総務省の「隠蔽」「利益誘導」疑惑に沈黙するマスコミ
接待問題調査結果にあぜん、諸悪の根源は?- 総務省の接待問題の内部調査、大半がNTTと東北新社に「ありえない」と筆者
- 「隠蔽」「利益誘導」疑惑なのに、モリカケを大問題にしてきた報道は?
- 接待問題はメディアも火の粉をかぶる可能性。根底は、電波割当など裁量的な権限
霞が関はいまだに昭和の時代なのか、と思わせる出来事が令和3年になって相次ぐ。総務省の接待問題に続き、今度は東芝の経営への経産省の介入事案が起きた。
どちらもひどい話だが、ここで取り上げるのは総務省接待のほうだ。今年2〜3月に文春砲で東北新社とNTTによる接待が露見した。もちろん普通に考えれば氷山の一角だ。この種の不祥事対応では定番だが、ほかにも接待がなかったか、総務省で内部調査が行われることになった。その調査結果が6月4日に公表されたが、びっくり仰天の内容だった。

新たに判明した違法接待78件のうち、NTTグループが53件(うちNTTドコモ39件)、東北新社が19件、その他事業者はわずか6件という。こんなことはさすがにあり得ない。
日本の通信事業者は327社、放送事業者は574社ある(それぞれ通信設備を有する登録電気通信事業者、地上系・衛星系の民間放送事業者の数。令和2年情報通信白書より)。
「違法接待はNTTと東北新社ばかりだった」なんていう話は、およそ常識に反する。こんなあり得ない調査結果を総務省が堂々と公表していることに本当に驚いた。
国会でさすがにこの点は問題になった。問い質された総務省官房長の答弁はこうだ(6月10日参議院総務委員会)。
NTTグループは、通信政策で大きな役割を果たしていて、意見交換が有意義だということで会食の回数が多くなった。
東北新社は、衛星放送業界にずっと携わってきた幹部社員から、定期的に会食を持ちかけられたことが大きかった。
もしこれが真実ならば、つまり特定の事業者やグイグイ接点を求めてくる事業者とばかり会食していたとすれば、これまた大問題だ。NTTドコモや東北新社は、総務省から電波割当(衛星放送の場合は正確には、電波割当の先のスロットの割当)などを受け、事業を運営している。総務官僚は電波割当などの審査を行う立場だ。日本は他国と異なり電波オークションも導入しておらず、こうした審査には相当の裁量性がある。その中で、特定事業者とばかり接待を伴う情報交換をしていたならば、外形上、行政が歪められたとみられても仕方がない。
毎日新聞は今こそ「利益誘導」批判を
マスコミや一部野党の大好きな言葉でいえば、この事案は、「隠蔽」か「利益誘導」か、どちらかはあったことが確定だ。ちなみに「利益誘導」の類義語として、「中立性に疑念」「行政を歪めた」などもよく用いられる。ともかく、ほかにも接待があったことを隠しているか、特定事業者だけに特別な計らいをしたか、あるいは両方の混在か、いずれかしかない。
こんな事案だから、マスコミはさぞ問題にしているかと思いきや、全くそんな気配はない。
朝日新聞の記事では、(違法接待がこれですべてと)「額面通りには受け取れない」と一言指摘している程度で、あとはもっぱら大量処分による行政停滞を心配している。
「総務省幹部への接待が常態化 大量処分、遠のく信頼回復」(朝日新聞デジタル6月4日配信)
毎日新聞に至っては、総務省の調査結果に何ら疑念を差しはさむこともなく、そのまま報じるだけだ。
「総務省の違反会食78件 関与の32人、減給や訓告処分」(毎日新聞デジタル6月4日配信)
「隠蔽」「利益誘導」疑惑にあれほど目を光らせ、モリカケをさんざん大問題にしてきたマスコミは一体どうしてしまったのか。

とりわけ毎日新聞は、「隠蔽」「利益誘導」疑惑を報じたいあまりに、事実無根の虚偽報道まで行ってしまった新聞だ。2019年に国家戦略特区に関し、民間委員(私)が提案者に助言したことを「中立性が揺らぐ」として大批判キャンペーンを展開し、私が金銭提供・会食接待を受けたとの事実捏造まで行った。情報提供者の非公開を「隠蔽」とも報じた。
事実捏造はあまりに悪質なので訴訟係争中だが、大前提として、そもそも特区の民間委員は提案者をサポートする立場だ。許認可や補助金交付を行っているわけではなく、「中立性」云々はおよそ筋違いな誤爆だった。
総務省の場合は、これとは違う。電波割当など許認可を行う立場であり、もちろん「中立性」が求められる。毎日新聞は今こそ、「中立性が揺らぐ」「隠蔽だ」と徹底追及キャンペーンを展開しなければおかしいはずだ。
新聞・テレビが報じない国会論戦
それにもかかわらず、本件でマスコミが沈黙する理由は推測がつく。
まず、テレビは総務省に電波割当など事業の根幹の許認可を握られている。電波・放送行政を批判すれば、意趣返しを受けかねない。そして、日本特有の事情として、新聞とテレビが一体で系列化されているから、新聞もこの領域では及び腰にならざるを得ない。
しかも、本件で「隠蔽」を追求すれば、テレビ局幹部と総務官僚の会食も明るみに出る可能性がある。さらに、接待の方向は逆だが、現場の記者たちが政治家・官僚からご馳走になるケースも露呈するかもしれない(こうしたケースは少なくとも過去に多く目にしている)。これはこれで取材対象との癒着であり重大問題だ。
つまり、本件はマスコミにとって、追及すれば自らに火の粉のかかりかねない事案だ。翻って、マスコミが追及しないとわかっているから、総務省はこんなあり得ない調査結果を堂々と公表できたわけだ。
誤解なきよう言っておくと、私は、マスコミが蛮勇を奮って火の粉を顧みず、ほかにも接待がないか暴き出すことを期待しているわけではない。ほかにも接待があろうことはもう推測がついているし、「A社がB局長に〇万円の接待」といった類の話に何ら興味ない。
問題の根本は「裁量」行政
明らかにしないといけないのは、問題の根源だ。つまり、なぜこんな昭和の時代のような接待がいまだに続いてきたのか。そしてマスコミは放置してきたのか。
私の答えを言えば、根底にあるのは、電波割当をはじめとする裁量的な権限の存在だ。さらに、戦後に電波監理委員会が廃止され、新聞・テレビが一体で政治・行政の利権構造に組み込まれた歴史が、マスコミの機能不全をもたらしてきた。詳しくは、解決案を含め、拙著『総務省解体論』(ビジネス社)の中で書いた。
実は国会では、本質的な課題解決に向けた議論が始まっている。
6月8日の衆議院総務委員会では足立康史議員(維新)が、電波行政の独立規制機関創設、新聞・テレビの一体関係解消などを論じた。質問の中で武田総務大臣に『総務省解体論』を読むよう勧めていただいたのは光栄の至りだ。
6月9日の衆議院内閣委員会では平将明議員(自民)が、電波割当の機能を総務省から切り離すべきと唱え、河野行革担当大臣から「問題意識は共有」との答弁を引き出した。
6月10日の参議院総務委員会では柳ヶ瀬裕文議員(維新)が、電波オークション、電波行政の独立規制機関について、議員立法提出も踏まえ質問している。
今後、建設的な議論が前進することを期待したい。国会外からも後押しが必要だ。
残念ながら新聞・テレビでは、こうした国会論戦が報じられることは期待できそうにない。ここは、SAKISIRUをはじめ、ネットメディアの出番である。
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