「公道上のセクハラ考えられない」猪瀬直樹氏、朝日新聞と三浦まり氏を名誉毀損で提訴
拡散したバズフィードなどにも責任追及か- 参院選直前に「セクハラ」報じられた猪瀬直樹氏が名誉毀損訴訟
- 被告は朝日新聞と有識者としてコメントした政治学者の三浦まり氏
- 「公道上のセクハラ考えられない」気になる訴状の中身は?
7月の参院選に日本維新の会公認で比例区から出馬し、初当選した作家で元東京都知事の猪瀬直樹氏が6日、選挙直前に起きた「セクハラ騒動」を報じた朝日新聞と同紙が有識者としての見解を求めた政治学者の三浦まり氏(上智大教授)に名誉を毀損されたとして、1100万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

トップ当選のはずが選挙に打撃
一連の騒動を巡っては猪瀬氏らの当事者はセクハラ行為があったことを全面的に否定している。しかし報道された直後からSNSで拡散し、ネットで炎上状態に。三浦氏のほかにも有識者やジャーナリストらの“インフルエンサー”が断定的に論評する人が相次いだ。
その後の参院選では、維新の比例候補者でトップ当選の予測も一部にあった猪瀬氏は、当選者8人中5位とかろうじての当選となった。セクハラ行為の相手と報じられた海老澤由紀氏は東京選挙区で53万票を集めたものの、3万票差で次点に終わり、猪瀬氏サイドは一連の報道の影響があったと見ている。
参院選公示10日前の6月12日、JR吉祥寺駅前の公道で維新が街頭演説会を開催。猪瀬氏と海老澤氏らの候補予定者のほか、同党の吉村洋文副代表(大阪府知事)、音喜多駿政調会長(参院議員)らも応援に駆けつけていた。猪瀬氏は3番手で登壇し、その両隣には海老澤氏と音喜多氏が立っていた。
訴状の中身は?
訴状によると、猪瀬氏は「維新の会は若い人たちが幹事長、政調会長などを務めるベンチャーの政党」などと組織の若さをアピールした際、音喜多氏の肩をたたきながら氏の年齢を尋ねるなどした。その際、音喜多氏も猪瀬氏の腰に触れて同調した。
次に猪瀬氏は海老澤氏の肩をたたいて紹介した。同氏がスノーボードの選手出身だったことに関連し、猪瀬氏は北京五輪金メダリストの平野歩夢選手に言及。ところがその流れで候補者である海老澤氏の名前を言う際に誤って「平野歩夢は…」と言い間違えた。猪瀬氏が改めて名前を言い直し、海老澤氏も自身の名前を示そうとタスキの上部付近を触れた。猪瀬氏もこれに続いて触れたが、この時の一連の動作が「セクハラ」と報じられた。
訴状で猪瀬氏は
演説会は公道上で、しかも多数の聴衆の前で行われたものであるから、そこで演説する政治家が、同席した他の政治家にセクハラをすることなどおよそ考えられない状況である。原告(注・猪瀬氏)は、海老澤氏の胸(乳房)付近に手を当てたことはなく、肩に手をやったのは紹介の際に親愛の情を示したものであって、その直前に音喜多議員の肩に手をかけ、音喜多議員が原告の腰に触れたと全く同じである
などとセクハラ行為を否定した。騒動を巡っては、海老澤氏も騒動直後のブログで、猪瀬氏が主張する事実経過を述べた上で、
胸を触っていないし、仮に当たっていたとしても、それはたすきをたたいた結果であり、変に触る意図は全くないことは明白なのです。
猪瀬さんは、名前を間違えたことを気にしています。肩を何度もたたいたのは、スマンという意味もあったでしょう。それを感じ取っていたから、わたしは不快に思わず、全く覚えていなかったのだと思います。
と綴り、全面的に否定した。

三浦氏、紙面で「間違いなくセクハラ」
これに対し、朝日新聞デジタルは6月17日、『「たとえ本人がよくても…」 演説中に女性触った猪瀬氏、その問題点』と題した記事で騒動を取り上げた。記事の冒頭で「猪瀬氏が応援演説した際、女性の体に複数回触れたことに批判がわき起こっている」と客観視する形で微妙に断定を避けながらも「政治におけるセクハラは、被害者だけでなく社会にどんな影響を与えるのか」と提起。その上で、三浦氏へのインタビューを掲載している。
三浦氏は女性の政治参画を促す活動に積極的で、政治とジェンダーの論客として知られる。三浦氏は記事の中で、
映像では、胸に触れていたように見えました。間違いなくセクハラではないでしょうか。
と述べるなど一方的に事実関係を断定していた。なお、猪瀬氏や海老澤氏らは映像については「切り取られた動画が拡散した」との認識を示している。また、三浦氏は、海老澤氏がセクハラを否定したことについてもインタビューにおいて
今回の猪瀬氏は応援弁士の立場。応援してくれる人に対して、この立候補予定者は余計に立場が弱く、抗議しにくい背景があります。
などと組織の都合が原因で声をあげられなかったとする見解を示した。こうした三浦氏の発言について猪瀬氏サイドは訴状で「セクハラをしたと述べている」と主張している。一方、朝日新聞の媒体責任については、
ある問題が生じたときに、対立する意見の論者2人がそれぞれの見解を開陳するという形式になっていれば、どちらかの論者の見解が、これを掲載した報道機関の見解と見られることはないかもしれないが、本件のように1人の見解しか掲載されておらず、しかもその見解が識者のものとして掲載されているのであれば、読者は、識者の意見を正しいと思い、これを掲載した報道機関も同じ見解であると判断する。
などと主張。三浦氏の見解が「朝日新聞としての見解ではない」といった記述がないことなどからも、「朝日新聞は、自らの見解として原告は『セクハラを行なった』と報じた」と述べた。
ネット媒体の責任論も
猪瀬氏は提訴にあたり、「朝日新聞が誤った記事を掲載したことで、それまでネットで話題になっていたことが、一気に拡大し、私がセクハラをしたという誤解が広まりました。 私の7月の参院選での得票結果は、この誤解が大きく影響しています。選挙前、立候補予定者に関する報道は正確なものでなければなりません。そういったことを問うため、提訴に踏み切りました」との談話を発表した。
ネットでは、朝日新聞系のニュースサイト「バズフィードジャパン」が動画の“問題シーン”を引用しながら報じた記事を掲載し、ネット上で大拡散。配信先のヤフーニュースではコメント数が5000を超える大反響を呼び、コメントの多くがセクハラを断定的に論じている。猪瀬氏サイドはこのバズフィードの記事についても問題視しており、今後、法的措置に踏み切るか検討する。
なお、猪瀬氏の訴訟代理人は、原英史氏が毎日新聞を訴えた裁判でも代理人を務めた喜田村洋一弁護士。一般的に新聞社相手の名誉毀損訴訟で勝つのが容易でないとされる中、二審で一部勝訴を勝ち取ったその手腕がどのような法廷戦術を見せるのかも注目されそうだ。
■
SAKISIRU編集部では6日午後、朝日新聞社と三浦まり氏への取材を要請する。7日夕方の期限までに回答があり次第、追記する予定。
【追記:17:20】朝日新聞社はSAKISIRU編集部の取材に対し、「訴状が届き次第、内容を精査したうえで対応を検討します」と回答した。
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