塩村議員「気持ち悪い」で話題:それでも重要土地規制法案が必要な理由
国民のイメージと異なる法規制のポイント- 立民・塩村氏が重要土地規制法案を「気持ち悪い」と批判して話題
- 「外資の土地購入規制」という一般のイメージと異なる法案の内容
- WTOは外国人の土地取得制限NG。だからこそ安保上法整備が必要
立憲民主党の塩村文夏参議院議員の質疑がSNS上で物議を醸している。6月10日、内閣委員会の質問に立った塩村議員は、重要土地規制法案法案の問題点を指摘しながら「気持ち悪い」と断じたのである。

塩村議員の同法案への否定的な質問内容に対しツイッターなどでは、
日本の領土を守る気がないのか
安全保障に関わる土地規制に反対する国会議員の存在の方がよっぽど気持ち悪い
気持ち悪いって感情論で反対してるの?”
などと、痛烈に批判されている。これは、多くの人たちが「日本の土地が外資に買われ続ける」ことに対して危機感を感じ、この法律の必要性を強く感じている証拠だろう。
筆者もこの法案に賛成だし、今国会で絶対に成立させなければならないという立場だ。
ただ、この法案、中身を精査していくと、多くの人たちがイメージしている「外資の不動産購入を制限する」というものとは根本的に異なっていることをご存じだろうか?
以下では、塩村議員が同法案を「気持ち悪い」と指摘する5つの理由と、仮にこの法案が気持ち悪いかどうかに関わらず、どうしても成立させなければならない理由を述べたい。
そもそも重要土地規制法とは?
外国人による不動産取引について、現状ではそれを実質的に制限する法令はない。
例えば、空港、自衛隊施設、原発関連施設など、国の安全保障上重要となる施設周辺の土地について、土地所有者と購入希望者間で契約条件の合意が得られれば、買主の国籍やその人物(会社など法人も含む)の背景、利用目的なども問われずに、その売買は成立してしまう。

このことが問題になったのは、航空⾃衛隊千歳基地や東千歳駐屯地、新千歳空港から約3kmほど離れた場所の約8ヘクタール(約80,000㎡)という広大な土地が、中国の企業に売り渡された事実が明らかになったことを筆頭に、対馬市や奄美市など国境離島の土地が外国資本に買収されるケースが相次ぎ、それを懸念する声があがったことによるものだ。
それらの土地取引を自治体レベルで規制したり、詳細を調査したりするのは、財政的にも現行法的にも不可能だ。
そのため、これまで長期に渡り各関係自治体は国に対応を求めていたのだが、それがようやく具体化したのがこの重要土地規制法案である。
塩村議員の5つの気持ち悪い理由
ではここで、塩村議員が指摘したこの法案が気持ち悪い5つの理由を要約してみる。
- 現時点で「構成要件」が示されていない(何をしたら罰が科されるか)
- この法律に違反した後も土地の所有が可能
- 土地規制というより調査が主眼の法案。外資への安全保障としては実効性に欠け、ほぼ自国民が対象となりかねない
- 調査内容が明らかにならない(歯止めが無い)
- 司令部機能がある市ヶ谷が「特別注視区域」から外れる可能性が否定されていない。
①、④、⑤については確かに現段階では明らかになっていないので、今後も当然国会で議論を深めるべきだろう。そして、②についても今後その在り方が問われるのは間違いない。
しかし、いずれもこれらは別に気持ち悪くはない。同法案の重要性を考えれば、これらは今後、同法が施行されるまでの「課題」と捉えるべきだ。
問題は③である。そもそもこの法案は北海道や国境離島で確認されていた外資による広大な土地の買収に対する懸念を払拭するために求められていた法整備だったはずだ。
しかし本法案では、これまで外資の広域的な土地買収が明らかにされていない都市部の重要施設周辺も対象となっている。
もちろん安全保障上、都市部であっても重要施設周辺の土地取引についても監視、調査等は必要不可欠だし、この法案から都市部の重要施設が除かれてしまうと、法律として片手落ち感が否めない。
ただし、塩村議員の言うとおり、特に都市部に限っては重要土地規制法の対象は、ほぼ日本国民となる可能性が高い。
確かにこれは外資の土地購入規制という趣旨とはちょっと外れるし、「気持ち悪い」と表現する意味も分からなくはない。
気持ち悪くても規制法が必要な理由
外国人による不動産取引についてそれを実質的に制限する法令はないと前述したが、実は外国人の土地所有を制限できる法律自体は存在する。
それが大正14年(1925年)に制定された「外国人土地法」だ。同法の第4条では、国防上で必要な地区を指定すれば、外国人がその地区内の土地を所有することを制限できるとしている。
しかし、この法に基づく指定は今後も行われることはないだろう。以下は、この法律が実際には使えないことを示している分かりやすい例だ。
2011 年5月17日の外交防衛委員会で、外国資本による国内の森林買収を規制するために、外国人土地法の施行令の制定等の対応を求められたときの外務副大臣の発言である。
我が国は外国人等によるサービス提供に係る土地取得について内国民待遇義務(GATS 協定第 17 条第1項の規定)を負っており」、「他のWTO加盟国の国民等がサービスの提供に際して我が国の土地を取得することについて、原則として国籍を理由とした差別的制限を課すことは認められない。”
つまり、そもそも政府は外国人(WTO加盟国の)が日本国内の土地取得を制限することは出来ないと明言している。
外国人の土地取得制限の可否については、諸外国でもさまざまな議論があるが、日本政府は出来ないという立場をとっており、本法案も実質的に「外資が重要施設周辺の土地を所有すること自体は禁止していない」のである。
だからこそ重要土地規制法はどうしても必要なのだ。日本国民がこの法律の対象になることに法の趣旨とは違う気持ち悪さがあったとしても、外国籍を理由とした土地取得の制限が出来ない以上、少なくても安全保障上重要な施設周辺の土地利用に関しては監視・調査を一刻も早く可能な状態にしておくのが国としての責務なのは明白だ。
ちなみに塩村議員のホームページには【今日の質疑で取れた言質】という章があり、そこには自らの質疑の「成果」が載っている。
面白いのは、同法案の運用や見解に関し、自らの要望が通ったり思惑どおりの答弁が返ってきた内容については「このケースは調査対象には当たらないとの明確な答弁を取りました!よかった。」、「本法案の対象外との確約が取れました。よかったです!」等と述べていることだ。
それらを見ると、たとえ立憲民主党が今なお同法案を廃案に追い込むと息巻いていても、塩村議員自身はこの法案が成立可決することを前提に質問しているとも思える。(※あくまで筆者の感想だが)
もしそうだとしたら、気持ち悪い発言で猛批判を浴びながらも、この法律の運用について大臣からの言質を取り続ける塩村議員の方が、ただ反対を繰り返す他の野党議員や、法案の中身を精査せず妄信的に賛成する与党議員よりもよほど建設的だ。
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