コロナ禍パリ見聞録:それでも人生を楽しむ人たち

規制緩和でテラスは満席
2021年06月10日 06:00
  • パリ在住の元OLブロガーが日本の報道で見えない現地のリアル見聞録
  • 大統領が「戦時下」と警鐘も、市民は楽天的な気質。外出制限当時も密
  • すでに満席なテラスも。バカンスに向け、街は浮き足立ちはじめている

(編集部より)欧米のコロナ対応といえば、ロックダウンのように、日本より厳しい私権制限が法制化されている印象が強い。ワクチン接種が進むイギリスは久しぶりにコロナによる死者がゼロの日も出始めているが、お隣のフランス・パリのコロナ生活はどんなものか?大手企業勤務時代にブログ「アラサーOLクソ日誌。」で軽妙かつ赤裸々な記事を綴った、島津藍美さんは結婚を機に退社し、ご主人の転勤に帯同して渡仏。日本の報道ではなかなか見えないコロナ禍のパリライフのリアルを語ります。

travnikovstudio/iStock

筆者は現在フランスのパリに居住している。約1年半前、初めての海外生活に胸躍らせたのも束の間、筆者が移住してからというもの、悲しいことにほぼコロナ禍の日々を過ごしている。ある意味貴重な体験ではあるので、本稿で現在のフランスの街の様相をお伝えしたいと思う。

「戦時下」のリアル

フランスでは1日あたりの新規陽性者数が、多い時で7万人を超えていた。そのような危機的状況下においても、個人主義かつ多民族国家のこの国では「自粛」は到底期待できず、この約1年と数ヶ月の間、断続的に複数の規制が実施されてきた。
具体的には、マスク着用の義務化(違反すると、現在は、日本円で約1万8000円相当の罰金=初回の場合)、外出時の証明書携帯義務、夜間外出の原則禁止、飲食店や他業種に及ぶ小売店の休業などである。カフェ文化盛んなフランスの、人々の大切な楽しみが奪われてしまったのだ。

日本と桁違いの感染者数や厳しい措置が報道されると、どんなに悲惨な雰囲気なのだろうと思う読者もいるかもしれないが、街の雰囲気はというと、意外にもそう暗いばかりでもない。

昨年3月、マクロン大統領がテレビ演説で「我々は戦時下にある」と語った初回の外出制限時は確かに緊張感が感じられたものの、それは長くは続かなかった。今年の3月に実施された3度目の外出制限時は、散歩と称して屋外に人が溢れ、公園はピクニックや日光浴する人で大混雑。桜も咲いていないのに、花見時期の代々木公園より密な公園を複数か所見かけた。
フランス人は基本的にラテン気質で、個人主義な国民性であるとよく聞くが、個人的にもそのような人が多いのではと思う。「楽しむこと」を優先するメンタリティを持ち、かつ他人の目を気にしない。それで政府は厳しくコントロールしようとするのだが、いくらルールを作っても、違反者を取り締る警察の体制が追いつかないので、規制が形骸化してしまっている。

密なカフェ、閉鎖店舗…街の様子

フランスはワクチンが普及しつつあるとの報道を見た日本に住む友人から、「フランスはコロナ禍を脱し、元通りになりつつあって羨ましい」と連絡をもらった。確かに直近3度目の外出制限が終わり、5月19日から飲食店・小売店・美術館等が、一定のルールを守りながら営業再開されたことで街に活気が戻ってきた。

原稿執筆時点の5月末時点では、飲食店は持ち帰りとテラス席のみ営業が許可されているが(6月9日より最大収容用人数の50%まで、1テーブルに6人までの着席においてのみ店内飲食が許可される)、路面のテラス席を公道まで拡張して席数を増やしてもなお、ぎっちぎちに満席になっている店をよく見かける。なかには席の間隔がほんの数センチという店も散見され、さらに時間帯によっては歩道を潰す勢いで順番待ちの行列が出来ているので、普段ベビーカーを引いている筆者としてはそのような道にあたると苦行である。

そしてにわかに活気が戻ったように見える街の所々に、閉店を余儀なくされた店舗が退去したあとの空き物件が目に入り、コロナ禍の生傷に心が痛むのだ。

筆者撮影:22時頃まで陽が高い春夏のフランス。テラス席でグラスを傾けるための執念は半端じゃない…

バカンスに向け、浮き足立つ街

先述の通り、ワクチン接種が普及しつつあるフランスだが、5月末日時点で、1日あたりの新規陽性者数は約1万人前後とされている。こちらでは抗原検査を街の薬局などで手軽に受けることが出来るので、もちろん検査数は相当多いのだが、依然として少なくない数字である。

しかし、このことを心配しているフランス人は最早かなり減ってきたように思う。何しろ彼らが人生を懸けていると言っても過言ではない夏のバカンスが間近に迫っているのである。人々の頭の中は、旅行の計画とバカンス前にワクチン接種を完了させることで一杯である。本当に状況が危うくなれば政府が再び規制するので、「動けるうちに動いておかなければ」というモチベーションだ。

「もしバカンスまでおじゃんになったら、きっと暴動が起きると思う」と周りの人々は冗談を言うが、仮にそうなったら冗談で済むはずがない。ちなみにこちらでは、コロナ禍においても数千〜10万人超えの規模のデモやストライキが様々な趣旨で度々実施されている。この国においてはそれ程、自分たちの権利や意見を主張することが当然のものとして根付いている。直近の5月19日には警察組合による国会前デモが実施され、数千人の警察官が集まったと報道されているが、そこには政治家も駆けつけており、非常に密な状態であった。

コロナ禍を過ごしてみて、実際にどのような状況にあるかということ以上に、国民性や気質こそが街の空気に色濃く出るのだなと感じた。フランス生活の浅いわたしからすると「おいおい、そういうとこやで…」と思うことも多々あるが、それが彼らの人生のバランスの取り方なのだろう。それはそれで勉強になるなと思いながら、少し遠巻きに街ゆく人を観察する日々である。

 

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