W杯の人権問題に無関心な日本、人的資本KPIで見た時のヤバさとは
連載『日本経済をターンアラウンドする!経済再生の処方箋』#13- FIFA会長の発言やドイツ代表の抗議…W杯の人権騒動
- 日本は無関心だが、日本国内の人権状況を示すヤバいデータ
- 人的資本の可視化が問いかける日本企業の留意すべき事項とは
株式会社ターンアラウンド研究所
西村健(代表取締役社長)
「欧州は今後3000年謝り続けるべき」。
ベスト8に突入したサッカーワールドカップ・カタール大会ですが、大会前、国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長の発言が国際的に波紋を呼びました。
日本は無関心の人権問題
この意味するところは、「欧州の人間だが、欧州の人間は道徳的な教えを説く前に、3000年にわたりやってきたことについて今後3000年謝り続けるべき」という発言です。
日本は全くと言っていいほどメディアでも騒がれず、関心もないようですが、カタールでの外国人労働者や性的少数者の人権問題がクローズアップあれ、欧州ではサッカーのフィールドにまで影響しているほどです。
ドイツ代表は、同性愛者への賛意を示した虹色のキャプテンマーク「One Love」の腕章を着用予定だったのですが、断念。その代わりに抗議の意味を込めて口を覆うポーズでアピールをしました。ドイツ代表は日本戦の直前にチームで1時間議論をし、GKのノイアー派閥とDFのリュデガー・MFのギュンドアンの派閥で熱く激論したとも言われています。
サッカーに集中できなかったのか、試合に影響してしまいました(日本の勝利)が、それにしても真剣さは称賛に価すると思います。
W杯「人権」に揺れた経緯
カタールでは、スタジアム建設や地下鉄などのインフラ整備において、インドやパキスタン、ネパールからの移民労働者が多数死亡しました。インド、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、スリランカからの労働者が2010年から2020年の間に6500人以上が死亡したと言われます。しかもフィリピンやアフリカからの移民はこれにはカウントされず、まだまだ膨大な数の人たちが犠牲になったと見られているのです。
とても熱い・暑い中、建設現場で仕事した結果とも言われていますし、労災認定やそもそもの契約に関する労働法制が整っていなく、酷使されたと状況だとされています。LGBTQ+の「人権」についても問題があります。
これに対して、オーストラリア代表は選手がVTRにて批判。デンマーク代表は第3ユニフォームまで用意(普通はホーム・アウェイの2着)。製作したメーカーのヒュンメルはロゴラインを見えにくくし、人権問題に対する抗議や人権についての議論を生み出そうとまでしたようです。
一方、カタール当局は、こうした問題は徐々に改善していると主張しています。
欧州の言い分もわかります。それが普遍的な価値観ですから。そして、カタールの言い分もわかります。人権は「カタール人」にしか認められていないという民主主義的な価値観で言えば未成熟な社会だからです。欧米の民主社会のように、民主主義的価値観も人権意識も受け入れているとは言えません。イスラム教と言う宗教や文化があり、固有の歴史がカタールにはあります。
国際性・普遍性 VS 地域性・特殊性、この衝突。
それは国内だけでなく、国際社会を覆っています。日本ではどうでしょうか。
日本の人権状況は、過去1年間(会計年度)の児童相談所における児童虐待相談の対応件数は205,044、10万人当たりの人身取引の犠牲者の数が38、10万人当たりの人身取引の犠牲者の数(労働搾取)が6となっています(外務省データ)。
このデータの意味はここでは論じませんが、内閣府の調査で、自分の人権が侵害されたと思ったことがあるか聞いたところ、「ある」と答えた者の割合が15.9%、「ない」と答えた者の割合が84.1%であることは理解した方がいいと思います。
人的資本可視化における人権
日本サッカー協会や代表メンバーのように、ビジネスパーソンは静観しているわけにもいかないところです。指針としているSDGsの本質でもあり、人権や人間の尊厳はグローバル社会のルールであるからです。
今回の人的資本可視化では以下のような開示事項が必要になってくる。
人権面で大事なのは、
- 人権レビュー等の対象となった事業(所)の総数・割合
- 深刻な人権問題の件数
- 差別事例の件数・対応措置
- 児童労働・強制労働に関する説明
と言った項目です。
特に自社での人権もですが、サプライチェーンでの人権への配慮もモニターし、説明責任が求められます。
上記のようなサプライチェーンにおける人権侵害を防止しないといけない、そのために関係しているサプライヤーの状況を把握する必要があるというロジックです。
グローバル企業はこうしたことが求められることは意識した方がいいでしょう。世界的スポーツイベントのスポンサーをしたい場合は特に。
関連記事
編集部おすすめ
ランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
- 猫組長氏「ボンクラ岸田は鳩山以来の逸材」、第2の「ルーピー」説強まる
- そもそも「夢」に過ぎなかった“大阪ディズニーリゾート”公約、投資に「アテ」はあったのか?
- 「子どもの連れ去りは未成年者略取罪」 警察庁が明言、共同養育支援議連で
- ミツカン訴訟で元婿無念の一審敗訴、報道は“東スポだけ”大スポンサーの隠然たる存在感
- 創刊SP対談 松田公太さん #2 政治と報道をダメにするのは何?
- トヨタ「エース社員」退社続出は、“改革者”の豊田社長についていけないからなのか?
- 財産隠し、子ども連れ去り「指南」…世田谷区の女性向け離婚講座に非難の嵐
- 株の暴落はいつ起こる?過去のデータを振り返れば99%予測できる
- 東京都内のタクシー料金が15年ぶりに値上げへ、値上げラッシュの背景に原油高
- 柴山昌彦氏「私が単独親権の回し者?とんでもない」
- 福原愛さん代理人弁護士の声明文に、紀藤弁護士「意味不明な見解」
- ビットコインの生みの親、サトシ・ナカモトの正体がついに判明 !?
- 東京23区の格差がネットで話題、1位の港区と23位の区の差は半世紀で倍に拡大
- 「共同親権」報道訴訟、SAKISIRU・西牟田氏が一審勝訴
- 後藤田正純氏まさかの落選で、妻・水野真紀さん「意味深」ブログ
- ロイター恒例のメディア信頼度調査で、朝日新聞もテレ朝も“惨たん”たる結果
- ミツカン訴訟で元婿無念の一審敗訴、報道は“東スポだけ”大スポンサーの隠然たる存在感
- 財産隠し、子ども連れ去り「指南」…世田谷区の女性向け離婚講座に非難の嵐
- 「毎日新聞としておわび」記者のSNS炎上、問題の投稿を削除・謝罪
- 「トヨタがEV巻き返しに動いた」祭りは、豊田社長に飛んできた大きなブーメラン
- 毎日新聞記者のSNS炎上を巡る同社への質問状公開
- 「毎日新聞としておわび」記者のSNS炎上、問題の投稿を削除・謝罪
- 「共同親権」報道訴訟、SAKISIRU・西牟田氏が一審勝訴
- ビットコインの生みの親、サトシ・ナカモトの正体がついに判明 !?
- 【特報】岸田首相、また災難…自民・石橋議員の顧問が経産省警告「詐欺事案」で訴訟ざた
- 福原愛さん代理人弁護士の声明文に、紀藤弁護士「意味不明な見解」
- ミツカン訴訟で元婿無念の一審敗訴、報道は“東スポだけ”大スポンサーの隠然たる存在感
- ついに国会で「電柱検査」詐欺疑惑が問題化、野党側が自民・石橋氏に政務官辞任迫る
- 小学校に寄付をしたら確定申告を:寄附金控除のしくみ
- 北村晴男弁護士「共同親権、裁判所が利権失うのが怖い」
特集アーカイブ
人気コメント記事ランキング
- 週間
- 月間