大阪自民のディズニー誘致公約、中山泰秀前衆院議員が関与否定でSAKISIRUに抗議文

ディズニーとの接触「公約づくりではない」

中山氏(防衛副大臣時代、官邸サイト)

自民党大阪府連(大阪自民)の一部が大阪ダブル選挙の公約に掲げたディズニーリゾート誘致について、中山泰秀前衆院議員が2日付で代理人弁護士を通じ、「公約策定には一切関与していない」と否定する通知書をSAKISIRU側に送付した。

中山氏が旧知のディズニー関係者と接触したと報じたSAKISIRU側に対し「明らかな事実誤認がある」として、記事を削除・訂正し、謝罪文の掲載を要求した。4日中に対応しない場合は法的措置を取ると警告している。

(SAKISIRU編集長  新田哲史)

「公約策定には一切関与していません」

通知書は4日17時過ぎにSAKISIRUを運営するソーシャルラボ社に配達証明付きで届けられた。通知書では、

貴社は、2023年3月30日付で発信された本ニュースレター(注・問題の記事)において、「公約づくりに携わった中山前議員らの責任論浮上。迷走深めた無責任体質」などと報道され(以下「本件報道」という)、当該報道に接した読者が、あたかも通知人(注・中山氏)が無責任な公約を作り混乱を招いているかのごとき印象を与えています。

と記事に不満を表明。その上で

しかしながら、通知人は、そもそも今年の統一選挙に関して、公約策定を担当する政策調整の会議や広報戦略の会議のメンバーでなく、公約策定には一切関与していません。本件報道には、明らかな誤認事実が含まれており、通知人の社会への信用を毀損するものです。

などと誤報による名誉毀損を主張。さらに

よって、通知人は、貴社に対し、4月4日(火)中に、本件報道を削除または訂正するともに、謝罪文を掲載することを求めます。前期期限までに、貴社が当該行為を行わず、また何らの回答もない場合、法的措置を取る可能性がありますので念のために申し添えます。

と警告している。連絡先として代理人弁護士が指定されており、SAKISIRU編集部は、編集長の新田が直ちに連絡をとった。

中山氏の代理人弁護士から送られてきた通知書(※一部加工しています)

大阪府連担当者とのやりとり

本サイトは中山氏の政策づくりに関与したと報じた根拠について、自民党大阪府連の事務局担当者の公式回答をもとにしていると説明した。当時の取材は新田が行い、録音もしている。当該のやり取りは以下の通り。

【大阪府連】メールで送ると言ってたんですけど、ちょっと中身がまだあれなんで口頭でお問い合わせについてご連絡させてもらおうと思いました。

【新田】わかりました。

【府連】一応自民党大阪府連としては、そもそも夢洲の跡地利用の一つとして、テーマパークの誘致も含めていろいろなことは先週の会でも議論してましたけども、特定の企業とか事業を念頭に置いてたわけではなかったんです。

【新田】なるほどそれはそうです。他の方からもそういう話は聞いてました。

【府連】夢洲の跡地利用の活用については、テーマパークを限定しているわけでもない。大阪にとっていい活用法がないかということを考えていましてね。考えている中で、夢洲にディズニーリゾートということについてはオーソライズされた政策ではないということが一つの事実はあります。

【新田】はい。

【府連】ただ、大阪府連所属の複数の議員からですね。ディズニーリゾート誘致を実現させたいという色々な思いがありまして、その思いを受けて、中山泰秀前衆議院議員が個人的なレベルではありますけども、ディズニー本社に今接触を行っているところということも事実としてあるということで、その辺のことで、若干府連の中の方々に混乱があったというか、そういうようなことがあったということですね。

この取材時点までにSAKISIRUは複数の関係者から中山氏がディズニー関係者との人脈を使って政策づくりに関わったとの証言を聞き、確認のために中山氏の事務所宛にもメールをした。中山氏の確認が取れなかったこともあり、初報では「前衆院議員」と匿名にした。その後、事務所から応答はなかったが、同時に取材を申し入れていた府連が応じ、上記のやり取りで「公式見解」で述べたことから実名報道に切り替えた。

中山氏の代理人弁護士とのやりとり

これを踏まえ、新田は中山氏の代理人(関西法律特許事務所の井上裕史弁護士)に経緯を説明した。以下は主なやり取り。

【新田】とりあえずこちらの取材に対しては大阪府連の公式の窓口の取材で、中山先生がディズニーにお知り合いがいておつなげしたという趣旨でお答えされています。一応、公約作りに関与しているのは、これはもう府連の事務局の公式見解としてされている。一定の関与を中山先生がされていることは府連の事務局の○○(取材では実名)さんも述べておられます。

【弁護士】公約作りに関与したとは全然別次元の話ではないですか。「公約作りに関与された」と書いてあるので、そこは事実誤認だから直してください。

【新田】ディズニーさんの承諾を取れるなら取りたいというところで動かれていたと思うんですけど。

【弁護士】何か頼まれて動いたという事実はご指摘の通りかもしれませんけど、それと公約づくりは違うでしょ?

【新田】それは(ディズニーとの接触は)公約づくりの一環じゃないですか?内部的なイメージの公約作りというところと、我々一般の人間が公約を出すにあたってどういう関わり合い方をしたかという部分はあるじゃないですか。それは中山先生はディズニーの関係者をおつなぎしているという部分では、それは大きなポイントですよね?

【弁護士】あなたの書かれた記事は公約づくりに関与しているって書かれているからそれは違うでしょ。

【新田】だって公約づくりに関与しているじゃないですか。

【弁護士】公約づくりをされた方から何か頼まれたとしても、それは公約づくりに関与してるとは言わないでしょ?万博を計画してる方から、「万博の関係で業者さんを紹介してください」って言われて紹介したとしても、万博のプロジェクトに関与してるわけじゃないじゃないですか。

【新田】それは同じじゃないですか。

【弁護士】御本社でご判断されてこの記事に誤認がないということで、直さないっていうやつだったら、それは御主張としては分かりましたけれども、そうであれば、ちょっと次のことも考えないといけないなと思ってますけど。そこはもうあんたとここで言い争っても仕方ないから。

井上弁護士とは物別れに終わったが、中山氏の「公約づくりには関与していない」との見解を掲載することを伝えて、この日の取材は終えた。

騒動になったディズニー誘致公約を巡っては、府議選に立候補中の中山氏の元秘書茂原英仁氏や、4年ぶりの府政返り咲きを目指している花谷充愉前府議が自らの選挙活動で「目玉」政策に掲げている。しかし、大阪市の松井一郎市長(日本維新の会顧問)は、市が1996年にUSJを誘致した際に競合するテーマパークは呼び込まない旨の覚書を交わしたことを明らかにしており、公約の実現性に疑問が強まっている(関連記事)。

ある大阪自民の関係者は「ディズニー側との人脈があったのは中山氏なのに関与してないというのはどういうことなのか。解散総選挙を見越しての抗議なのかもしれないが、維新に『報道機関に圧力をかけた』と利用されるだけではないか」と困惑した様子だった。続けて「今回の件でUSJが激怒していることが伝わってきている。それなのに、花谷氏や茂原氏は“無名より悪名”とばかり、炎上選挙に走っている」とうんざりした様子だった。

【訂正 4日22:45】大阪府連担当者とのやりとり、主語を一部取り違えていましたので訂正します。

 

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