「アマゾン薬局」が注目:2023年にもスタート、すべてオンラインで処方薬の販売が可能に

患者の利便性向上に期待も、物流・データ占有に警戒も
ライター
  • アマゾンが日本で処方薬販売への参入を検討
  • 診察から薬の受け取りまで、完全にオンラインで行うことも可能になる
  • 患者の利便性が向上するとの見方がある一方、アマゾンへの警戒感も

ネット通販大手「アマゾン」が、日本で処方薬販売への参入を検討しているとの報道が注目されている。日本経済新聞によると、サービス開始は電子処方箋の運用が始まる2023年を目指しているという。

※画像はイメージです(Chaay_Tee/iStock)

患者がオンライン診療や対面での診察を受けたあと、医療機関は電子処方箋を発行し、アマゾンのサイトを使って薬局に調剤を申し込む。薬局はオンラインで服薬指導を行い、アマゾンの流通ルートを使って薬を患者に届ける。

診察から薬の受け取りまで、完全にオンラインで行うことも可能になる。急な発熱やすぐに服薬が必要な場合は不向きだが、持病があって定期的に薬を受け取らなくてはいけないケースなどには、適しているかもしれない。

現在、日本には約6万の調剤薬局があるという。

UCLA医学部・公衆衛生大学院(医療政策管理学)准教授医師津川友介氏は、「アマゾンによって既存の業界は打撃を受けるかもしれませんが、患者の利便性が向上する可能性は高いと思います。アメリカでは処方箋が発行されると、CVSなどからテキストが届き、その場で支払いと郵送の手続きを完了することができます」と説明。アメリカでは、すでに実用化が進んでいるようだ。

薬剤師で「ロボット薬局 テクノロジー×薬剤師による薬局業界の生き残り戦略」の著者、渡部正之氏も「いよいよアマゾン薬局が上陸します。唯一の対抗策は『待ち時間ゼロ』を実現するロボット薬局です。日本の薬局は今すぐロボットとICTを実装して、業界全体で力を合わせてこの脅威と戦わなければなりません。薬剤師の皆さん、どうか目を覚ましてください」とツイートし、業界再編に向けた対策が必要と説明した。

このほか、自身は薬剤師というアカウントも

クリニック側は対面でもオンラインでも患者希望で『電子処方箋を発行』 それをゆっくり家で受け取るか、リアルの場での服薬指導を希望するか。淘汰されるのは遅くて質の低い薬局

と指摘。患者にとってはサービス向上につながるとの見方を示した。

薬局利用者からは、こんな声もあった。

結構な頻度で薬局行ってるからこれかなり助かるなぁ。そして薬局側にとっては相当なゲームチェンジになりそう

だが、アマゾンへの警戒感も根強い。

栃木県で地域薬局の薬剤師をしている小嶋慎二氏は、「仲介っていうのは聞こえがいいけど、がっちり手数料をとられて、実質Amazonの下請けじゃないの?何もかもオンライン服薬指導で果たしていいのかな まあ保険調剤だけで経営していくことは大変な時代に」とつぶやいた。

確かに、将来アマゾンが薬局業界を牛耳るような世界になってしまうことは、避けたいものだ。以下のような声もあった。

物流全部奪われそうだな
(奪われる=海外に流れる。手数料は上乗せ…)

各人の病歴なども、アマゾンのデータ上に集まることになる。

個人情報収集だね? 誰がどんな薬を飲んでるか丸わかり。そしてビッグデータへ。あぁ怖い怖い。

従来通りの対面での受け渡しのほうが適しているケースもあるだろうし、すぐにはサービスを使いこなせない人もいるかもしれない。それでも、新たなサービスが加わることで効率化が進み、医療の質が上がっていくことが期待できそうな話だ。実際に運用が始まったらどうなるのか、注目したい。

 

 

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