LINE問題が示すガバナンス不全 〜 ソフトバンクが握る解決のカギ
「政界工作機関」が暗躍する根幹要因- LINE問題を調査する第三者委が記者会見で明らかにした内容を分析
- 自民党への虚偽説明は未開示。JILISなどの実態についても解明すべき
- 根幹はガバナンス不全。ソフトバンクと韓国側が折半する資本構成
無料通信アプリLINEのデータが中国から覗かれる状況にあったり、一部データが利用者に明確な説明のないまま韓国内にあるサーバーに格納されていたりした問題で、LINE株式会社の親会社であるZホールディングス(ZHD)が設置した第三者委員会の「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」は11日、宍戸常寿座長(東京大学大学院教授)らが記者会見し、第一次報告を発表した。

第三者委が提起、ガバナンス問題
同委員会は、LINEがデータを韓国に格納していたにもかかわらず、それを政治家、官公庁、地方自治体などに対し、「データは日本に閉じている」と実態とは異なる説明をしていたと認定。こうした発表を受け、大手紙は「LINE、政府に『虚偽説明』」などと報じた。
同時に同委員会は、約8600万人もの利用者を抱え、今や社会の公器となったLINEについて、「社会インフラとして信頼されるために、どのようなガバナンス体制を構築していくべきか、ZHDがどのように改善・監督していくべきか」について議論を行っている、とした。
筆者もこのLINEの杜撰なデータ管理体制の問題の根底には、LINEおよび親会社のZHD、さらにZHDの親会社であるAホールディングス(AHD)の企業統治(コーポレートガバナンス)の問題があると思っている。ここをただしていかない限り、この問題は解決しないのではないだろうか。
江口氏の暗躍は未解明

まず、「虚偽説明」について、具体的にどのように行われたのかは開示されなかった。筆者が取材で把握しているものは、今年2月25日にあった自民党デジタル社会推進本部・デジタル施策調査小委員会での対応だ。そこでサーバーの管理体制を問われ、「国内にある」と答えたとされるのがLINE執行役員(公共政策・CSR担当)の江口清貴氏だという。江口氏が意図的に嘘をついたのか、あるいは江口氏に間違った情報・資料などが渡されていたのが原因なのか、第三者委員会は、そうした点を究明する必要がある。
LINEはこの4日後の3月1日にZHDと経営統合した。統合前のデューデリジェンスの過程で、ZHD側がこうした重要事項を綿密に確認していたのかも問われてくるだろう。
政治家らへの「虚偽説明」と受け止められても仕方ない言動は、政策渉外活動において行われた。その政策渉外活動を担当していた江口氏は、LINEが実質支配下に置く一般財団法人・情報法制研究所(JILIS)の専務理事を今年4月27日まで務めていた。
筆者が実質支配下と言う理由は、理事を選任する権限を持つ評議員にLINEの出澤剛社長が入っていることや、年間2000万円近い金がLINE側から流れているからだ。登記簿上はまだ評議員3人のうち出澤氏を含め過半数の2人がLINE関係者だ。さらに事務局3人のうち2人がLINE社員で、そのうちの1人、福島直央氏はLINE公共政策室長だ。
7日付の本サイト「LINEと山本一郎氏の不思議な関係」で報じたように、このJILISもLINEの政策渉外機能の一端を担っていた。江口氏はJILIS専務理事の立場でも渉外活動をし、政治家の資金集めのパーティー券を購入していたといい、JILISは永田町の「政界工作の拠点」になっていた。さらに筆者が掴んだ情報では、江口氏はZHDの執行役員を兼任しているとのことだが、ZHDは社員の個人情報を理由に、江口氏が執行役員の任にあるのか否かを明かさない。上場企業でありながら納得できない対応だ。江口氏がZHDの執行役員の任にあるならば、ZHD側にも監督責任があるはずだ。
JILISの実態解明を
ZHDや第三者委員会は、このJILISの資金使途や活動実態、政策渉外活動に関与した可能性がある上席研究員・研究員の人選過程なども徹底的に調べなければ、政策渉外活動においてなぜ、事実と違う説明がなされたのかは解明できないのではないか。
筆者がこのJILISの動きにこだわるのは不可解な動きがあるからだ。最近でも新型コロナウイルス対策分科会と連携して政府に対して、LINEとQRコードを組み合わせたクラスター対策を提言する方向で動いており、西村康稔大臣に事前説明したとされる筆者が入手した資料には「法務 情報法制研究所」と入っていた。
この点をJILISの鈴木正朝理事長(新潟大学大学院教授)に確認したところ「事前に見ていないので、そこに責任は負えない」と言い、誰かが勝手にJILISの名前を使った可能性があるとの見解だった。
コロナ対策という重要な問題に関しての政府への提言で、JILISの名前が使われようとしているのに、それを事前に組織のトップである理事長が知らないというのは一般的に社会の常識では考えられない。しかし、JILISの上席研究員や研究員の中には自民党厚労族の有力議員とつながりが深い人物もいる。こうした研究員らが独自に動いた可能性があるかもしれない。
断っておくが、筆者はJILIS全体が何か不透明な活動や不正をしていると言っているわけではない。メンバーとして名を連ねる研究者の中には、情報法制等に関して熱心に非常に有意義な研究をされている方が大勢いることも敢えて記しておきたい。
問題の根幹は「折半出資」
筆者がLINEのデータ管理体制の不備やJILISの現状を取材してきて危惧しているのは、ZHDやLINEの中には、社会のインフラとして利用者からさらなる信頼を得るために真摯にかつ前向きに改革をしていこうと考えている勢力と、そうではなく、適当に改革をしたふりをしてお茶を濁そうとしている勢力が混在している点だ。加えてLINEの知名度を悪用していると見られても仕方ない勢力もいる。
その原因は何かと筆者なりに突き詰めていくと、LINE、ZHD、AHDのコーポレートガバナンスに課題があるからではないかと感じるのだ。
LINEはZHDと経営統合して韓国のネイバーの子会社からは離れてZHDの連結子会社となり、資本的には「日本企業」となったものの、主要役員12人のうちCFO(最高財務責任者)やCTO(最高技術責任者)など6人は韓国人で、技術とカネは韓国勢に握られたままだ。韓国人役員には、ZHDの完全指揮下に入り、日本の経済安全保障や消費者目線で対応するといった意識が低いように見える。

ZHDの親会社であるAHDは、ソフトバンクとネイバーの50%ずつの折半出資の会社であり、両社の合意により、ソフトバンクの子会社と位置付けられている一方で、「対等な精神」であることも強調している。ADH会長にはネイバー創業者の李海珍氏、社長にはソフトバンク会長の宮内謙氏が就いている。この資本構造が、ZHDが韓国人役員たちを完全掌握できない理由の一つだと筆者は考える。
一般的に50%ずつの折半出資の会社はあまり設立されないし、するべきではない。それは会社の方向性など重要案件を巡って双方が対立した場合に株主総会では1対1となって決着しないし、どちらに経営責任があるかも曖昧になるからだ。資本の論理では「対等の精神」というのは単なる綺麗ごとであり、責任回避の方便と見られても仕方ない。
敢えて言おう。このAHDの資本構成を、日本企業であるソフトバンクの51%にしない限り、LINE問題の早急かつ抜本的な解決はなされない。
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