【特報】滋賀県の市議会で自民党籍の議員「刺青」騒動、本人を直撃
反社との関係否定も、自民県連「一人一人のチェックは…」- 【スクープ】滋賀県内の市議会で議員が刺青をしていると告発文騒動
- 当該の市議は取材に事実関係を認めるが、反社との関係は全否定
- 「反社でない」根拠にするローン審査通過結果は絶対か?実情は…
滋賀県内の市議会で2月末から3月初めにかけ、市議会の各会派に対し、自民党の地域支部に籍を置く市議の全身に刺青が入っていると告発する文書が送付されていたことが9日、明らかになった。
この議員はSAKISIRUの直撃取材に対し事実関係は認めている。再選を期する4月の市議選に向け、党の推薦を得て出馬予定だったが、自民党滋賀県連は対応に苦慮している。(SAKISIRU編集部、取材協力:西牟田靖)
SAKISIRUが入手した文書はA4版で2ページ。1ページ目には上半身の広範囲に渡って刺青を入れた男性の画像が添付されている。自民党会派に対し、刺青を入れた事実や反社会的勢力との有無を明らかにするよう要求し、他の会派に対しても議員の品格を主張して対処するように求めている。
これに対し、名指しされた議員はSAKISIRUの直撃取材に対し「若気の至りだった」と刺青を入れたことは認めたが、反社会的勢力との関係は否定した。議員との主なやり取りは次の通り。
「反社は事実無根」議員と一問一答
【記者】こういう(刺青を告発する)文書が各会派に届いているようだが。
【議員】これは僕だ。確かに刺青入ってるのは事実。ただ反社会的勢力というのは全く事実無根で、それはもう客観的証拠も持っている。反社だったら、住宅ローンとか通るわけない。銀行口座も持っている。ヤクザだったことも当然ない。ただ刺青は昔20歳ぐらいのときにファッションで入れた。若気の至りというか。
【記者】今でいう半グレか?
【議員】僕は(政治家になる前は)ずっとサラリーマン。前科もない。僕が昔、悪いことしたとか人に迷惑かけたとか、お金のことで何かしたとか、一切何も出ない。やってないから。刺青だけで反社って決め付けている。誹謗中傷、名誉毀損、プライバシーの侵害、肖像権の侵害、選挙妨害。警察にも、被害届まではまだいってないが(相談はしている)、僕からすると完全に犯罪行為で(自分が)被害者。
「自民党も県連もみんな知ってる」
【記者】4年前に当選したときは、刺青があることは公表していたのか。
【議員】聞かれたら僕は正直に答えていた。4年前の選挙で「あの子、刺青入ってるよ」って噂が出回った。いろんな人から「ほんまか」みたいな感じで聞かれたので「はいほんまです」と。「ただ、ヤクザとかじゃないし、ファッションで入れたんですよ」と。過去は過去でもう消せないんだから仕方ない。
【記者】レーザーでも消せない?
【議員】実はもう消しているが、全部消すのは不可能。努力はしたが消えないから、言われるのは仕方ない。
【記者】会派は全員知っているのか?
【議員】自民党も県連もみんな知ってる。もちろん反社じゃないと知ってるし、一生懸命やって地域に当然認めてもらって当選させてもらってる。刺青が入ってるからってことで資質がないとか言ったら、それこそ差別じゃないか。人権侵害だ。
「ローン審査通過=反社でない」のか?
この議員は取材に対し、反社会的勢力との関係を全面的に否定。地元の自民党関係者や後援会などの支援者の間では周知の事実だと強調した。
同じ自民会派に所属する市議会の議長は取材に対し「(刺青のことは)薄々は聞いていた」と認めた。反社との関係の有無を確認してきたのかについては、住宅ローンが通っていることなどから問題がないとの認識を示した上で、「あくまでも個人的な問題」と述べて不問にする意向を示した。
一方で、議員本人が「みんな知っている」と述べていたのに対し、同じ会派に所属するベテラン議員は「(告発する)文書が来てから本人に『どういうことなのか』問いただして知った」と証言。会派や党内の“身内”でもどの程度まで知られていたのか、見解が微妙に食い違う。
野党系市議の1人は刺青市議の活動ぶりについて「委員会などで年4回の質問をし、積極的に発言するなど真面目にやっているが、自分の思いが強すぎるところはある」などと語った。会派に告発文を送られた時には同僚たちと仰天したというが、事実関係を問いただすかどうかについては「本当だとしても、それを理由に議員を辞める決まりはない。会派としては正直なところ面倒くさいから放っておこう、というムード」と事を大きくしたくない様子だった。
他方、反社でないことの証明として、議員が金融機関のローン審査通過を挙げているが、必ずしも有効とは言えないようだ。現在は“カタギ”になっている元暴力団幹部は取材に対し「反社の銀行口座、ローン、クレジットカード契約などは出来ないと思われているが、必ずしもそうではない。事実、現役時代の自分もそれらの契約を断られたことはなく、銀行もクレジットカードも普通に利用できていた」と打ち明ける。
背景には、警察と金融機関の反社リストのデータベースが違うことや、反社でも支払い能力に問題がないなどの「信用」がある場合には当該の金融機関や担当者次第で通してしまう構造があるようだ。今回、議員本人が言うように反社でなかったしても、議員本人や自民党サイドには改めて違う形での挙証が求められる可能性がある。
自民県連「反社チェックは困難」
検察OBのある弁護士は「違法ではないこともあって評価は難しい」とした上で「反社との関係がなく“若気の至り”で入れたとしても、温泉や入浴施設ではタトゥーや刺青を入れた人の利用を断るように、刺青が反社会的人物を想起させるのは確かだ。議場に刺青をした議員がいるとなれば驚くのが一般的な感覚ではないのか」と指摘する。
過去には刺青を入れていることを公表した上で、国会議員や副市長などの公職についているケースも稀にあるが、同弁護士は「(今回のように)全く情報が開示されていない中で、選挙に出ることについては社会通念上、違和感はある」と述べている。
SAKISIRU編集部は自民党滋賀県連に対し、
- ①当該議員が刺青をしていることを認識していたのか、公認(※)プロセスはどうなっていたのか
- ②浴場の利用お断りなど刺青への社会通念上の違和感もある中、刺青を周知せず選挙を通ることへの見解
- ③県連として反社チェックはどのように行なっているのか
−−などの質問文を送った。
県連は①について「入党希望者一人一人についてその身体的特徴や個人の嗜好については、申し訳ありませんが、調査を致しておりません」「選考過程は非公開となっており、お答えをすることがかないません」と回答。
②は「個人の身体的特徴についての県連の見解は、差し控えさせていただきたく、ご理解をお願い致します」とコメントを避けつつも、③の「反社チェック」に関しては「党員一人一人のチェックは困難な現状にあります」と実情を認めた。取材申し込みの時点から全体として今回の事態に困惑気味な様子だ。
自民党滋賀県連を巡っては今年2月、元事務局長が2年前に当時18歳の女性に対する性的暴行をしたとして懲役4年の実刑判決を受けたばかり。また、今回の刺青騒動が起きたのとは別の市議会では、自民党系会派に所属していた男性市議が同僚の女性市議への性的暴行疑惑が表面化(書類送検後に不起訴)するなど騒動が続き、県外からも注目された。
統一地方選を前に党派を問わず、候補予定者、所属議員の質や政党のガバナンスが問われている。
※編集部の取材時点では「推薦」ではなく「公認」と認識
▪️
市議選が迫り議会と自民県連の対応は?(続報はこちら)
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