「消費税減税包囲網」菅政権も乗っかるべきだ

都議選と衆院選「大逆転」勝利の秘策
国際政治アナリスト、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員
  • 衆院選や都議選が近づく中、立民以外の野党各党が消費税減税を公約化
  • 都議選は小池都知事のマジック次第で、自民は惨敗のシナリオも再び
  • 減税に消極的な立民は油断。衆院選直前に自民が減税を打ち出せば大勝利

消費税減税争点化の動きが本格化

衆議院議員選挙の焦点として、野党は消費税減税に焦点を絞りつつある。もちろん、その内容は同床異夢ではあるものの、このまま行くと消費税増税維持派は「自公」「立民」の執行部のみという状況となりつつある。野党側が狙いを定めることで、メディアが「消費税減税の是非」を争点化すれば、当然その次の焦点は自民党政権に出方になる。

DNY59/iStock

直近の永田町では、記者会見などで下記の発言が出る状況となっている。

  • 維新の会は日本大改革プラン公表、首相官邸に消費税5%提言書提出
  • 国民民主党の玉木代表は消費税減税を野党全体の共通政策とするように主張
  • れいわ新撰組山本太郎代表・立憲民主党馬淵元国土交通大臣の研究会が消費税減税の提言書をとりまとめ
  • 共産党の志位和夫委員長も消費税5%及び将来的に廃止を主張

(以上参考:朝日新聞デジタル「野党内で高まる消費減税論 れいわや立憲など超党派の研究会も」)

消費税減税を選挙争点とさせない防波堤として野党側の最後のハードルは立憲民主党の枝野氏のみと言っても良い状況だ。

更に衆議院議員選挙を占う都議会議員選挙においては、現職都議会会派からも

  • 都議会自民党「個人都民税を20%」「事業所税を50%」減税を主張(参照:共同通信
  • 東京みらい「自動車税・法人税減税」を主張(参照:東京みらい提言書

など、公約に減税を謳う動きが出始めている。東京都は財政調整基金をほぼ使い切ったものの、都有資産売却や公営企業会計などを活用すれば減税の財源確保は十分に可能だ。

都議会自民党の公約を減税政策に突き動かしたのは都内での菅内閣の支持率の低さだろう。

菅内閣「都民支持率」ナント16%…都議選控え自民党真っ青(日刊ゲンダイ)

東京新聞・東京MXテレビ・JX通信社が、今月22、23日に合同で行った「都民意識調査」では、菅内閣の支持率は16%という驚異的な低さとなった。東京都民は政府及び東京都のほぼ根拠が喪失した緊急事態宣言の継続にウンザリしているため、この数字は然もありなんといったところだろう。他の世論調査などでは都議選で堅い基盤を持つ自民支持は根強いものの、小池都知事のマジック次第では、自民は再び大惨敗のシナリオもあり得る。

「政治的劣勢から逆転しようとする勢力」は「減税政策」を採用するものだ。国民は減税を望んでおり、政治家は選挙上の正解を本能的に理解している。

菅政権「消費税減税」で大勝も…

現在、政治的必死さに最も欠ける勢力は「立憲民主党」だ。菅政権の支持率が思わしくない中、政権交代は毛頭する気が無くとも、そのまま黙っていれば議席を伸ばして勝利宣言できる。そのため、枝野氏は消費税減税には及び腰であるというのは分からないでもない。むしろ、減税政策を掲げて罷り間違って政権を取ることがあってはならない、と思っているのかと疑うほどの態度だ。

5月25日の経済財政諮問会議に出席した菅首相(官邸サイト)

したがって、菅政権が衆議院選挙で本気で勝利したいなら「消費税減税」を直前に打ち出すだけで良い。完全に油断しきっている野党第一党の立憲民主党に増税容認のレッテルを貼れば、菅政権は激戦小選挙区で勝利し、比例票も相対的に増加することになるだろう。

実際、オリンピック開催の可否がどうなるかは微妙であるが、同イベントの開催・中止によって支持率が大幅に上昇するとは思えない。そのため、菅政権が当てにしているだろうオリンピックによる支持率改善が不発に終わった場合、衆議院議員選挙の勝利に向けた選択肢は消費税減税という争点を野党から奪うことだけになる。(しかも、立民は増税維持のままなので、自公は立民を容易に粉砕できる。)

既に昨年のコロナ対策の巨額の補正予算、そして更なる予算増見通しなどによって、PB黒字化の目標年度は事実上画に描いた餅となっている。今、更に消費税減税を断行したところで、その後の財政運営の結果はほぼ変わることはないだろう。むしろ、減税後の税率再引き上げの政治的困難さを考えると、歳出側の行政改革が徹底的に行われる副次的効果も狙っていくべきだ。

菅政権には野党が争点化しようとしている「消費税減税の争点に乗っかること」は選挙的にクレーバーな行動だと言える。そして、それは多くの国民が望んでいることだ。菅首相に消費税減税による大逆転という決断を期待する。

 
国際政治アナリスト、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員

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