「若い世代ほど中国に親近感」朝日新聞の記事にツッコミ殺到

中国通「本質的に怖い国、変わらない」
ライター/SAKISIRU編集部
  • 「若い世代ほど中国に親近感」内閣府調査を報じた朝日新聞の記事が話題
  • ネットは「自分の感覚と合致する」との声の一方で「データが信じられない」
  • 中国ウォッチングサイト「黒色中国」のツイッターの指摘は…

朝日新聞デジタルが9月28日に配信した記事が先週末、ネット上で大きな話題を呼んだ。同サイトが配信したのは、『若い世代ほど中国へ親近感 急激な経済成長、「怖い国」から変化』というタイトルの記事だ。

記事では、「内閣府の外交に関する世論調査からは、あるデータが浮かび上がる」とし、若い世代ほど中国への親近感が高いと指摘したが、ネットでは違和感を抱いた人が続出したようだ。

FangXiaNuo /iStock

「このデータは信じられない」

朝日新聞が引用した内閣府の世論調査によれば、中国に「親しみを感じる」と回答した人の比率は、70歳以上で13.2%、60代で13.4%だった。若い世代になればなるほど、この比率は高まっていき、40代は24.6%、30代は25.7%、18~29歳は41.6%だった。この結果を朝日新聞は、『若い世代ほど中国へ親近感 急激な経済成長、「怖い国」から変化』というタイトルの記事として配信した。

この記事について、「これは私も感じるな」「やっぱり自分の感覚と合致する」といった反応があった一方で、「このデータは信じられない」「教育の問題。中国は怖い国。そう教えるべき」といった反応も少なくなかった。

実際に中国に詳しい人はこの記事をどう見たのか。中国ウォッチャーとして知られるWebサイト「黒色中国」のツイッターアカウント(フォロワー8.5万人)は、朝日新聞の記事のもとになった調査について、次のように指摘していた。

こちらは、「中国に親しみを感じるか」、「日本と中国との関係は全体として良好だと思うか」という非常に単純な設問であって、これらの質問をどのように受け止めるかは、人それぞれであろう。

そのうえで、実際の中国がどんな国なのかを正しく伝えるのが本来のメディアの仕事だと警鐘を鳴らしていた。

朝日新聞の記事、「若い世代ほど中国へ親近感 急激な経済成長、「怖い国」から変化」は、「群盲象を評す」を逆手に取った手法で作られたものであり、若い世代に天安門事件や少数民族弾圧、領土問題など、「実際の中国がどんな国なのか」を正しく伝えるのが、本来のメディアの仕事ではなかろうか。

メディアの“本来の役割”指摘も

「黒色中国」のツイッターアカウントはさらに、リスペクトできる面もある一方、本質的に怖い国なのは変わらないとし、そうした側面を国民に正しく伝えるのがメディアの役割だと続けた。

現在の中国が優れた製品や楽しいコンテンツを作っているのは否定しない。リスペクトできる面もたくさんある。ただ、中国独特の政治体制により、本質的に「怖い国」なのは変わらない。それを理由に差別や排外主義に陥らず、隣国を正しく理解し、理性的に対応できる世論を作るのがメディアの役割だろう

また、この記事を受けて、SNSなどでは「この記事が中国に利用されそう」と危惧する人も少なくなかった。

早速、記事が配信された翌日に、中国駐大阪総領事の薛剣氏は、次のようにツイートしていた。記事内でコメントした東京大学大学院アジア情報社会コースの園田茂人教授のコメントを引用した形だ。

「年齢が高い世代は冷戦体制下を生き、西側と東側、市場経済と計画経済といった二分法や対立を記憶し、(中国について)天安門事件では感情を高ぶらせたことも覚えているため、それを修正することは難しい。」

若い世代にとっての中国はすでに発展をしていて、その中に市場経済もある存在だった。市場経済の中で、ITによるコミュニケーションやゲームなど媒介物を利用する彼らにとって、そこでモノが動いている限り、政治についてそんなに目くじらを立てるようなものなのかと見えるのではないか。

中国駐大阪総領事のツイッター発信を見ていると、いわゆる「世論戦」で自らを有利な形勢にしていこうという思惑があるのだろうか。前出の「黒色中国」氏の指摘どおり、日本国内のメディアがそうした実情を目配りして報道することがますます重要になっている。

 

 
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