蛇口の盗難が、温室効果ガス対策と関係している理由

資源価格高騰の先に...
2021年06月07日 06:00
人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)
  • 水道の蛇口が盗難が各地で多発。スクラップ転売が目当てか。
  • 銅の価格の世界的な上昇が背景。中国は資源高騰に市場介入
  • 銅が「温室効果ガス対策に欠かせない資源」と筆者。具体的には?

最近水道の蛇口が盗まれる事件が頻発している。5月21日に神奈川県相模原市の団地の水道の蛇口が136個盗まれ、それ以前にも平塚市や厚木市の公園、伊勢原市の建設現場などで蛇口などが盗まれる被害が相次いでいる。

蛇口の盗難を報じるNHKニュース(2021年5月22日)より引用

神奈川県だけでなく、新潟県でも5月25日、新潟市の会社の資材置場から蛇口約25個などを盗んだ容疑で建設作業員2人が逮捕された。さらに蛇口だけでなく、広島県三原市で、使われなくなった市の施設や元小学校から5月25日夕までにエアコンの室外機が31台盗まれた。

背景に銅価格の世界的上昇

これらの窃盗犯の動機は、容易に推測がつくように、蛇口などをスクラップ商に売却してお金を得ようとしたものだ。蛇口などの盗難は今に始まったことではなく、これまでにも発生していたが、最近立て続けに発生しているのは、銅の価格が世界的に上昇していることによる。

盗まれた水道の蛇口は真鍮製で銅が60%以上含まれており、エアコンの室外機にも配管や導線に銅が使われているのだ。

鉄鋼石、銅、石炭、など世界の資源価格はこの1年間で2倍以上に急上昇した。鉄鉱石は昨年4月1日には1トン80.34ドルだったのが今年5月12日には約2.7倍の218.38ドルに上昇し、銅は昨年3月25日に1ポンド2.23ドルだったのが、今年5月11日には約2.1倍の4.78ドルに上昇している(いずれもMarket Index のデータ)。

工場の銅線リール(valtron84/iStock)

このような資源価格の高騰は、昨年春に新型コロナ・ショックで世界各国の経済活動が大きく落ち込んだ後、日米欧などの主要国がかつてない規模の財政支出をし、またそれらの国々の中央銀行も大幅な金融緩和をしたため過剰流動性が世界にあふれており、投機的な動きが生じやすいことが背景にある。

これに加えて中国は、昨年より大規模なインフラ投資を行って主要国の中でいち早く経済を回復させており、鉄鉱石、銅鉱石などの資源輸入が急増する一方、供給面では、鉄鉱石は新型コロナの感染拡大のために世界第2位の生産国のブラジルや第4位のインドで生産が停滞したり、銅鉱石は近年大型の鉱山開発が行われていない中で、チリの大規模鉱山で労働者のストライキによって生産がストップする懸念が生じたりしたことから、需給のバランスが崩れて価格が急上昇した。

中国が市場介入に躍起のワケ

こうした資源価格の高騰は、鉄鉱石や銅鉱石などの世界最大の輸入国の中国にとって大きな脅威となっており、5月23日には国家発展改革委員会など政府機関5部門が大手金属メーカーの首脳を北京に呼んで、銅鉱石、鉄鉱石、鉄鋼、石炭について価格共謀、買い占め、虚偽の情報の流布などを行ったら厳罰に処すと申し渡した。

この中国政府の市場介入によって、鉄鉱石、銅鉱石などの投機的な価格高騰は一時収まったが、基本的に需要に対して供給が追い付いていないため、価格は1年前に比べると高値のままだ。

特に銅については、電気の良導体であるため送電線はもとより電気自動車、エアコンなど様々な用途に使われており、温室効果ガス対策を進めるために欠かせない資源となっている。

蛇口の盗難は、取り締まりが強化されれば少なくなるかもしれないが、銅に対する需要は、今後とも大きい状況が続く可能性が高い。

 

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