東芝に介入?朝日、読売、毎日、日経が経産省をそろって追及

一番厳しいモードだったのはどの新聞?
  • 東芝の株主総会運営を巡り、弁護士チームの報告書が波紋。菅首相の名前も
  • 経産省の関与があったのか、新聞各社も社説で総じて厳しく追及している
  • 朝日、毎日より日経が前のめり気味。読売は弁護士側のポジショントーク警戒?

東芝の昨年7月の定時株主総会運営をめぐり、株主側が選任した弁護士の調査チームが10日、経産省の介入があったと結論づける報告書を公表して波紋を広げている。その中には車谷暢昭社長(当時)の部下が、官房長官時代の菅首相との朝食会で菅氏に総会の情勢を報告し、その際に菅氏がアクティビストのエフェッシモについて「強引にやれば外為(注・外為法)で捕まえられるんだろ?」と話していたとする内容もあり、衝撃が広がった。

G0d4ather/iStock

G7サミットで訪英中の菅氏は記者団の取材にこれを否定したが、東芝が、経産省参与(当時)の水野弘道氏に対して、別の株主であるハーバード大学基金に対して議決権を行使しないように働きかけたとする内容も報告されるなど、東芝と政・官の“近すぎる”距離感が示されたことで、メディアの論調は初報から、企業ガバナンスを歪め、海外の投資家に対する日本の株式市場の信頼感を毀損することへの危機感をにじませるものだった。

そして12日の朝刊各紙の社説は、日ごろの自民党政権に対する意見で別れることが多いのとは打って変わり、各社とも総じて厳しい論調で出揃った(産経だけは12日までに本件で社説を掲載していない)。4社の見出しは次の通りだった。

(朝日)東芝と株主 経産省は関与の説明を

(読売)東芝調査報告書 総会に国の介入はあったのか

(毎日)東芝株主への「圧力」 企業統治ゆがめる事態だ

(日経)東芝と経産省は統治改革の信頼を損ねた

ただ、弁護士チームを選出したのが、問題の総会で車谷社長らの退陣を要求したアクティビストだったこともあってか、経産省の関与が報告書のとおりだったのか、新聞社によって見方は微妙な温度差もあるようだ。いずれも断定は避けながらも、日頃から政権に厳しい論調の朝日や毎日の社説では、

調査はエフィッシモ側の提案で行われたが、会社側の提出資料や役員のヒアリング、電子データの解析を経ており、少なくとも部分的には相応の根拠があると見られる。事実はどうだったのか、不適正な行為はなかったといえるのか。東芝はもちろん経産省側にも、明確な根拠をもった説明が求められる。菅首相についても同様だ。(朝日)

外為法がその口実に使われたのであれば、行政への信頼は損なわれる。(毎日)

とやはりここでも手厳しい。しかし、この2紙よりも前のめりに追及気味なのが日経だ。

報告書が事実なら東芝と経産省は資本市場を愚弄している。東芝が早期に報告書が指摘した事実について見解を示すのは当然だ。

などと朝日や毎日よりもいささか怒気をはらむような気迫を行間ににじませている。このあたりは経済メディアとしての矜持があるからか。

一方、読売は見出しでも明らかなように、経産省に説明を求めているものの、社説の終盤で

報告書は、主にファンド側の視点に基づくものとみられ、全体像は不明な点が多い。

と述べるなど、ポジショントークを疑っている側面もみせた。それでも、原発事業などを手がけていた東芝が外為法の安全保障上の規制対象であったことを踏まえつつ、

経産省が、厳しく審査するのは当然だが、安保上の問題がないのに、経営陣にとって都合が悪いというだけの理由で、「物言う株主」を排除するのは筋が違う。

と厳しく指摘していることに変わりはない。「フルボッコ」とまでは言えないにしても全社が「ビシビシ」と、経産省の過剰な統制疑惑を厳しくただしていることは確かだ。

 

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