「刺青」議員騒動その後…自民滋賀県連も大津市議会も“不問”のまま市議選突入へ

「自民が強いから余裕」説も
  • 滋賀県の地方議員が刺青をしているとの騒動、その後の顛末
  • 舞台は大津市議会。SAKISIRUの報道後も自民県連、議会動かず
  • 議員は自民推薦で出馬予定、今回の事態に割れる「世論」
各会派に配られた市議の刺青(※編集部で一部加工しています)

滋賀県の自民党籍を持つ市議が上半身の大部分に刺青を入れていたにも関わらず、公表しないまま議員活動を続けていた問題で、自民党滋賀県連はこの市議が再選をめざしている選挙に向けて推薦を出す予定に変わりはないようだ。

SAKISIRUが今年3月10日に報じた後も県連、市議会ともに調査する構えは見せておらず、市議選を前に対応が問われている。(SAKISIRU編集部、取材協力:西牟田靖)

写真付きの告発文書

複数の関係者によると、刺青を入れていたのは大津市議。今年2月末から3月初めにかけ、市議会各派に対し、この市議の全身に刺青が入っていると告発する文書が送り付けられる騒動があった。

本サイト既報のように、この市議は3月上旬、取材に対し、若い頃に刺青を入れた事実を認めた上で、「若気の至りだった」と釈明。市議会宛てに送られた告発文には上半身の大部分に刺青が入った画像が添付され、反社会的勢力との関係性があるのかを問うていたが、市議本人は取材に対し、「(政治家になる前は)ずっとサラリーマン。前科もない。刺青というだけで反社と決め付けている」と全面的に否定した。金融機関のローン審査を通過したことを根拠に挙げ、自民会派内部もそれで承諾している模様だ。

しかし、元暴力団幹部が「反社の銀行口座、ローン、クレジットカード契約などは出来ないと思われているが、必ずしもそうではない。現役時代の自分もそれらの契約を断られたことはなかった」と指摘するように、絶対的な“免罪符”ではない。警察と金融機関の反社リストのデータベースが違うことや、反社でも支払い能力に問題がない場合には当該の金融機関や担当者次第で通してしまう構造があることが前回の取材で浮き彫りになっていた。

問われる自民県連の対応だが…

議場に刺青議員が…(大津市議会サイトより)

この市議は16日告示の市議選に出馬予定で、13日時点で党の推薦は維持されている。非公式の事情聴取で本人の言い分を鵜呑みにせず、警察や弁護士に専門的知見から協力を仰ぐなどさらなる精査が求められるところだが、自民滋賀県連は3月上旬時点の取材では「入党希望者1人1人についてその身体的特徴や個人の嗜好については、調査をしていない」と言明。県連として反社の関係者かどうかを確認しているのかについては「党員1人1人のチェックは困難な現状」と、あくまでお手上げだと強調した。

そして本サイトの初報後に改めて調査をしたのかを尋ねると、県連事務局は13日、「大津市議会議員選挙に県連推薦候補として立候補を予定されており、告示目前であることから外部からの候補者に対する個人情報調査依頼につきましては、誠に失礼ながらお断りをさせていただいております」と回答した。自民会派の中でも特に問題視する声はなく、実質的に“不問”のまま選挙戦を迎えることになりそうだ。

比叡山から大津市内を一望(show999/iStock)

「違法でない」vs.「道義的問題」

前回の取材に応じた自民市議の1人は電話に出てすぐ切るなど取材を拒否した。選挙を控えて警戒モードは最高潮のようだ。大津市議会の別会派の市議は「道義的にどうなのかという問題はあるだけに、議会運営委員会で倫理審査会を立ち上げて話を聞こうと思えばできなくはない」と話す。しかし報道後も関係者の間でひっそりと話題にするのみで、具体的に事実関係の確認に動く会派や市議もいない状態のようだ。

この騒動、読者によっては意見がさまざまだ。「刺青は違法ではない。何が問題なのか」と市議に同情し、編集部に疑問や批判を寄せてきた人たちも少なからずいた。他方、「公人なのだから全てを明らかにすべき」と説明責任を厳しく求める意見もあった。

自民のベテラン市議は「反社だと決めつけず、見届けてやることも大事だ」と“更生”の必要性を主張しているが、ある市民は報道後も県連や市議会が全く動きを見せないことに「有権者を軽んじているようにも思える。滋賀の地方議会はまだまだ自民が強いから余裕なのではないか」と呆れ顔で話す。選挙戦の後も有権者から議会の対応や説明責任、議員の質が問われることになりそうだ。

 

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