どうなる?日本の税制 〜 エルサルバドル、ビットコイン法定通貨化影響は

藤巻氏注目、税制の権威が「新説」
2021年06月10日 06:01
ジャーナリスト/SAKISIRU副編集長
  • エルサルバドルで9日法廷通貨化の法案が成立。日本の法制度や税制への影響は?
  • 現行法の前提が変更?「ビットコインはもはや暗号資産とはいえない」のか
  • 雑所得扱いで高税率は不変か。しかし藤巻氏注目の税制の権威による新説が…

中米エルサルバトルの議会は9日、ビットコインの法定通貨法案を可決した。「世界初」となる大胆な案にもかかわらず賛成票は84票中62票と、圧倒的支持を受けて成立した。法律は90日経過後に有効になるという。一院制をとっていることもあり、発表から議会での採決に至るまであっという間の速さだった。

(前日記事「エルサルバドル:ビットコインの法定通貨化は「楽市・楽座」の再現?」はこちら

今後は、エルサルバトルでは、ビットコイン(BTC)単位で価格表示するという。納税もビットコインで行うことができる。また、ビットコインそのものが通貨となるため、その取引自体は、譲渡所得課税の対象外で税金はかからない。

ビットコインが外国の法定通貨となることが決まった今、日本の仮想通貨界隈においても早速、日本での法制上、どういう扱いになっていくのかに関しても注目が集まっている。

ビットコインが使えるエルサルバドルのビーチ近くのレストラン(写真:ロイター/アフロ)

日本の法の抜け穴に?

ブケレ大統領がビットコインの法定通貨化を発表した6日、国内仮想通貨交換業大手のビットフライヤー創設者である加納裕三氏のツイートが注目を集めた。

ついに弁護士が恐れていたことが実現するかもしれません。ビットコインを法定通貨とする国が登場すると、外為法の外国通貨に該当する可能性が発生します。そうなると、様々な法律の抜け穴が出来てしまう。また暗号資産の定義にも矛盾が生じてしまう。

日本のみならず、世界で暗号資産、そしてこの新しい法定通貨の定義を巡って議論が巻き起こる可能性を示唆した。

現在、暗号資産について定めた日本の法律では「外国通貨並びに通貨建て資産を除く」と定義しているが、外為法における外国通貨の定義はゆるい。「外国通貨とは本邦通貨以外の通貨をいう」としている。この日本の現行法だけをまま解釈すると、ビットコインが正式にエルサルバトルの法定通貨になることで「ビットコインはもはや暗号資産とはいえず、外国通貨」だということになる。

税制上の扱いは変わるか

一般の投資家の間ではおもに税制上の扱いが変わっていくのではないかということが関心の的となっている。ビットコインが、仮に日本政府で暗号資産から、法定通貨と昇格した場合に、現在の税制上の定義は変わるのだろうか?

日本においては仮想通貨の購入は、税制が最大のネックだと言われてきた。海外とくらべても、日本の仮想通貨税制は「極めて高い」(海外メディア)と言われている。

日本の法制上で、仮想通貨は現在ビットコインも含めて雑所得扱いとなっていたからだ。最高税率は50%。所得によっては仮想通貨売却で利益があれば、税率が非常に高くなる場合があるのだ。さらに確定申告時には、購入時と売却時の差額を自ら記録を照会しながら計算しなければならない。「今の日本の税制では、仮想通貨の売買など到底できない」と敬遠する声も現状では大きいのだ。

Overearth/iStock

株やFXの場合は20%の課税が取引ベースでなされ、非常にシンプルだ。FXなども実は登場した当初は雑所得扱いだったが、登場から数年で株と同じ扱いになった経緯もあるため、いつか同様に仮想通貨も株やFXと同様の20%になるのではないかと期待はされているものの、政治の世界で議論が進んでいる様子は一向にみられないのだ。

この仮想通貨の税制改正の問題について参議院議員時代に、唯一積極的に問題提起してきたエコノミストの藤巻健史氏に聞いてみた。藤巻氏は「ビットコインが外国の法定通貨に昇格しただけでは、日本での税制上の扱いが大きく変わることはないでしょう」とみている。

実際のところ、ビットコインが外国の法定通貨扱いになったとしても、その利益は為替差益に扱いなります。だから申告上、今までと変わらない雑所得扱いなのです。結局のところ、法定通貨になるだけでは現状は何も変わらないのです」という。

ビットコインが、他の暗号資産と一線を画して、外国の法定通貨という地位を獲得しても、それ自体によって、税制上の扱いが大きく変わることはないようだ。

仮想通貨は、現状で既存のどの所得にも当てはまらない雑所得とされているが、藤巻氏はかねてから仮想通貨税制に関して「まずは雑所得ではなく、譲渡所得に分類すべきではないか」と参議院財政金融委員会などを通して提言。それでも当時は「国税当局としては暗号資産の譲渡による所得は、一般的に譲渡所得に該当せず、雑所得に該当する」との回答だった。

国税庁が一目置く?新説とは

しかし、藤巻氏によると、こうした日本における税制上の解釈について、アカデミズムの世界でポジティブな動きがあるという。

金子宏・名誉教授(東大サイトより)

「日本の税制の権威である東京大学名誉教授の金子宏先生です。先生の書いた『租税法』は日本における税制の解釈に、多いなる影響を与える存在です。日本の官僚もみな、先生の本をもとに税制の勉強をしてきたのです。その『租税法総則』23版が、2019年に刊行された際に「通貨も、暗号資産も“譲渡所得”として考えられるのではないか」と指摘されているのです。税制の大家である金子先生の指摘を、日本の国税庁が無視することは出来ないのではないでしょうか」

アメリカでは、仮想通貨の所得は資産とみなされ、株同様の扱いがされるが0%~20%の税率しかかからない。スイスでは、個人投資家による取引では、譲渡所得税がかからない。

ドイツでも1年以上保有していれば、譲渡所得税を免除されるという。

もし近い将来、ビットコインや仮想通貨が、譲渡所得とみなされれば、株やFXと同じように20%の税率になる道筋も見えてくる。そうなれば、海外と同様に、今よりもっと身近な金融商品としての地位を獲得する可能性もあるのだ。

ビットコインが外国の法定通貨になることで、世界における位置づけや地位が変わるのはたしかなことで、日本においても今後、この新しい通貨と、その法的な解釈を巡って様々な議論が巻き起こることだけは間違いなさそうだ

 

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