ディズニー誘致「公約」、前川氏とのコラボで連続炎上…大阪自民、止まらない「学級崩壊」

「感性がズレてる...」頭抱える関係者

統一地方選の前半戦で注目される大阪ダブル選挙(大阪府知事選、大阪市長選)がスタートしたが、大阪自民が序盤からネットで炎上する事態が相次ぎ、維新との決着をつける前に早くも逆風にさらされている。

「IR予定地にディズニーリゾート!」

まず物議を醸したのは大阪市内で張り出されたポスターと配布された機関紙の号外だった。その中で大阪市の人口島、夢洲地区へのディズニーリゾート誘致を掲げたことでネット民の波紋を呼んだ。維新の藤田幹事長はツイッターで「大阪自民党ってなんでも有りなんか?」と呆れる。

炎上した主な理由は2つ挙げられる。まずはこのタイミングでIR反対を掲げたことへの疑問だ。

夢洲を巡っては、維新府政・市政が安倍政権時代から統合型リゾート施設(IR)を積極的に誘致し、事業者もMGM・オリックスの共同グループに決定。府議会・市議会でも承認され、すでに国にも認可を申請済みだ。手続き的には既定路線に入っている段階で、国政の自民党もIR実現を後押ししてきた経緯がある。

そうしたことから維新側から言わせれば「IRは争点じゃない」(吉村知事)はずだった。ダブル選で知事選候補の法学者、谷口真由美氏を支援し、市長選候補の前市議、北野妙子氏の出身母体でもある大阪の自民党(大阪府連)は、府議団がIRの区域整備計画に賛成したものの、市議団が反対するという矛盾に陥った。

そして今回の選挙戦に際し、反維新勢力のわかりやすいネタとしてIRが蒸し返され、問題のポスターや機関紙が出回った。機関紙には「大阪IR予定地にディズニーリゾート!」と明確に「IRの代替案」を掲げている。

万博・IRの計画地「夢洲」(平つかさ/PhotoAC)

もう一つ、物議を醸したのは、「ディズニーリゾート」という特定の商業施設名を安易に使ったことだ。ディズニーは版権管理に厳格なことで知られる。有名なところでは1987年、滋賀県内の小学校で、児童が卒業記念として学校のプール底にミッキーマウスを描いたところ、報道でそれを知ったディズニー側から抗議を受け、学校側がやむなく消したケースがある。

ディズニーリゾートの運営会社、オリエンタルランド広報部は取材に対し、「ディズニーリゾートの名称に関する権利は当社ではなくディズニー社に帰属しており、コメントする立場にはない」と静観する構えだが、あるディズニーの関係者は「勝手に名前を使うのはいかがなものか」と困惑気味に語った。そもそも大阪市内にはテーマパークの競合であるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が存在しており、維新の関係者も「現実味のない政策を掲げて何を考えているのか」と呆れる始末だ。

大阪自民の複数の関係者によると、問題のポスターやチラシは、前回の衆院選で落選した前議員が旧知のディズニー関係者に協力を打診するも日本法人に相談するように門前払いされた。ディズニー側と正式に詰めたのかは定かではないが、府連内にも危惧する向きはあったという。

結局、一部の元市議らが“暴走”する形で配布・掲出したようだが、この関係者は「大阪府連として組織的に認めたものではない」と言明しつつ「まさかこのようなポスターやチラシを本当に使うとは思わなかった。これで票になると思っているセンスが疑われる」と半ば怒り気味に話す。

SAKISIRU編集部は大阪府連と前議員の公式サイトに事実関係を確認する質問状をメールしたが、回答期限までにコメントは得られなかった。この後、回答があり次第、追記または続報で伝える(※末尾に追記あり)。

「前川さんとは一緒に本を出した」

この“ディズニーポスター”だけでも「マイナスの影響」(自民府議)にも関わらず、今度は知事選候補の谷口氏のツイートが追い打ちをかけることに。というのも、谷口氏が27日、ツイッターの音声交流サービス「スペース」でゲストに招いたのが前川喜平・元文科事務次官だったのだ。

言わずもがな前川氏は退官後、安倍政権に最も敵対してきた論客の1人。安倍氏の暗殺から3か月経った昨年10月には、「気の毒とは思ったけど悲しいとは思わなかったです」と述べたことで物議を醸した。それでなくても谷口氏はTBS系サンデーモーニングに出演し、自民党政権を辛らつに批判してきた言動から、自民が野党と共に支援する候補者として擁立されただけでも保守層に波紋を広げてきた。

今回、谷口氏は「実は前川さんとは一緒に本を出したことがあるんです。選挙や政治についてあれこれ話しますよ」と前川氏と親しい関係を臆面もなくつまびらかにした。これにより、安倍政権を支持してきた「岩盤保守層」の離反は決定的になったと見る向きが強い。

自民から離れた大阪の保守層は維新にも行かない人が少なくない。知事選では、参政党公認の歯科医、吉野敏明氏が立候補中だが、岩盤保守層の受け皿になる可能性もある。岩盤保守層の不満を代弁するように、お隣・京都の自民党は、西田昌司参院議員が27日にアップしたYouTube動画で、市長選こそ北野氏への支持を呼びかけたものの、知事選では谷口氏ではなく吉野氏支持を訴えた。

ダブル選序盤にして、もはや大阪自民は「学級崩壊」状態に等しいようだ。

【追記3/29 17時】自民党大阪府連の担当者は29日午後、電話取材に応じ、問題のポスターや機関紙について「大阪府連としてIR予定地のあり方についてはさまざまな案を検討してきたが、ディズニーリゾートいう提案はコンセンサスを得たものではない」との見解を正式に示した。担当者によると、府連所属の中山泰秀前衆院議員が旧知のディズニー関係者に打診したと説明したが、ディズニー側の確認を取ったかについては言及しなかった。

 

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