上場請負人が語る:迷走しない会社が明確にしていること
なぜあの会社は「上場ゴール」で終わってしまうのか?#2- 上場請負人が語る「事業発展のすべての根底は、戦略を含む経営計画の精度」
- 計画により、「課題と解決策の明確化」と 「全社員参加で組織の活性化」に
- 創業時こそ経営計画は必須。資金を「いつ、何に、どのように使うか」
(編集部より)今週の株式市場では、金融系Webサービスで躍進するマネーフォワードが週明け14日、東証マザーズから東証1部に市場変更しました。同社は4年前に上場。コロナ禍でクラウド事業を伸ばしています。上場後も成長する会社は何が違うのか。3社でIPOを主導してきた「上場請負人」佐々木義孝さんの連載2回目は、経営計画の重要性を指摘します。

私はかつて事業会社に在籍し、経営計画の策定に最も注力してきました。そして、資金使途をはじめ事業発展のすべての根底は、戦略を含む経営計画の精度にあると考えるようになりました。経営計画が経営トップの頭の中にあっても、それを全社員が認識していなければ会社の向かうべき道は不明確になり、迷走します。私はそういう会社をいくつか見てきました。
会社経営を行ううえで、日々の仕事に追われてしまい、成り行きに任せて事業を営んでいては、将来にわたって良い成果を生むことはできません。そのような経営姿勢では、せっかくのビジネスチャンスをものにできないばかりか、急速に変化する経営環境に適応できず、会社の存続さえ危うくなります。
会社が成長していくためには、将来自社の進むべき目標を明らかにして、その実現のためにどのような対策をとるかを多面的に考えていかなければなりません。そのような目標を具体化し、計画に落とし込んでいくことが「経営計画を策定する」ということです。
経営計画策定で注意すべきこと
経営計画を立てる際、私は以下の点を心掛けてきました。
① 現状の問題・課題と解決策の明確化
現状の問題・課題とその解決策を明らかにすることが重要です。経営計画を策定するステップとして、将来の目標を設定した後、その目標に向かって何をすべきかを検討します。そのとき、将来の目標と現状を比較してそのギャップを導き出すことで、現在抱えている問題・課題が明らかになってきます。
つまり計画を策定することにより、現状の問題・課題を具体化させ、解決策を明らかにすることが可能になるのです。
② 全社員参加で組織の活性化
全社員参加で組織の活性化を図ることが求められます。全社員が参加して経営計画を策定することにより、経営幹部をはじめとして社員の一人ひとりが自社における自分の役割を十分に認識できます。そのため、目標達成に向けて自走的に行動するようになり、これが組織の活性化につながります。また、達成までのステップがマイルストーンとして明らかになることにより、各時点での進捗度合いを把握でき、それを定期的に伝えることによって社員のモチベーションを喚起することができます。

創業時こそ経営計画は必須
経営計画の策定方法は、今後詳しくに述べていきますが、基本は、現状の問題・課題とその解決策を明らかにし、全社員が参加して組織活性化につながる経営計画を策定することが大切です。それにより、会社として重要な経営資源である資金を、「いつ、何に、どのように使うか」を考えていくことになります。
特に、経営実績のない創業時に資金調達を検討する際、金融機関の審査のキーポイントになるのは経営計画です。新たな事業を行おうとする場合、当たり前ですがお金が掛かります。経営計画を立てて、事業を行っていくために、「何にいくらお金がかかるのか」を洗い出します。計画が具体的になればなるほど、資金計画も具体的なものになってきます。
ここで押さえておきたいのは、設備資金と運転資金です。スタートアップの場合は、設備資金とは投資資金と言ったほうが良いでしょうか。事業を立ち上げる、もしくはビジネスモデルを進化させるために一時的に必要な資金です。例えば、メーカーや小売業であれば、機械設備や車、店舗の内装、什器備品、今流行りのSaaS企業であればプロダクト開発費やカスタマーサクセス体制構築費、広告宣伝費などが該当します。運転資金とは事業を行うために日常的に必要な資金です。例えば、飲食店であれば食材の仕入れ、店舗の家賃、店員の人件費などが該当します。
経営計画はここまで書かれた内容の集大成です。この計画に沿って事業を行ったら、いつ、いくら売れ、いくら支払って、いくらの利益が出るのか、売上予測、経営環境、業界事情、設備能力、競合状況や価格推移などを踏まえ、資金使途を明確にするということです。
次回は、事業計画と資金使途を明確にしたうえで、予想B/Sと資本政策を併せて考える方法について述べて行きます。
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