大阪自民のディズニー誘致公約、大阪市とUSJの確認書に抵触か…中山氏らの戦犯責任論浮上

関係者「岸田総理はかなり怒っているはず」
  • 大阪自民のディズニー公約、大阪市とUSJの競合忌避の取り決めに抵触か
  • 公約づくりに携わった中山前議員らの責任論浮上。迷走深めた無責任体質
  • 国会で指摘され、岸田首相も激怒?次期衆院選への影響も取り沙汰

自民党大阪府連(大阪自民)の一部が大阪ダブル選挙の公約に掲げたディズニーリゾート誘致が、大阪市が1996年にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社との間で「競合避止」を取り交わした事業支援の確認書に抵触するとの見方が29日、クローズアップされた。

一方、大阪自民内部で同日、この公約づくりに携わった中山泰秀前衆院議員らの責任を問う声も浮上した。

「炎上」したディズニー誘致公約の機関紙(ツイッターより)

「ディズニーできません」松井市長呆れ

ディズニーランドはできません。USJを誘致する際に大阪市としては大規模テーマパークはもう誘致しないという約束してますから」。この日夕の記者会見でそう指摘したのは、大阪市の松井一郎市長(日本維新の会顧問)だ。松井市長が「約束」と指摘しているのが、大阪市がUSJを誘致していた1996年2月、運営会社のMCA(現NBCユニバーサル)との間で取り交わした確認書のことだ。

大阪市議会の議事録によると、その確認書で市がUSJと競合するテーマパークやアトラクションの設立に関する会社や団体と交渉・契約しないとの条項が盛り込まれている。当時の読売新聞が「違約金の対象になりうる」などと報じたことを受け、市議が「将来この確認書が大阪市にとって、大きな足かせ、負担にならないかどうか」と質問したのに対し、市は「USJ実現のために必要なことについて、一定の約束をし、努力義務を負担したというもので、市の他の事業を実施する上で支障になるとは考えていない」と答弁した。

29日、記者会見でUSJとの確認書に言及する松井市長(日本維新の会YouTubeより)

ちなみにこの質問をしたのは当時自民の市議だった北山篤氏(東成区選出)だ。松井氏は「USJ誘致した時の政治の中心は自民党。そのこと知った上であれ(公約)をやっているんでしょ?知らんというなら全くの勉強不足」と呆れたように突き放した。

迷走深めた無責任体制

中山氏(防衛副大臣時代、官邸サイト)

大阪自民のディズニー誘致の公約づくりについては、大阪自民の事務局は「特定の企業とか事業を念頭に置いていたわけではなく、テーマパークを限定しているわけでもない。大阪にとっていい夢洲の活用法がないかということを考えていた」と釈明した上で、「ディズニーリゾート誘致を実現させたいとの思いを受けて、中山泰秀前衆院議員が個人的なレベルではあるが、ディズニー本社にいま接触を行っている」とコメントした。

複数の大阪自民関係者によると、中山氏のほかに、同氏の元秘書で府議選に立候補予定の新人、茂原英仁氏、4年ぶりの府政返り咲きを目指している花谷充愉前府議らが公約づくりを主導していたことも取材で明らかになっている。関係者の1人は「組織としてのコンセンサスが取れていない中で、見切り発車で出したのは問題だった」と指摘する。

また、別の関係者によると、府連の危機管理対応についても問題視する意見が上がっている。ネットで騒動になった後、府連内部の会議で太田房江経産副大臣や松川るい参院議員らが「大阪府連のホームページで説明文を出すべきではないか」と主張したものの、府連会長の宗清皇一衆院議員らが難色を示し、見送りになったという。この結果、ネットでの騒ぎは大きくなるばかりで、SAKISIRUなどからのメディアから取材が相次ぎ、釈明に追われる事態となった。

音喜多動画が追い打ち、岸田首相激怒?

ディズニー側との個人的なパイプで公約づくりに携わった中山氏は騒動になった後、「自分はもう議員でないから」と責任回避とも取れる対応があったともいい、内部では反発の声も出始めている。

他方、維新側にとっては格好の「敵失」となった。国会では参院本会議で予算案成立後、維新の控室を訪れた岸田首相(自民党総裁)に、音喜多政調会長が「大阪で御党がディズニーリゾート誘致ということでポスターを貼っている。総裁として注意を」と対応を求め、岸田首相が「現地とよく意思疎通を図って参ります」と苦笑まじりに応じる一幕もあった。

この模様を映した動画がツイッターで拡散。大阪自民の関係者の1人は「動画までネットに流すとは、音喜多氏はやりすぎだ」と反発する一方、「総理は恥をかかされたようなもので、かなり怒っているはずだ。今回の事態で責任を取らないような中山氏をこのまま(衆院大阪4区の)支部長として公認していいのか」と怒り心頭だ。

府議団幹事長、ツイッターで嘆き

宗清氏(官邸サイト)

怒りの矛先は府連会長の宗清氏にも向きつつある。関係者が言う。

宗清氏は中山氏の言いなりで何も言えていない。そもそも知事選の候補者を出せないまま、民間団体のアップデート大阪に主導権を奪われ、府連はカネとヒトを出させられているだけ。こんな無責任体制のままではいつまで経っても組織は立て直せるわけがない」。

“学級崩壊”状態が止まらない大阪自民。ネットでは大阪の保守層から「安倍政権時代に取り潰すべきだった」との声すら出ており、とうとう若手や中堅の中には組織改革を公然という議員も。

府議団幹事長の原田亮氏は29日ツイッターで「大阪の自民党、評価されてないとつくづく感じます」と嘆きつつ、「この間、自民党大阪府議団幹事長として府議団の改革を進め、会議の公開や全国初のギャンブル依存症対策の条例提案やグリーン車・ビジネスクラスなどの議員特権廃止に取り組んできました」とアピール。「再選できれば次は大阪の自民党を変えられる役職を目指したい」と組織改革への意気込みを示した。

前回衆院選で大阪自民は、擁立した府内の15の小選挙区で史上初の全敗。永田町では5月の広島サミット後の解散の観測も強まる中、大阪では「10増10減」の影響で、公明、維新がさらなる小選挙区の拡大を虎視眈々と狙っているとも言われる。

政権与党なんだからもうちょっとまともに責任感を持って政治をやってもらいたい」。“敵将”の松井氏に痛烈に言われっぱなしの大阪自民。組織改革に大ナタを振るうことができるのか、改めて問われている。

(関連記事)ディズニー誘致「公約」、前川氏とのコラボで連続炎上…大阪自民、止まらない「学級崩壊」

 

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