あの山口二郎氏も憤慨!「小西劇場」に「防衛増税」論議はどう潰されたのかをグラフ化

最後は「サル発言」で炎上、国民の目にどう映った?

2023年度予算案は参議院本会議で28日に採決が行われ自民・公明の賛成多数で成立した。ネットでその直後、異例の注目を集めたのが政治学者の山口二郎氏のツイッター投稿だった。

makoto.h /iStock

山口氏は予算成立の過程を振り返る形で、「立憲民主党は衆参の予算委員会における質問の仕方について点検し、どこで間違ったか、自ら明らかにすべき。放送法解釈に対する政治介入も重要だが、防衛費をはじめとする重要な政策課題について貴重な議論の場をつぶした罪は大きい」と指摘した。

山口氏といえば安倍政権時代の2015年、安全保障関連法に反対する集会で、「安倍に言いたい。お前は人間じゃない!たたき斬ってやる!」と発言するなど、どちらかといえば反自民のリベラル系論客としておなじみだ。ところが予算審議の後半戦で騒ぎになった放送法解釈を巡る総務省の文書問題に審議時間が空費されたことに苦言を呈したことで、日頃は山口氏に反発する保守派のネット民からも

山口先生のご意見とまさか一致する日が来るなんて…

初めていいねを押させていただきました。

などと異例の共感を集めた。総務省の文書問題は、立民の小西洋之参院議員が独自に入手した内部文書をもとに安倍政権が放送法の政治的公平性を巡る解釈を変更しようと政治的な圧力をかけていたと批判し、当時の総務相だった高市早苗・経済安保相との対決が激化して注目を集めた。

小西洋之氏(8日の参院予算委、参院ネット中継)

その反面、年末の自民党内での論争から政治的な焦点になると見られていた防衛費の財源問題、特に防衛増税に関しては野党も含めてどのように論戦がなされるか関心を集めたはずだった。防衛増税は法人税を4〜5%程度上乗せする案が検討されているとあって、大企業はもちろん、物価高や電気代高騰に苦しむ中小企業には「死活問題」として捉えられている。

3月初めには日本中小企業経営審議会が、中小企業1135社に行った税に関する緊急アンケートの結果を発表。この中で防衛増税については、74%の企業が「コロナ禍で経済が疲弊している状況の中で、防衛費に関する法人税増税を行うべきではない」と回答。「防衛費の増額は仕方ないが、国の他の予算を削減して充当すべき」との考えには67%が「はい」と答え、削減するコロナ関連予算などを財源に充てるべきとの意見が多数を占めた。

今国会が始まった当初、防衛増税を巡っては政権内部にも「支持率に大きな影響を与える」(ある省の副大臣)と懸念する声があったが、衆院で予算案が通過した直後、総務省問題が勃発。小西氏と高市氏の言動がヒートアップしたこともあって報道も「政局」主体に一気に転換した。

世論形成の基礎となる新聞社の報道量ではどのような変化があったのか。SAKISIRU編集部は、日経グループの新聞データベース「日経テレコン」を使い、今年1月1日から予算成立の3月28日まで、「防衛増税」「放送法」の2つのワードに注目し、日経、朝日、読売の報道量の推移を調べた。

その結果、「防衛増税」は67件、「放送法」は111件(総務省文書問題関連のみ抽出)。件数だけを見れば政局化したことで報道機関側の“熱量”も違ったことがわかる。報道量の推移を見ると、防衛増税は通常国会が始まった1月中旬に早くもピークを迎えたが、2月に入り低調に。3月にかけて仕切り直しを期待する人もいたはずだが、「防衛増税」の報道はわずかに数えるほどだった。

※クリックすると拡大

このほか、最大の懸案である少子化対策も含めると、山口氏の指摘するように「貴重な議論の場をつぶした」ように見えるが、メディア側の動きも含め、国民の目にはどう映っただろうか。

なお、小西氏の仕掛けたつもりの政局は不発。報道各社の岸田政権の内閣支持率は回復傾向にあり、立民など野党は低迷したままだ。さらには予算成立後、小西氏は衆院憲法審査会について「毎週開催は憲法のことなんか考えないサルがやること」と発言し、大炎上。立民の泉代表が31日の記者会見で小西氏を参院憲法審査会の野党筆頭幹事から更迭するなど一人相撲に。世論の反応が「小西劇場」によって空費されたとの思いが強まる気配だ。

 

関連記事

編集部おすすめ

ランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

人気コメント記事ランキング

  • 週間
  • 月間

過去の記事