統一地方選前半戦:奈良県知事選は“維新回天”、高市氏の命運は?大阪は「ダブルゼロ当」
【速報解説】悲喜こもごも振り返りと今後の政局統一地方選の前半戦は9日、各地で投開票が行われた。大阪ダブル選は大方の予想通り、ともに維新公認の吉村洋文氏が知事選で、横山英幸氏が大阪市長選で、それぞれ20時過ぎに当確を決める「ダブルゼロ当」の圧勝。勢いは止まらず、府議選、同市議選でも単独過半数を初めてダブルで達成した。中選挙区制の市議選は過半数確保が困難とされたが、政党としても戦後初めての快挙となった。

神奈川県知事選は現職の黒岩祐治氏が選挙戦終盤の不倫報道をものともせず4期目の当確。唯一の与野党対決となった北海道知事選は、現職の鈴木直道氏が 左派野党統一候補の池田真紀氏に圧勝。徳島県知事選は元衆院議員の後藤田正純氏が保守分裂の激戦を制した。
そして前半戦で最も注目を集めた奈良県知事選は、こちらも維新公認の元生駒市長の山下真氏が、元総務官僚の平木直氏(自民県連推薦)、現職の荒井正吾氏(国民県連推薦)らを破って初当選を確実にした。NHKが20時過ぎに「ゼロ当」を打つ予想以上の強さ。維新が大阪府外で知事選に勝つのは初めて。維新が拠点の大阪での勢いを関西の近隣県に広げ、次期衆院選に弾みをつけた。
一方、自民にとっては、平木氏を推した地元選出の高市早苗経済安保相が首相候補としての命脈を保てるか正念場を迎えるとともに、岸田首相の解散戦略にも微妙な影響を与えそうだ。
“ディズニー空騒ぎ”も大勢変わらず
大阪府知事選は、コロナ対応で「全国区」の存在になった吉村氏の圧勝は既定路線。一方、大阪市長選は政界を引退する松井一郎氏の後継をめざす前府議の横山氏の知名度不足が否めず、自民など反維新勢力は自民の前市議、北野妙子氏を擁立。付け入る隙をうかがった。
しかし選挙中の2日、読売新聞が報じた世論調査で、維新の府政・市政を「評価する」が71%、「評価しない」の20%を凌駕。この調査では、自民支持層ですら7割以上も「評価する」と回答するなど、橋下徹氏、松井氏のコンビで始まった10年余の「維新統治」は盤石の体制となっていた。
自民側は知事選の候補者を自前で探せず、地元経済界が主導する政治団体「アップデートおおさか」が擁立した法学者の谷口真由美氏を支援した。しかし谷口氏はテレビのコメンテーターで一定の知名度こそあったが、安倍政権を批判していた左派論客。選挙戦に入ると、「アベガー」急先鋒の元文科次官、前川喜平氏とツイッターのスペースで共演したこともあって大阪の保守層が瞬く間に離反した。「アップデートおおさか」の選対には元民主党議員らが事務方として入るなど野党側の影響が強く、大阪自民のある関係者は「ハッキングされたようなもの」と頭を抱えた。

政策論争では、反維新勢力は夢洲のIR(統合型リゾート)誘致をなんとか争点化しようと仕掛けた。自民は国政でIRを推進してきた経緯との矛盾が指摘されたほか、大阪自民の一部候補者らがIRの代替案としてディズニーリゾート誘致を大々的に訴えるものの、その現実味のなさからネットで大炎上。
さらには大阪市が1996年にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を誘致した際、USJの運営会社との間で「競合避止」を取り交わした事業支援の確認書が再注目されるなど自民側のリサーチ不足も浮き彫りになった。大阪自民が迷走を重ねた末に自滅したことで市長選も横山氏が悠々と戦える状況になった。
大阪圧勝で奈良知事選も後押し
維新がお膝元の大阪を堅調に戦えたことで、選挙中の吉村氏や馬場代表らの幹部が奈良県知事選へ応援に入りやすくなる状況も生まれた。
【奈良県知事選挙 山下まこと スタッフブログ】
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21年衆院選では奈良県内の比例票は、自民の19万票に対し、維新が18万票にまで肉薄。近年の国政選で維新は生駒市や奈良市など大阪への通勤圏を中心に浸透していた。この好調な情勢を背景に山下氏は出馬表明直後から自民党や報道機関の情勢調査でもトップを走ってきたが、維新としては大阪のように地方議員が多いわけではない。
その点、もし平木氏と荒井氏がまとまることができれば、地の利で上回る自民が総合力で勝った可能性はあるが、一本化できないまま選挙戦に突入した。選挙前には3週間に渡って、高市氏が総務省の文書問題で連日、野党側に追及される事態が発生。これにより良くも悪くも露出が増えたことや、分裂に危機感を強めた保守層が「より勝てる可能性」のある平木氏にシフトする動きも見られ、一時は自民調査で10ポイント開いていた差が5ポイント程度にまで縮まったとの観測もあった。

ところが維新側の浸透は当初の予想以上。本稿執筆時点(20時)では開票作業はこれからだが、大阪から距離のある県南部や東部でも山下氏は堅調に得票している。これは選挙戦の最中にも行われたある情勢調査で、衆院奈良3区のほとんどで山下氏がリードしていた傾向を裏付けた。
大阪以外で初めての「維新知事」となる山下氏だが、維新は県議選でも第2党に大躍進。維新創設者の橋下徹氏は9日深夜ツイッターで「議会や役所に絡め取られず、県民のための政策・改革を断行できるかが勝負。当選すると皆波風を立てない知事になってしまうがそれではダメ。政策を有権者が体感すれば支持が拡大し、同志の議員が増える」とエールを送った。
その橋下氏が大阪府知事時代に推進するも、荒井県政では一部の参加にとどまってきた「関西広域連合」との距離感が縮まることが予想される。同じく維新が知事当選を支援した兵庫も含め、関西での広域行政の発展もあるのか注目される。

他方、自民は県連会長でもある高市氏の責任論が浮上する可能性が高い。派閥に属しておらず、後ろ盾の安倍元首相が亡くなった状況での知事選敗戦により、首相候補としての命脈を保てるのか大きな試練に立たされる。
週明けの11日には衆院補選(山口2区、4区、和歌山1区、千葉5区)がスタートする。このうち和歌山1区は自民が長年負け続けた中で、維新も候補を擁立しており、すでに告示を迎えた参院大分補選と合わせ、この結果いかんで岸田首相の解散戦略が左右されそうだ。
■
【更新 10日3:00】大阪府議選・市議選、奈良県議選の結果を反映し、一部記述を変えました。
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