【スクープ】共同親権、法務省法制審委員の団体が、ロビイングで「政治介入」暴走か
自民議員「立法権の侵害も甚だしい」- 共同親権を議論している法務省法制審の委員の団体が猛烈ロビイングか
- 自民党法務部会が「法務省 vs. 民間」2つの案を審議する中での「暗闘」
- 大臣の諮問機関に過ぎない委員の「暴走」、「立法権の侵害」指摘も
G7で唯一、単独親権制度しか認めてこなかった日本で、国際的なルールに合わせた共同親権・共同養育を認めるべきか、大学教授や弁護士、市民団体などの当事者と、法務省、自民党の間での「思惑」が交錯。駆け引きが熾烈を極めている。
そうした中で、法務省の法制審議会の委員の1人が代表を務める市民団体が自民党議員などに対し頻繁に折衝をしていることが27日、SAKISIRU編集部の取材で明らかになった。
同法制審の委員は先ごろ、日本独自の共同親権制度を視野に入れる法制審の制度案に難色を示した自民党に「政治介入だ」と反発した裏で、ロビイングなどの政治工作を行なっていた疑いが浮上したことになり、自民党議員や、民間側から国際基準の制度を提案している人たちの間で物議を醸している。

「法務省 vs. 民間」暗闘加速
親権制度の見直しを巡っては、法務省の法制審議会が提出した制度案は、共同親権を形式的に認めるものの、監護権は事実上片親のみにしか認めておらず、いわば「ガラパゴス型」の設計となっている。
これに対し、国際基準の「フルスペック型」の共同親権制度を求める人たちは、弁護士・大学教授などがつくる民間の法制審議会から独自の制度案を提起し、法務省側が推す「ガラパゴス型」の制度案に対抗する手段に打って出てきた。
これにより、自民党法務部会には今夏「法務省 vs. 民間」2つの試案が俎上にのぼるという異例の展開をたどった。
さらに本サイト既報どおり、同部会で8月27日、法務省の法制審議会の中間試案の内容に納得せず、決定を先送りするという「異例中の異例」の事態に発展した。すると、今度は法務省法制審議会が猛反発し、自分たちの中間試案の取りまとめを延期した。
共同通信によると、自民党が先送りした2日後の会合で、「日本学術会議への介入のようだ」「政党の圧力で変えると禍根を残す」などの声があがったという。共同は、専門家18人のうち少なくとも12人が異議を表明した、と報じている。事情に詳しい霞が関の関係者の1人は「法務省は自民党にメンツを潰されたことで、法案作りのボイコットも視野に入れている」と指摘する。
委員の団体が自民党にロビイング
そして今回、自民党議員に対しロビイング攻勢をしている疑いが浮上したのが、法務省法制審議会の委員の1人が代表を務める団体だ。離婚後の親子の面会交流の制度化を訴えてきたが、編集部では今回、同団体が議員らに働きかけている際に使っている資料を入手した。そこでは、
「自⺠党法務部会の意向により法制審議会の取りまとめが延期になった」との報道がなされました。早速、従来から共同親権に懸念意見を持っていたみなさんから「政治介入」と批判がなされています。共同親権検討が政争の道具とされることを懸念してます。
などと述べている。これは、自民党や法務省がそれぞれ強硬な態度になることで共同親権導入に向けた動きがとまることを憂慮してのことのようだ。
その上でこの団体は資料で、自民党議員に対し「私たちが恐れる最悪のシナリオ」と題し、「①法制審議会の了承得られず法改正なし」②「自⺠党の了承得られず法改正なし」という2つのパターンを提示している。

さらに、「中間試案見送りを受けて自民党国会議員向けの陳情開始」と題した別紙では、働きかけの対象について、野党議員を除く自民党議員を集中的にあたることを明記。その狙いについても
- 自民党内で共同親権、共同監護に対しての各議員の理解度の向上
- 関係各所に照会が入ることにより法案に期待している当事者が多数いることを認識してもらう
- 保守派の真意を理解する
などと記載している。同団体は10月1日、主催の講演会に「共同養育支援議員連盟」の幹部を務める自民党議員が参加することが予定されており、そこまでに活動することを関係者に呼びかけている模様だ。
なおこの議員らは本サイトで以前掲載した、法務省の顔色を伺っていることに安倍元首相が生前、釘をさしたA議員らだ。
自民議員「立法権の侵害」反発
議員への接触目的について資料上は、紛糾する制度案の法案化に向けての動きがどうなるのか情報収集を主目的に挙げている。
団体代表の男性は取材に対しても「陳情はしていない」とロビイング目的での接触は否定。フルスペックでの共同親権推進派から「法務省寄りに傾いている」と見られていることについても「法務省案が別に良いも悪いも評価しようがない」とのスタンスであると強調した。
しかし、この資料を提示された、議員の中には「法制審の委員は、いつから立法者になったのか?」「立法権の侵害も甚だしい。法務大臣は、この委員を外すべきではないか」とむしろ反発する声が水面下で広がっている。

議員らが不快感を示すのは、この団体の陳情の動きを含め、法制審の関係者らによる最近の言動が、明らかな「越権行為」と受け取られているからだ。
そもそもの法制審の役割は、法務省の組織令が「法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議すること」と規定するように、あくまで大臣が政策づくりをする上で必要な範囲内で、専門的な知見を求める公的な「アドバイザー」としての位置づけに過ぎない。
そうなると、先述した共同通信の記事にあるように、法制審の有識者らが自民党への不快感を主観的に抱いたとしても公的な会合の場で「政治介入」などと不規則発言をしたり、政治介入を批判する裏で逆に政治介入をしていると受け取られかねないロビイング行為をしたりするのは、極めて異常な事態と言える。
法務省とは別の省の関係者は、「民主的プロセスを経ず、大臣に任命されただけの審議会の委員には、何らの立法権限はないわけで、『我々専門家の意見に従え』『我々が法改正の審議をしているのだから介入するな』と言わんばかりの言動は、職務から逸脱していると指摘されても仕方がない。法務省の監督が甘いのではないか」と疑問視する。
民間案の作成に協力した上野晃弁護士は、今回の団体の動きについて、「代表の男性が委員を務めている法務省法制審で、自民党に対して『政治介入をするな』との声があがったにもかかわらず、自分たちが政治活動してるというのは明らかに矛盾だ」と指摘した上で、「働きかけが事実であれば、法制審の政治的な中立性を内部から害する行為ではないのか」と苦言を呈する。

こうした疑問や苦言に対し、法務省はどう受け止めているのか。法務省の法制審議会家族部会を所管する民事局の担当者は26、27日の連日に渡り、SAKISIRUの取材に応じた。委員の1人が代表を務める団体がロビイングをかけていることについては「家族法制部会以外でのどのような活動されているかについてはわからず、コメントできない」と回答を避けた。
さらに、共同通信で報じられたように、法制審の有識者が「学術会議のようだ」「禍根を残す」という政治的に露骨な発言をするなど、政治的な中立性に懸念が生じていることについて見解を尋ねると、担当者は「委員はそれぞれの見識に基づいて発言いただいてるという理解だ」と不問に処する構えだ。
団体代表の男性も取材に対し「陳情したとしても、法務省の担当者が『法制審の委員になったら、自分たちの意思を発信することができない』と言ったのか?」と逆質問。議員への接触を問題視されることに納得がいかないようだった。
安倍氏の国葬が終わり、秋が深まる永田町・霞が関で共同親権を巡る水面下の「暗闘」はさらに苛烈を極めそうだ。
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