子供・妊婦にもワクチン接種は必要?コロナ出口戦略を論じるとき
自粛不信の国民に「先の景色」を見せるべき- 菅首相がワクチン接種完了見通しを表明。「そろそろ出口戦略の議論を」と筆者
- ワクチン先行国の感染防止対策「解除」をみると接種完了者50%程度が転換点
- 若年層は重症化率の低さや世代別人口の少なさなどから、ある程度は自主性に
新型コロナウィルスのパンデミックから1年が経過。全世界でワクチン接種が進み、日常生活を元に戻そうという動きが急速に広まっています。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2回のワクチン接種を完了した場合、マスクもソーシャルディスタンスもPCR検査も不要(ただし公共交通機関利用時のマスク着用は必要)という見解を発表。つまり完全にもとの生活に戻ることができ、テキサス州では今後もマスク着用を求める政府機関には罰則を課すという強い方針を取っています。
ワクチン接種率トップを走るイスラエルでは4月からは屋外マスク不要、そして6月より屋内も含め全面的にマスク不要の方針を打ち出しました(参照:時事通信)。
一方国内においては自粛疲れが極まり、感染防止対策協力金の施設基準と支払時期双方が不透明なため、ワクチン接種率が10%未満であるのになし崩し的な自粛解除の動きも。
この動きが広まる前にと、菅首相が9日の党首討論で10〜11月頃でのワクチン接種完了の見通しを発表しました。それにむけてさらなるワクチン接種体制の拡大を進めるとともに、そろそろコロナ問題の出口戦略について議論を始めるときではないでしょうか。
(関連)緊急事態宣言“My解除”、新橋の居酒屋店主「こうなったら大いに酒を出すべき」 – SAKISIRU(サキシル)
(関連)尾身会長は行動規制に効果がないことをわかっている ― アゴラ (2021年6月7日)
日本の「解除」条件は?
それでは日本国内において感染防止策解除をするにはどのような条件が必要でしょうか。
感染防止策の段階的解除を開始した他国をみると、ワクチン接種完了者50%程度が転換点。それを目指すためのワクチン接種体制の目安として、1日での接種回数は人口に対しイギリスで0.75%、ドイツで0.82%となっています。アメリカやイスラエルはサチレーションが見られますが、接種回数ピーク時の増加率は近似していたと推察されます。
一方で日本の1日での接種回数は人口に対し0.47%と、他国の2/3程度で伸び悩んでいます。このペースで行くと、ワクチン接種完了50%を達成するのは2022年1月、70%達成は2022年4月あたりになるでしょうか。政府発表においては初回接種を論点としており、これよりも低い水準をゴールと見定めているようです。
ワクチン接種体制は5月末に大幅に拡大しましたが、この直近1週間での接種回数はほぼ一定。医師以外によるワクチン接種の議論は(参照:読売新聞)、医師会の全面協力の背中を押した形になりますが、今後早期に感染防止策解除を目指すならばもう一歩踏み込むやるべきかと思います。
ファイザーの見解によれば新型コロナワクチンも従来のインフルエンザワクチンと同様毎年接種が必要ということなので(参照:時事通信)、1日での接種回数が十分かどうかは議論の余地があります。
また全ての高齢者がワクチン接種を希望するわけではない中、余剰枠にて15歳以上へのワクチン接種を開始する自治体も既にでてきました。
若者や妊婦はどうする?
コロナワクチンは理論上12才以上の学生や若い女性が接種しても問題ないとされており、不妊や流産に繋がるというのも事実確認されていない流言にすぎません。ワクチン接種した700人以上の妊婦を対象とした疫学調査では、妊娠出産に関する有害事象は非接種者と同様の発生率を示していることがわかりました。
さらに妊婦はCOVID-19に感染した場合重症化しやすく、それが原因で早産などの有害事象を起こしやすくなるといった、ワクチン接種しないために抱えるリスクがあります。現時点では妊娠前もしくは妊娠12週以降にワクチン接種をすることが推奨されています(参照:厚生労働省サイト)。
ただし製薬から1年も経過していないため、年単位での長期臨床データの欠如は事実。理論上問題なくとも薬害が起こりうることは認めなくてはなりません。
以上を踏まえて、それでもワクチン接種にリスクを感じる若年者は無理に接種しなくて良いのではないでしょうか。
1年近く積みあがった国内データにおいて、子供あるいは出産適齢期にあたる40才未満で新型コロナウィルスによる重症者・死亡者はごくわずか(参照:厚生労働省)。
確かに若年者はPCR陽性者が多く感染伝播の関与は疑われますが、今後重症化・死亡リスクの高いハイリスク者はワクチンで守られるということを考えると、若年者はある程度は自主性に任せて良さそうです。
日本全体から見て40才未満の人口は37%。仮に若年世代で慎重な対応を行ったとしても、ワクチン接種完了者50%は十分達成できます。
特に重症化リスクが極めて小さく、ワクチン接種ができない小学生、あるいは本来15歳以上と定められていたワクチン接種年限を12才以上と拡大適応した中学生に関しては、ワクチン接種に関わらず元通りの学校生活を社会的に認めていくことも検討が必要です。
今後のワクチン政策
私の診療所に来る子供たちも指示があるまで絶対にマスクを外さないなど、感染防止策の強い管理下に置かれ続けているように感じます。このままで良いとは思いません。
(参考)学校での集団接種に慎重 小中学生、保護者の同意を―萩生田文科相 ― 時事通信 (2021年6月8日)
ではワクチン政策の今後はどうでしょうか。毎年接種が必要になったとして、その全てを公費負担するのが国家財政的に果たして現実的でしょうか。
この観点から見てもワクチン接種は高齢者などハイリスク者を中心とし、他は自由接種としていくなど、科学的根拠に応じた選択と集中が必要です。
短期的には早期にワクチン接種完了者50%達成を目指していき、その後はどのような形で感染防止策を解除していくか。自粛疲れを通り越し、自粛不信になりつつある国民にゴールポストの向こう側の景色を見せる必要があります。
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