「金融教育 国家戦略に」金融庁がついに提言、特に気になる「NISA拡充」4つのポイント
地道に資産形成しやすくなる好機に- 筆者が「ついに!」と驚いた。金融庁が国家戦略としての金融教育提言
- 提言の中でも、個人投資家の関心が特に高いNISAの拡充案4つのポイント
- 未成年時に口座を開設するメリット。筆者の体験談も交えて解説

こんにちは、ファイナンシャルプランナー/キャリアコンサルタントの八木陽子です。
8月末に、「金融教育 国家戦略に」(日本経済新聞)というニュースが流れました。金融庁は、8月末に2022年度の金融行政方針と同時に、2023年度の税制改正要望案を公表しました。岸田文雄内閣が目指す「資産所得倍増プラン」を受けて、金融リテラシー向上をめざす環境や制度を整える提案をまとめた文書になります。
ついに実現、中立的な金融教育
日本の金融教育は、まだまだ進んでいるとはいえません。今年の春、高等学校の学習指導要領に資産形成が組み入れられて話題となりましたが、実際に資産形成を行う社会人になった段階では、適切かつ系統だった金融教育が行われていないこともあり、様々な問題が起こっているといえます。
そのため、学生のみならず、すべての世代に、中立的な立場で金融教育を提供する制度を構築していこう内容になっています。今までは金融機関が中心で行われていた金融教育ですが、その場合は販売目的が強くなりがちなため、中立的な立場で、顧客の立場に立って行うことが望ましいとされています。
私自身、新聞記事で、「国家戦略」という言葉を聞きいて、実は驚きました。アメリカでは、リーマンショックなどの事件もあり、金融教育を、学校のみならず、社会人までひろげて、国家戦略として取り組んできていますが、日本でその言葉を聞くとは思わなかったので、思わず、「ついに!」とつぶやいてしまう出来事でした。
NISA制度拡充のポイント
さて、今回は、金融庁の提言の中でも、個人で投資をする人にとっては関心が高いと思われるNISAの拡充案についてお伝えしたいと思います。
以下、簡素で分かりやすい制度をめざした制度拡充のために4つのポイントに絞ってお伝えします。
- 制度の恒久化、非課税保有期間の無期限化
- 年間投資枠、非課税限度額の拡大
- つみたてNISAの対象年齢を未成年まで
- 「成長投資枠(仮称)」の新設

NISAですが、「どうして期間限定なのか」という質問はたびたび受けてきました。つい先日も、マネー相談の現場で、一般NISAの説明の中で、5年後のロールオーバーの制度を話すと、お客さんの顔が「?」マークになっていました。
ちなみに、ロールオーバーとは、5年間の非課税期間終了後に、非課税期間を延長するために、翌年の非課税枠に資産を移し替えるしくみです。そのまま保有する人から見たら、「なぜ、わざわざ移し替えなきゃいけないの?」ですよね。本当におっしゃるとおり「なぜ?」という状態なのです。
また、つみたてNISAのほうは、2042年まで、保有期間は20年と長いとはいえ、期間限定の制度になります。
そのため、つみたてNISAにしろ、一般NISAにしろ、制度の恒久化、非課税保有期間の無期限化をめざす提案が盛り込まれています。
次に、年間非課税枠の拡大です。つみたてNISAは年40万円で総額800万円、一般NISAは年120万円で総額600万円ですが、もっと増やすべきという声が以前からありました。ちなみに、NISAは、イギリスのISAという制度を参考に日本版として作られたものですが、ISAの年間非課税枠は2万ポンド(約320万円)です。改めてNISAで投資できる金額の小ささに気が付くでしょう。
未成年時の口座開設メリット

3番目は、未成年者にまで拡大するということ。ジュニアNISAが2024年に廃止されます。
ちなみに我が家では、現在大学生である息子には、小学生のときから投資信託の積立をしています。ジュニアNISAの制度ができてからは、ジュニアNISAでも本当に少額ですが積立をして、「長期・積立・分散」投資を教えてきました。ジュニアNISAを開設していると、20歳になった時点で一般NISAに切り替えることができます。
現在、息子に引き継いでしまって、私は管理していない口座になりますが、息子はなけなしのバイト料から一部積立を続けているようです。大学生でNISA口座の開設ができているなんて、将来どのぐらいの資産になるのだろう、もっと親に感謝してほしいと思ったりするぐらいです。
なぜなら、お金の講座や相談にいらしてくださっても、その後、NISAやiDeCoの口座を開設するだけで、時間がかかってしまう人も少なくありません。私の話を聞いて、「次は開設後に来ます」と張り切っていても、当然、日々は忙しく過ぎていきます。やろうと思って決意してから、数年たってしまった方もいました。
未成年のときに開設できれば、自分名義のNISA口座をそのまま成人になっても保有できます。時間のメリットは大きいでしょう。
そして4つめに、「成長投資枠」(仮)という提案もなされています。
現在のつみたてNISAは投資対象が一部の投資信託に限定されています。一定の条件のもとに、上場株式などへの投資を可能にしていくという内容になります。投資信託の積立に慣れたら、株式などに広げていきたいという方にはよいでしょう。
■
これらはまだ方向性を示した段階で必ず実現するかはまだ分かりません。しかし、少しずつ制度は使い勝手がよいほうには向かっているように思います。遅れているとはいえ、国の制度も少しずつ変化してきています。
そして、個人もこれから変わっていかなくてはいけません。貯蓄から投資へ。投資の基本ルールは、ゆっくりとお金を育てる「長期・積立・分散」です。貯蓄から、いきなり一攫千金など目指すのではなく、将来に向けて、「地道な投資」をスタートするときなのでしょう。
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