられれば幸甚です。

① ニーズ
制度や法律を変えたい、新しい概念やイシューを普及させたい、新しいテクノロジーやビジネスを普及させたい、革新的な組織や団体をプロモーションしたい など

②対応方法の事例

  • 政策課題に関する調査報告/提言の執筆
  • 「白書」作成などのための専門家パネルの設置
  • 中央省庁、議員などへ説明し理解を得る
  • 陳情や普及提唱のため、団体設立支援
  • 有識者を集めたシンポジウムその他イベント企画
  • イシュー喚起のため、メディア取材招聘/ SNS キャンペーン
  • 有識者/インフルエンサーと企業や NPO の仲介
  • ベンチャー企業と NPO、革新的な地方自治体の仲介
  • 革新的企業や団体のブランディング支援 など

さいごに

いままで述べたようなことをすべてこなすには、かなりの素養が必要であるが、1 人でそれを満たすのは無理です。したがって、本当に『コト』を成すには、他人との信頼関係と他人との連携に行きつくということを書いて、今回の記事を終了します。

 
マカイラ株式会社 マカイラ公共政策研究所所長

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