自社報道もヤフトピ掲載へ:ヤフーニュース方針変更の背景に公取委の動きも?

中川淳一郎氏「今になって太っ腹を見せても...」
2021年06月15日 15:00
  • ヤフー「ヤフトピで自社ニュースは掲載しない」方針を撤回。自社関連の記事掲載へ
  • ZOZO買収時も掲載せず話題に。公取が広告分野で「優越的地位の乱用」規制の動き
  • ネットメディア事情に詳しい中川淳一郎氏「今になって方針転換しても…」
ヤフーニュース(6/15午後)より

これまでヤフー ニュース・トピックスでは、ヤフーが主語のニュースについては、一律掲載しない方針をとってまいりましたが、大事なニュースを皆さまに届ける観点から、今後はヤフーが主語のニュースでも各社で報道される重要なものであれば、ヤフー ニューストピックスに掲載することにいたします。

ヤフーが6月14日、自社のニュースに関する取り扱い方針について、これまでヤフートピックス、いわゆる“ヤフトピ”で「一切掲載しない」としていた方針を撤回して、今後は自社のニュースも取り上げる方針としたことを発表した(出典:リリース)。

そもそも、これまで自社のニュースをヤフトピで掲載していなかったのはなぜろうか。ヤフー広報室に問い合わせてみると次のような回答がきた。

ヤフーは、ニュースを配信する立場でありつつ、報道の対象となる事業者でもあります。検索やコマースなど事業を多角化しており、パートナー各社様から関連する記事をご配信いただくことが多くあります。原則的な編集方針として、Yahoo!ニュース トピックスでは自社のサービスや取り組みについては取り上げないことにしていました。

また、親会社であるZホールディングスやヤフーの子会社についても同様の扱いでした。ユーザーのみなさまに混乱を生じさせないよう、自社のことについては、公式にプレスリリースで説明責任を果たす必要があると考え、プレスリリースをYahoo! JAPANトップページの、Yahoo!ニュース トピックス以外の枠に出して対応してきました。

Yahoo!ニュース トピックスは客観的中立的なニュースの枠と位置づけていて、ユーザーにもそのように認知されています。今後もこうしたスタンスは継続していきます。今後は会社ごとにYahoo!ニュース トピックス掲出基準を設定せず、ヤフーを含めたZホールディングスグループ内外全社が掲出対象となります。(ヤフー広報室)

自社の話題を掲載しなかった理由

ヤフーニュースの中でもヤフートピックスとは、略称「ヤフトピ」とも呼ばれ、とりわけ話題性の高いものを取り上げることで知られている。数ある各社のニュースの中からヤフトピへの掲載を判断するのはヤフー社内の編集者だ。「公益性があるか、品位があるか」など社内基準で定めた一定のニュース価値を判断して、掲載の可否を決めるといわれている。

ニュース提供者から、ヤフトピに適した話題のニュースとしてピックアップされ掲載されると、媒体のPV数がうなぎのぼりになる。ニュース媒体を持つネットメディアは、ページビュー数(PV)をもとにした収益の大半について、ヤフー頼みの構図が定着してきてきた。

ヤフーが「ヤフートピックスでYahoo!主語のニュースについては一切掲載しない方針」だったこと自体、そもそも初耳の人も多いだろう。実は2019年にヤフーがZOZOTOWNを買収し前澤友作氏が退任をしたことが話題がネット上でもちきりになった際にも、ヤフトピで、この話題を取り上げられることはしていない。当時からその点が話題となり「ヤフトピには自社の話題は掲載しない」方針だと当時から同社は答えていたようだ。

ヤフーニュースは、メディアステートメントで、『多様な価値観に基づいた情報を扱う責任を自覚し、特定の権力・団体や思想・信条に与することなく、理解や判断の助けとなる場であり続けます』とメディアの公共性を謳ってきた。

自社の話題をヤフトピに掲載しない。そのままの方針だと、仮に不祥事などが起こった際も自社の話題だけ取り上げないというのでは、公益性の観点からは矛盾が生じる。自社にとっては不都合なことは掲載しない、という風にも取られるからだ。

公取の動きに先手?

方針変更をめぐり、ヤフーには一体どんな背景があったのだろうか。ここは推論だが、ひとつ考えられるのは、昨今の公正取引委員会の動向である。公正取引委員会は今年2月17日にメディアとプラットフォームの関係に関する調査報告書「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」を発表している。

調査報告書は154ページにも及ぶもので、「ヤフー」とは名指しはしていないものの、“デジタルプラットフォーマー事業者”として、デジタル広告取引などにおける個々の問題を取り上げている。「優越的地位の濫用」という言葉が何度も使われ、手厳しく問題点が指摘している。広告単価の不透明さや、取引の基準の透明性などの具体例が列挙され「デジタルプラットフォーム事業者の地位・及びその競争社の状況によっては、独占禁止法問題(私的独占)となる恐れがある」という。

具体的には、紹介されているのは次のような例だ。

(広告代理店の指摘)「当社が代理店として運用していた広告がアカウントの停止により全面配信停止となった。停止理由はセキュリティや品質保持のためということであったが、それ以上の説明がなく、どの広告が基準に抵触したのかわからないまま数百万レベルで損失を被っている(86P)」

(媒体社側からの意見として)「ポータルサイトで上位に取り上げられるコンテンツの選定基準が不明確である(138P)」

などといった具合だ。ヤフー側(デジタルプラットフォーム事業者)の意見として、「編集者による公共性・公益性を重視した記事掲出によって公平性を担保していると主張している」との反論も紹介されている。公正取引委員会がプラットフォーマーとしての「優越的地位の濫用」などと評して動いているのは、天下のヤフーであっても様々な対応をせざる得なかったということだろう。

ネットメディアの事情に詳しい中川淳一郎氏は語る。

「ヤフーはソフトバンクの子会社なので、昔からヤフーはソフトバンクの悪口になる記事をほとんど掲載しないなどといった噂はありました。ただ今になって方針転換して、“自社の悪口も掲載します”などと太っ腹を見せても、今の時代、ヤフー様に対して悪く書こうとするメディアなんていないはずです。ヤフトピに掲載するかしないかその判断はヤフー内部の人がしているわけですから、ニュースを提供させてもらうメディアとしては、自ずとヤフーに対して悪いことを書くのは得策では無い、となりますよね。そのくらい今のメディアは、ヤフーに全面的に依存する業界構造になっているのです」

どんなニュースであっても、ヤフーが自社ニュース掲載を認めるようになることは、それだけ、ヤフー帝国が「盤石」であることの証だともいえる。その余裕ぶりが、今回の件で改めて浮き彫りになったいうことなのかもしれない。

 

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