杉田水脈、平沼Jr、文春砲直撃1年生…岸田首相、お膝元で頭の痛い「衆院中国ブロック」調整

ウクライナ訪問成功で「解散」ささやかれるものの...
SAKISIRU編集長
  • 岸田首相のウクライナ訪問成功で、永田町で解散シナリオささやき
  • 「10増10減」で選挙区調整に加え、比例ブロック調整の難題が残る
  • 首相の「お膝元」中国ブロックでは杉田氏らの処遇に焦点集まるが…

岸田首相のウクライナ訪問が成功し、回復傾向にあった内閣支持率のさらなる上昇が見込まれている。すでに永田町では、統一地方選を終えた後、岸田首相がどのタイミングで解散総選挙に打って出るのかが取り沙汰されている。

だが解散断行まで、自民党は岸田首相の「お膝元」で最後の懸案事項を片付けなければならない。

官邸サイト

「4月解散」考えづらいワケ

今月前半の時点では「秋の臨時国会の後が最も有力な説」(安倍派の中堅衆院議員)だったが、もはやそのシナリオの可能性はかなり少なくなったと言っていい。気の早い週刊誌などは「4月のサプライズ解散」説を流しているが、岸田首相「悲願」の広島サミット(5月19〜21日)を無事に成功させた後、6月21日の会期末にかけての政局が有力視される。

すなわち会期末で野党側が“お約束”の内閣不信任案を出し、それを逆手に首相が国民に真を問うというシナリオだ。野党がそれにビビって不信任案提出を見送っても、国民が岸田外交の成果を忘れないうちに、そして野党側の選挙体制が整う前には初夏の解散は妥当かもしれない。

ただし、自民も選挙体制がまだ万全とは言い難い。「4月サプライズ解散」が考えづらいのは「10増10減」に伴う候補者調整の問題が残っているからだ。特に「10減」の対象となった地方では選挙区がなくなる現職がいて死活問題になっている。広島選出である岸田首相のお膝元である中国ブロック(鳥取、島根、岡山、広島、山口)は典型的だ。

同ブロックのうち選挙区が減ったのは岡山(5→4)、広島(7→6)、山口(4→3)の3県。候補者調整の山場は2つあり、まず前半は減少する選挙区を拠点とする現職や支部長の処遇だ。

補選の山口除き、進む選挙区調整

山口は安倍元首相(旧4区)と岸信夫元防衛相(旧2区)の兄弟に、林外相(旧3区)、元副総裁の長男である高村正大氏(旧1区)といった「名門世襲」の選挙区がひしめく。特に中選挙区時代から地盤が重なる安倍氏と林氏の調整は究極的に難航することが予想されたが、安倍氏暗殺を機に事態が動き出した。岸氏の病気による辞職も重なって、旧選挙区でのダブル補選(4月23日)に突入した。

岸氏の長男、信千世氏が旧2区で、安倍氏の元秘書で前下関市議の吉田真次氏が旧4区で、それぞれ当選した場合でも、6月に解散があるとすると、補選を終えて2か月もない。ベテランの林氏は別格扱いが予想されるが、2期目の高村氏、新人の岸信千世氏、吉田氏の間でどのような扱いをするのか見ものだ。

makoto.h /iStock

一方、広島と岡山はここに来て選挙区の調整を終えた。広島は、寺田稔前総務相(旧5区)が新4区に、旧6区が地元で比例復活した小島敏文復興副大臣は新5区に、新谷正義氏(旧4区)は比例に回った。岡山は逢沢一郎氏(旧1区→新1区)、山下貴司元法相(旧2区→新2区)、加藤勝信厚労相(旧5区→新3区)、橋本岳氏(旧4区→新4区)で決まった。共に旧3区を地盤にして競合していた平沼正二郎氏と阿部俊子氏は比例に回る。

山陽新聞によると、岡山県連は「地方組織での調整は困難」として党本部に最終調整を丸投げしたようだが、本当の難所はこれからだ。候補者調整の2つ目の山場となるのが、比例で処遇することになった現職の序列だ。「ブロック内の複数の県で調整しなければならず、各県連レベルではどうしようもない高度な政治判断」(広島の自民地方議員)が要求されるからだ。

杉田氏の運命は?次の山場は比例区

前回の衆院選、自民が中国比例ブロックで確保した議席は6つ。旧広島3区を公明・斎藤国交相に譲ったことで名簿1位に処遇された新人の石橋林太郎氏は早々と当確した。その上で、残り5つの当選枠は、選挙区で落選した小島氏と阿部氏の比例復活組で2枠が消え、最後の3枠は名簿順に比例単独の高階恵美子、杉田水脈、畦元将吾の3氏で埋まった。

杉田氏(官邸サイト)

だが、当然のことながら、選挙区調整で新たに4人(山口1、広島1、岡山2)も比例ブロックに回るとなれば、前回比例単独で当選した現職は厳しい局面に立たされるのは言うまでもない。仮に前回と同じ6人の当選枠を確保しても、4人が名簿上位を占めれば残りは2人だけになる。比例単独組では杉田氏の動向が特に注目されそうだが、4人に準じた順位に入らなければ当選が極めて厳しくなる。

杉田氏を巡っては前回の比例順位は安倍元首相の後押しがあって確保した経緯がある。そして安倍氏が亡くなり、旧山口4区の補選に出馬するとの観測もあったが、結局実現しなかった。

保守系ネット民の間では、選挙区が5つ増えた東京への鞍替えを期待する声も一部にあるが、都連内部では今のところそうした声は聞かれない。加えて選挙区転出となれば共闘する公明・創価学会の心象も問題になる。保守タカ派色の強い杉田氏と公明は水と油。杉田氏と親しい論客は「公明側のアレルギーを和らげられるか試される」と指摘する。

文春砲デビューの新人も黄信号

一方、前回は比例1位だった石橋氏も安穏とできる状況では全くない。前回は岸田氏の地元ということもあって優遇されたが、前述の先輩議員ら4人が比例に回れば前回と同じ処遇なのかは「微妙なところ」(広島県連関係者)なのが実情だ。広島選出で4期務める新谷氏や、平沼騏一郎元首相の義孫で、平沼赳夫元経産相の次男である正二郎氏と同等の扱いになるとはとても言い切れない。

予算委分科会で質問する石橋氏(衆院ネット中継)

石橋氏は全国的には無名だが、昨年9月には週刊文春に旧統一教会系団体との関係をスクープされ、文春砲を被弾。2月20日の衆院予算委第1分科会では皇室典範について質問した際、「ご承知の通り、天皇陛下は天照大神の直系のご子孫」との“歴史認識”を示し、ネット上で物議を醸した。広島県連の関係者は「石橋氏に今度スキャンダルがあった場合、岸田総理や党本部にとってむしろ難なく比例ブロックを調整しやすくなって“好都合”ではないか」と皮肉混じりに語る。

そもそも広島の保守政界のローカル事情で見た場合、県内の自民党は大きく分けて岸田首相の宏池会系と亀井静香氏の流れをくむ“亀井系”が対峙してきた伝統があり、石橋氏や服役中の河井克行元法相は“亀井系”の流れをくむ。文春はなぜか石橋氏を“岸田首相の秘蔵っ子”と書いていたが、地元の政治文脈的には、首相とはむしろ反目するポジションだ。関係者の前述の指摘は現実味を帯びる。

統一地方選の前半戦は、中国地方でも鳥取、島根の両知事選と広島市長選がすでにスタートした。月末には岡山と広島で市議選の告示を迎える。各衆院議員も地盤を支える地方議員らの応援に汗をかく一方、解散の時期と選挙区調整の成り行きに気を揉む日がしばらく続く。

 

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