尖閣国有化10年、中川コージ氏「日本人の対中防衛意識に変化をもたらした」

中国側「国有化は国際法上の効力を持たない」
ライター
  • 日本政府が尖閣諸島を国有化してから、9月11日で10年
  • 中国のネット上では「釣魚島で日本の漁船を駆逐」との記事
  • 中川コージ氏は「日本人の対中防衛意識に変化をもたらした」

日本政府が尖閣諸島を国有化してから、9月11日で10年となる。当時、東京都知事だった石原慎太郎氏が、尖閣諸島を都が購入すると表明。その後、野田政権下の日本政府が地権者から買取りを決め、国有化された。

尖閣諸島の魚釣島(内閣官房サイトより)

尖閣諸島周辺での中国公船の領海侵入は常態化しており、日本国民から見れば、非常に忌々しい事態が続いていると言える。だが、尖閣問題に関して言えば中国国民もまた、日本に対して警戒心を高めている。

中国のネット上では国有化10年を前に「横暴! 中国の海警船が釣魚島12海里内で日本の漁船を駆逐」との記事が掲載された。釣魚島は、尖閣諸島の中国側呼称。2013年に組織された中国海警局は海洋警備や沿岸警備などを行なっている。

記事では、

日本は台湾問題でアメリカに追随するだけでは飽き足りないようだ。報道によると、8日午後、中国の海警船4隻が釣魚島12海里内を航行していた際、日本が”漁船”を派遣させた。これまで通り、中国の海警船が駆逐させると、”漁船”は腹を立てた様子で去っていった。

ロシアによるウクライナ侵攻以降、日中関係も緊張感が高まっている。

ペロシの台湾訪問以降、日本は台湾問題で中国をたびたび挑発している。国交正常化50周年が目前に近づくなか、日本は歴史と国際情勢を直視し理解できないのであれば、両国の関係は徹底的に破綻することもあり得る。

中国から見ると、日本は外交上はアメリカの衛星国家のような存在なのだろう。

日本が中国を挑発する根底には、アメリカがある。だが、ウクライナ衝突を見ても分かる通り、アメリカが地政学的な衝突を引き起こそうとする理由は、相手国の内部消耗を狙ってのことだ。日本も現実を直視しないと、最終的には同じ轍を踏むことになる。

中国は平和を望んでいるのだと強調し、こう結んだ。

釣魚島地区において、我々は日本とは平和で安定した関係を望んでおり、戦いなどしたくはない。だが、善意というのは相互に流れるものだ。中国の信頼を日本が無にするのであれば、国家の主権を守るため、一戦を交える決意と覚悟を惜しんではならない!

中国からは、あくまで日本が自国領土に”侵入“していると見えている。国有化については「国際法上の効力を持たない」との見解が中国では示されている。

一方、尖閣諸島についての日本政府の見解は、こちらにまとめられている。

9月8日には4隻の中国公船が尖閣諸島沖の領海に侵入し、こうした事態が状態化している。松野博一官房長官は9月9日の記者会見で、尖閣諸島について、以下のように述べた。

尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いがなく、現に我が国はこれを有効に支配をしています。したがって、尖閣諸島をめぐって解決すべき領有権の問題はそもそも存在しません。

平成24年9月以降、尖閣諸島周辺海域において、中国海警局に所属する船舶による領海侵入が相次ぎ、本年7月には領海侵入時間が過去最長となる事案が発生する等、情勢は依然として予断を許さない状況にあり、わが国としては極めて深刻に懸念をしています。

政府としては引き続き、冷静かつ毅然として対応するとともに、関係省庁間において緊密に連携しつつ、尖閣諸島周辺海空域における警戒監視活動等に万全を期していく考えであります。

中川コージ氏

中国問題に詳しい戦略科学者の中川コージ氏は、こう語る

あの時(尖閣の国有化)から中国の船舶が日本の領海に浸入することが常態化しました。目に見える形で中国と対峙しなくてはいけないという危機意識が高まったことは、安全保障政策に関わる政治家や政府の一員だけでなく、一般の日本人にとって大きな心理的な転換となったと言えるでしょう。

それでも、最近はこうした状況に慣れてきてしまっているようにも思います。これも10年という時間経過の影響です。中国側は常態化による日本人の心理的な慣れも見透かしているので、警戒が必要です。中国が仕掛ける心理戦に屈しないためには、中国船舶の不当な浸入常態化について一層の日本国内向け政府広報が必要だと思います

国有化の単純な是非は容易には判断できないという。

民主党政権時に国有化した以上、それをどうカードとして利用するかが外交というものです。第二次安倍政権は国有化によって冷え切った日中関係を改善させることで、マイナスからゼロに持っていっただけで外交面、内政面でも得点をあげました。結果的に安倍政権の間は、日中関係はお互い激しく競争しながらも、それなりに上手くいっていたと評価されます。

その意味では、万事塞翁が馬、という言葉がありますが、尖閣国有化問題から始まった日中凍結状態を融解させたからこそ、中国側も安倍外交に尊敬を払っていたわけです。外交は生モノです。国有化や船舶の浸入云々といった議論の次元を超えて、時の政権が、現況を素早く精緻に分析した多元外交を戦略的に展開できることを期待します。

尖閣問題をめぐる緊張は、今後も続きそうである。

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