三たび緊急事態宣言!増加する変異ウイルス…ゴールデンウィークはどう過ごす?

若い人も重症化?ワクチンは効く?予防策は?医師の筆者がわかりやすく
2021年04月26日 06:00
医学博士、医療ジャーナリスト
  • 緊急事態宣言で連休突入前に医師が「変異ウイルス」を解説
  • 感染・重症化しやすいのか?英米でのここまでの研究を紹介
  • 若いからと言って油断は禁物。これまで通りの予防策を

大阪や東京などの大都市を中心に、新型コロナウイルス感染症第4波が拡大している。政府は再び、4月25日〜5月11日にかけて緊急事態宣言を発令することを発表した。現在特に問題になっているのが、変異ウイルス感染者の増加だ。変異ウイルスとは、そもそもどんなものなのか、従来のウイルスと違いがあるのか、予防策は今までと違うのか、移動が活発になるであろうゴールデンウィークを前に、医師であり医療ライターでもある筆者が解説したい。

コロナ変異株イメージイラスト
Inok/iStock

① そもそも「変異ウイルス」とは?

ウイルスは、人などの細胞に感染して、自らのDNAやRNAを複製して生き延びるが、複製の際にエラーが起こり、遺伝情報が変わることがある。これを「変異」というが、どのウイルスでも起こるもので、変異自体は特別なことではない。RNAウイルスは、DNAウイルスに比べ、変異が頻繁といわれる。RNAウイルスである新型コロナウイルスは、RNAウイルスの中では変異の頻度は高くないほうだとされるが、それでも一定の頻度で変異は起こる。変異の多くは、ウイルスの性質に大きな変化をもたらすことはなく、医学的には問題にならない。

しかし中には、変異することによって、感染のしやすさ、予防接種の効果などの性質が変わってしまうものもある。

よくあるコロナウイルスの絵では、表面にとげのようなものがたくさん生えているが、これを「スパイクタンパク質」といい、この部分をコードする遺伝子に変異が起きると、人の体内の細胞表面の特定のタンパク質に結合しやすくなることで感染しやすくなったり、ワクチンによって作られた抗体が、ウイルスを攻撃できなくなることでワクチンの効果が低くなったりということが起こる。

② 東京や大阪で流行中の「変異ウイルス」とは?

イギリスや南アフリカでの変異ウイルスが話題になっているが、日本でも、変異ウイルスの割合が増えてきている。日本国内で現在流行している変異ウイルスの多くはイギリス由来の変異ウイルス(B.1.1.7系統)であり、他には、南アフリカ由来(B.1.351系統)、ブラジル由来(P.1系統)のウイルスが少数の割合を占めている(1)

イギリス、南アフリカ、ブラジル由来のウイルスはN501Yという変異を持っていて、この変異があると、より感染しやすくなるとされる(2)。また、現在のところ発生源が不明の、E484K変異を持つウイルス(R.1系統。N501Y変異はない)も、東京都では増加傾向だ(3)。変異ウイルスは通常複数の変異を持っていて、ひとつの変異が一種類の変異ウイルスに対応するわけではない。イギリス由来の変異ウイルス(B.1.1.7系統)にはE484K変異はないが、南アフリカ由来(B.1.351系統)、ブラジル由来(P.1系統)の変異ウイルスにはこの変異がある。

下の図は、4月13日のものだが、東京、大阪ともに、N501Yという変異を持つウイルスの割合が急速に増えていることが示唆される(ただし、全国で実施されているPCR検査のうち、変異を検出する検査の実施率は現在のところ全体の3割で、全例ではないことに注意したい(1))。

東京、大阪
4月14日新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 鈴木基氏(国立感染症研究所)提出資料より。民間検査会社2社のスクリーニング結果を用いたもの。

③ 変異ウイルスは感染・重症化しやすいのか?

変異ウイルスは従来のものよりも感染しやすく重症化しやすい、若い人でも発症することが多いといわれるが本当だろうか。

コロナ警戒、女性マスク姿
maruco/iStock

イギリスの研究では、イギリス由来の変異ウイルス(B.1.1.7系統)は、従来のウイルスよりも感染しやすいと報告されており(2)、死亡率が高いという報告もある(4)

若年者の重症化率、死亡率はどうだろうか。大阪府の発表では、重症者や死亡者に、30代などの若年者や、従来比較的重症化が少なかった女性、基礎疾患のない人も見られており(5)、変異ウイルス陽性者は若年者が多くなっている(6)。アメリカのCDCも、イギリス由来の変異ウイルスによる若年者の罹患が目立つと指摘している(7)

ただし、アメリカは、高齢者の多くがワクチン接種を完了しているので、その影響で若年者が目立っている可能性もある。また、医学誌「ランセット」のプレプリント(査読を得ていない段階の論文)では、ブラジル由来の変異ウイルスが、女性や若年者での患者増加・死亡率上昇に寄与している可能性を示唆している(8)

当初、イギリス由来の変異ウイルスは、従来のウイルスと比べて小児が感染しやすいと考えられていた(9)日本でも、小児患者が増えていると報道されている。しかし、イギリスのキングズカレッジ病院は、小児患者の増加は、著しい流行による患者増加に伴ったものだと報告している(10)。

加えて、イギリスの王立小児科小児保健学会(RCPCH)会長は、変異ウイルスは全ての年齢層に影響をもたらすが、小児や若年者が特に重症化しやすいわけではないと発言している(11)。確定的なことを言うためには、さらに研究が必要なようだ。

④ 変異ウイルスにワクチンは効くのか

ワクチン接種が各国で進んでおり、日本でも、先進諸国の中では遅れているものの、医療従事者に続き高齢者への接種が開始となった。変異ウイルスへのワクチンの効果は、皆が興味を持つところだろう。日本で承認され、接種されているPfizer/BioNTechのワクチンの場合、実験室の研究では、N501Yの変異を持つイギリス由来の新規変異ウイルス(B.1.1.7)への効果はやや低下する可能性はあるものの、保たれるのではないかと考えられている(12-15)。高齢者の接種が進んでいるイスラエルからの報告では、予防接種の進捗とともに、イギリス由来の変異ウイルス感染も減少しているようだ(16)

ただ、 E484Kという変異があるウイルス(現在東京で増えつつある)には効果が全くないというわけではないものの、弱まる可能性が高いことが示唆されている(12)。

⑤ 変異ウイルスに対する予防策は?若くても油断は禁物!

結論からいくと、変異ウイルスであっても予防策は今までと変わらない。手指衛生(手洗い、手指消毒)、3密を避ける、マスクをするということだ。変異ウイルスであっても、「予防するための特別な方法」があるわけではなく、飛沫感染を予防するスタンダードな方法を続けるしかない。ゴールデンウィークは、必要がなければできるだけ移動しない、会食を避けることが予防のためには必要だろう。また、移動する場合には、くれぐれもマスクや手指消毒には気をつけたい。

また、若年者重症化の可能性もいわれているので、若いからと言って油断は禁物だ。

パンデミックからの唯一の出口は、ワクチンによる集団免疫の獲得であり、筆者はワクチン接種がすみやかに進むことを願っているが、それまでは、これまで通りの予防策を徹底することが大事だろう。

(参考資料)

    • 1.4月14日 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(変異株)への対応」
    • 2.Davies NG et al. Estimated transmissibility and impact of SARS-CoV-2 lineage B.1.1.7 in England. Science 2021; 372(6538):eabg3055
    • 3.東京都福祉保健局
    • 4.Challen R et al. Risk of mortality in patients infected with SARS-CoV-2 variant of concern 202012/1: matched cohort study. BMJ 2021;372:n579
    • 5. 大阪府4月22日「新型コロナウイルス感染症患者の発生および患者の死亡について
    • 6. 厚生労働省4月14日「新型コロナウイルスアドバイザリーボード 藤井氏提出資料
    • 7.CDC: UK variant most common strain in U.S. | ANC https://www.youtube.com/watch?v=BjXH3Ei9JiQ
    • 8. Freitas ARR et al. The Emergence of Novel SARS-CoV-2 Variant P.1 in Amazonas (Brazil) Was Temporally Associated with a Change in the Age and Gender Profile of COVID-19 Mortality. https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3804788
    • 9.Mahase E . Covid-19: What have we learnt about the new variant in the UK?
      BMJ 2020;371:m4944
    • 10.Brookman S et al. Effect of the new SARS-CoV-2 variant B.1.1.7 on children and young people. Lancet ChildAdolesc Health. 2021;5(4):e9- e10.
    • 11.RCPCH responds to media reports of increased admissions of children and young people with COVID-19.
    • 12.Collier DA et al. Sensitivity of SARS-CoV-2 B.1.1.7 to mRNA vaccine-elicited antibodies. Nature. doi:10.1038/s41586-021-03412-7.
    • 13.Supasa P et al. Reduced neutralization of SARS-CoV-2 B.1.1.7 variant by convalescent and vaccine sera. Cell. 2021 ;184(8):2201-2211.e7.
    • 14.Liu et al. Neutralizing Activity of BNT162b2-Elicited Serum. N Engl J Med. doi: 10.1056/NEJMc2102017.
    • 15.Muik A et al. Neutralization of SARS-CoV-2 lineage B.1.1.7 pseudovirus by BNT162b2 vaccine–elicited human sera. Science. 2021; 371(6534):1152-1153.
    • 16. Munitz A et al.BNT162b2 Vaccination Effectively Prevents the Rapid Rise of SARS-CoV-2 Variant B.1.1.7 in high risk populations in Israel.Cell Reports Medicine. doi: https://doi.org /10.1016/j.xcrm.2021.100264.

 

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