G7後も続く韓国・文在寅大統領の苦悩
米中冷戦で「股裂き」- G7にゲスト参加した韓国・文在寅大統領の外交的な苦境を占う
- 就任直後のバイデン政権に真意を疑われた、大きな失態とは
- 戦略家ルトワック氏は対中包囲網に「加えるべきではない」
G7は3日間の日程を終え、13日に開幕した。イギリス・コーンウォールで開催された今回、韓国・文在寅大統領がゲストとして招待されたことに注目が集まっている。産経新聞は、日本の菅首相との会談を行わない文大統領の参加に「韓国・文氏は何をしにG7へ?」と、テレ東の人気番組を意識したかのようなタイトルで揶揄している。
2日目会合終了後のバーベキューパーティの席上で、菅首相と文大統領は言葉を交わしたそうだが、文大統領の心中をもっとも支配しているのは、アメリカからの日韓関係改善の圧力以上に、「アメリカか、中国か」の踏み絵を踏まされることへの葛藤だろう。

G7声明では、「台湾海峡の平和」の文字が入った。日米首脳会談後の声明に続く「台湾海峡」の文字に、中国首脳の神経は逆なでされたことだろう。さらにG7は中国のコロナ対応への非難や、台湾のWHOへの参加を後押しするなど、各国の立ち位置にグラデーションはあるものの、対中対抗姿勢を鮮明にするとも報じられている。韓国の他にもG7以外の国が招待されているが、そのメンツは南アフリカの他、インド太平洋戦略、つまり中国包囲網を形成するQUAD参加国であるオーストラリアとインド。中国への対抗ムードがありありなのだ。
呼ばれたはいいが、文在寅大統領の心中は穏やかではないだろう。韓国はまごうことなきアメリカの同盟国だが、経済的には中国との結びつきが強い。距離的にも近い。先日の奥山真司氏の寄稿にもあったように、自国領である島を中国に狙われる事態にもなっているが、安全保障上は「アメリカ陣営」に属してはいても、「安全保障はアメリカ、経済は中国」という割り切りが、どこまで許されるか分からないほどの、国際社会の「対中警戒」ムードなのだ。
バイデンが疑った文在寅の見識
実は韓国は、就任直後のバイデン政権に真意を疑われるような、大きな失態を演じている。2021年1月26日、中国・習近平主席と電話会談を個なった文大統領は、次のように述べたのだ。
「中国共産党創設100年の年を、心からお祝いいたします」
早稲田大学名誉教授の重村智計氏の著書『絶望の文在寅、孤独の金正恩』によれば、この発言にアメリカ側は「文在寅の見識を疑った」のだという。
確かに2021年は「中国共産党創設100周年の節目に当たる。だが創設記念日は7月23日で、半年以上も前に伝えるべきことではない。しかも、これでは文在寅は「中国の国家主席」ではなく「中国共産党の総書記」に祝意を伝えたことになる。
この内容を知ったアメリカは、文在寅の見識を疑った。国際感覚がないのか、それとも共産主義、共産党にシンパシーがあるのか。
共産党、共産主義は、米韓が朝鮮半島で共に戦った敵である。米兵、韓国兵を殺害した共産党のトップに、なぜ文在寅はわざわざ「お祝い」などを伝えているのか。
これにより、韓国はバイデン就任後の電話会談の順番が後方に回された――と本書は解説する。こうした疑いをかけられている中でG7に招待されたことは、尊重やもてなしの体裁を取ってはいるものの、韓国にとってみれば、アメリカからより明確な対中姿勢を取るよう迫られているようなものだろう。

韓国を対中包囲網に加えるリスク
韓国は対中包囲網に加わるべきなのだろうか。これについて、戦略家として知られるエドワード・ルトワック氏が次のように述べている(『プレジデント』2021年6月18日号)。
(事実上の対中包囲網であるインド太平洋戦略を支える、日米豪印が参加する)QUADは行動によって中国を牽制しようという枠組みである。ところがここに韓国が参加すれば「中国を刺激する」「もう少し議論が必要だ」などと言い出し、どんな対中政策にも「ノー」を言うことが明らか。
であるとし、QUADに韓国を加えるべきではない、と主張する。
韓国は中国からの独立を企図していない。
韓国は(これまで)アメリカの保護下にいることを良しとしてきたが、中国が伸長してくれば、今度は中国の保護下に移動したいと考えている。
と手厳しい。ルトワック氏は、かねて韓国を「無責任国家」と断言、安全保障における自主性に欠けることを批判してきた。韓国軍との折衝経験があるだけに、氏の指摘は重い。米中の狭間で難しい舵取りを迫られる、文在寅大統領の苦悩は続きそうだ。
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