岸田首相を襲撃した“テロ野郎”の馬鹿げた願望をぶっ壊すのに必要な法改正

社会は断固たる意志を示せ
国際政治アナリスト、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員
  • 岸田首相を襲撃した“テロ野郎”を正当化するような一部言説を斬る
  • 被選挙権年齢や供託金問題に関する要求の裏にある「本音」
  • “テロ野郎”の馬鹿げた願望を破壊するためにやるべき法改正とは

統一地方選の最中、岸田首相の演説中に爆発物が投げ込まれた事件で、相変わらずメディアはテロ野郎(あえて、テロリストの呼称は用いない)の背景解説と称して、愚かな記事を垂れ流し続けている。

木村容疑者「参院選に立候補できず不当」…昨夏「本人訴訟」で国に損賠求め1審棄却(読売新聞)

この報道を受けて、被選挙権年齢や供託金の問題に対して、テロ野郎の主張を肯定するかのような言説がSNS上に出てきているが、「そうじゃないだろ」と主張したい。

岸田首相襲撃事件を伝える翌日の読売新聞朝刊(編集部撮影)

テロ野郎の主張、相手にするな

テロ野郎の主張は、常に社会に対する八つ当たりで出来上がっている。それが最もメディアに出ている政治家に暴力が向けられただけのことに過ぎない。

テロ野郎どもは一見もっともらしい主張を展開しているが、それは自己の矮小な存在を大きな目標にすり替える犯罪者の心理的な現象でしかない。なぜなら、犯罪行為を実行するには、動機や条件に加えて、己の犯罪行為の正当化が必要だからだ。

本件は被選挙権や供託金の問題として扱うのではなく、テロ野郎の動機の「動機」の部分を徹底的に潰すことに注力するべきだ。彼らの正当化(大義名分)を相手にしてはいけない。

そうしないと、テロ野郎の口車に乗せられて、無責任なリベラルの論調に煽られ、テロ野郎の大義名分に沿った法改正(条例改正)を求める世論が起きる、という愚かな行為を延々と繰り返し続けることになる。

そもそも今回のテロ野郎の要求を良く見てほしい。地元市議の集会に参加して「市議の報酬は良いですか」と尋ねたように待遇面に強い関心があった。そして年齢を理由に参院選に立候補できないことが不当だと国を訴えていたこと(請求棄却)も明らかになっている。こうした事実から伺えるのは、被選挙権年齢や供託金水準を引き下げて、万が一当選することで、議員報酬で暮らしたい、というものだ。

区市議選には多数の候補者が立候補するが…(編集部撮影)

ならば議員報酬の廃止・極小化を

この馬鹿げた願望を破壊するためには、地方議員の議員報酬を廃止・極小化することが重要だ。したがって、筆者は今回の事件を受けて全国的な法改正(条例改正)が行われることを希望する。

それは「地方議員の議員報酬を一律月額3万円にすること」だ。

そもそも地方議員の議員報酬など必要なのか?今、統一地方選挙の真っ只中で、議員報酬で生活費を得るために多くの立候補者が手を挙げている。しかし、議員報酬で生活できる先進国など日本をおいて他には存在していない。諸外国の地方議員は無報酬または日当制が常識であり、ほぼボランティアのようなものだ。

議員報酬だけで生活できるようにしなければ専門的な能力がある人材は集まらない、という主張もあるが、現在も専門的な能力がある人材が集まっているとはとても思えない。今の議員の現実を見た方が良い。仮に本当に専門的な人材が必要なら、むしろ供託金を引き上げることで、一定の能力が金銭的に保障されている人間しか立候補できなくしたら良い。

地方議員の議員報酬は一律3万円にしたら良い。金銭目的で地方議員になる人間がいなくなり、本当に政策的に何かやりたい人々が集まって議場で議論することになるだろう。

上記の法改正(条例改正)が、テロ野郎に屈さない、という意味で、本当に必要な法改正(条例改正)である。

今回のテロ野郎の蛮行を受けて、被選挙権年齢や供託金制度を変更するのではなく、その動機(本音)であろう「他人が羨ましく、カネが欲しかった」(=一連のテロ野郎の本当の動機はこれだ)ということを徹底的に潰すことが大事だ。

社会はテロ野郎の思い通りにはならない、という断固たる意志を示す必要がある。

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国際政治アナリスト、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員

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